<#5 ヒナタとヒカゲとタイヨウと>
『おつかい……?』
№1が聞き返す
『うんっ!だってぇ…こあ?盗ってくんでしょ〜?お金要らないおつかいじゃんっ!』
『たしかに?……にしても発想力…』
引き気味の№1を横目に№5は話を進める
『ハイハーイ、皆さん備え付けの武器はありやすかぁ〜?あるね〜?ナイフだとか包丁だとか……あ!メアは鎌だよぉ〜、えへへ〜』
いつも何故か背負っていた大きな鎌を指さす
(このための……鎌だったんだ…。そういえば僕には何もないな……)
『ぼくは刃と猟銃〜』
№6が笑って取り出し、カチャッと音が鳴る
『俺はナイフ……だ』
№1はナイフを取り出して
『…準備ができたらついてこい』
そう言って研究員が壁にスッと消え入りそうな白衣をなびかせて歩き出す
いつもより多い足音
暫く歩くと、初めて入る管理棟の正面扉のオレンジ色の照明が見えてきた
『ここが管理棟だ…駆り出しの司令が入れば必ずここへ来い、必ずだ』
そう言って自動で開く扉に手を添えた
そこは薄暗い廊下が広がっていた
今まで歩いてきた廊下とは違い、影がハッキリと見えた
また少し歩くと次は半透明の磨りガラスの扉があった
『この先行けば、他のニンゲンがいるんでしょぉ〜?』
透き通る声で№5は言う
『…そうだ、医療部、実験部、科学部……無駄な情報を流した、忘れろ…元の話に戻そう。
この研究員のデスク部屋と言うのだろうか…そこの先を行くとポータルがある。こちらの座標操作によってお前らを戦場に送る』
『んぇー、指揮だとかってどーすんのぉ?』
№6が問う
『それは№0《オリジナル》がするだろう。いや、しろ。』
『は、はい…っ』
(は、し、指揮と言っても…そんなのどうすれば…)
そう考えているうちに磨りガラスの扉が開いた
カタカタカタカタカタカタカタカタ
パラパラ…パサ…ス…
カチャッ…カタカタカタカタカタ
一定のキーボードを打つ音、そしてカルテと思われる紙をめくる音が1番に耳に入った
よく耳を澄ますと、薬品瓶同士が軽く当たる音や液体の混ざる音、液体カプセルに似た気泡の音が聞こえてくる
『わぉ…みんな同じ顔じゃん』
『あ、ほーんとだーっ!』
№5と№6は研究所の顔を見て顔をしかめる
目の下にくまができている大人たちが多くいるのがわかる
その中でも、淡々とほぼ微動だにせずに作業する人と、たまに肩を揉みながらため息を着いたりする人、そして「疲れた」「早く帰りたい」と口にしながら手を止める人と別れていた
『…ベテラン、若手層、新人って感じだねぇ』
そう、№1が№0の隣に寄って呟く
『べてらん…?わかてそう…?』
『うん、ベテランはなんかずっと居てすんごい人、プロ…まぁすごい人。若手層は新人の育成…んー、育てるって言った方が分かりやすいかっ
…まぁそんな感じだよ』
№1がなんだか誇らしげに説明をした
『おぉ〜っ…でも、なんだか疲れてる…みたい…』
『だね…仕方ないよ…ニンゲンはいつだって騙し騙される存在なんだから』
「お前は騙されてりゃいいんだよ!」
「バカなままで生きてろよ!アハハハハっ!」
『………っ…』
№0の脳内に声が響いた
(…早く…忘れたい…大切だったはずの…あの人は忘れてしまったのに…、、いじめっ子だけ、忘れられないなんて…)
『…灯向…?どした…?』
№5が顔を覗き込む
『、、なんでもない…大丈夫だよ』
『なんでもない…か…』
『うんっ…』
№5の鈴がいつもより静かにチリン…と鳴った
『ほーらーっ!行くよ〜?』
ポータルの前で№6が手招きしている
その隣で準備運動をしている№1がふぅ、と息をついた
『うん…今、行くね…由武くん……』
⟡.──────────── .⟡
ヴォン…
そんな音を最後に、目に映る世界が変わった
ポータルをくぐったのだ
薄暗い部屋から、何ヶ月ぶりだろうか、陽の光の下の、一面緑の草原に出た
とても綺麗だった
世界が…緑と群青のたった2色で生きているかのようだった
『…へぇ〜…ここが戦場ね〜…』
№5がそう呟いた
『戦場……』
そう思えぬほどの美しい景色
地平線すらも遠く遠くに見えていた
『あ、、あれ…』
№6が遠くを指さす
『敵さんだねぇ〜…』
遠くに見えるのは地平線を崩す大人数の人影
研究員の言った通り、2層目と言われた場所にいる、騎馬隊とは異なる服装の者が第1層に確認できた
『まずはあれを崩して…その後ニンゲン…最後に今の俺たちにとっての最高脅威の同胞を……』
『殺す…か、なんか…嫌だね、悲しいや』
『…灯向から……その言葉が出るのが1番怖くて…悲しいよ』
№1はそう言ってナイフを取り出した
『準備はいい…?ま、戦場なんて…準備時間はくれやしないけどねぇ〜っ』
№5の声が小さく…そして大きな存在となる
ピィーッとトンビの鳴き声を合図に皆が…敵も味方も、死への1歩に踏み出した
『ナイトメア!!ここら一帯を蹴散らせるか!』
『んー…?あったり前だろぉ〜?』
そう言って自分の背負った鎌を、№1の呼び掛けに応えるように抜き取った
カチャッと金属音を鳴らして握り直す
『ねね!メアの名前、なんだと思う?』
そう、敵の実験体に問う
『知るものか!そんな事に時間を使おうなんぞ思わん!!』
騎士のような背格好の実験体はそう叫んで剣を抜いた
『まぁーまぁー…メアはナイトメア!
名前がナイトメアなんだよぉ〜?じゃ、その能力は……?』
騎士の実験体がフッと笑う
『ナイトメア…はっ、バカバカしい…そのままのことを態々、相当の阿呆だ!!』
振りかかる剣をヒョイッと避ける
『答えはもちろん…物理だよ!!あははっ!』
楽しそうに笑って鎌を大きく振りかぶったと思うと、あっという間にあの騎士は真っ二つになっていた
『ナイトメア!それを殺れとは言っていない!薙ぎ払えと、、蹴散らせと言った!!』
№1のキレ気味な声が、他の悲鳴の間を縫うように届く
『んもぉ〜…セッカチさんっ』
№5はそう笑うと鎌で辺りの実験体を一瞬と言えるほどの速さで切り刻んだ
『メアちゃんすごーいっ、!ぼくも頑張るよ』
№5を見ていた№6は拍手をする
その後ろでは実験体がバタバタと次々に倒れていく
その実験体の体には無数の花が咲き誇っていた
『うわっ!キモ!実験体植木鉢じゃんか!』
『キモってひどーいっ!ぼくの能力!』
№6の能力
それは植物を自在に操り、生み出す
だが効果は薄く、多くのティーラと呼ばれる能力発動の源を必要とする
けれど№6のカルテには…-̀͏̗ 失敗作 ́͏̖-と記されていた…
『❮解析❯《アナライズ》…』
№1の能力…❮解析❯《アナライズ》だ
敵味方関係なく相手の情報を可視化できる
体力、ティーラ消費量、得意なもの、苦手なもの…それらを能力発動者のみが知ることのできる能力
『ナイトメア!!右だ!!お前はそっちが気楽だろ!由武は直進しろ!!』
自分なんかよりも、正確に、早急に指示ができる
まさに指揮者に相応しい存在だろう
その間№5は異常な脚力で高く跳ぶ
そして鎌の鈴を外して手に取った
『☾鈴鳴の迷宮☽
─《ベルズ・オブ・ザ・ロスト・チルドレン》』
チリーン…チリーン…
鈴の音と共に辺りが静かになる
無音
静止画のような情景に誰も声は出ない
❮Sleep❯
№5の声が唯一響く
すると敵軍のおよそ3分の1が音もなく黒い壁に囲われた
『よーし、完了!!』
そう言って2秒も経たぬうちに壁は消えた
中には倒れている敵軍が確認できる
№5の能力
☾鈴鳴の迷宮☽
─ 《ベルズ・オブ・ザ・ロスト・チルドレン》
現実世界ではたった5秒
能力の対象者には永遠に感じられる時間の間、大きな迷宮から抜け出さなければならない
簡単に言えば脱出ゲーム
鈴の鳴る方がゴール、出口だ
が、常識を超えるほどの広さ故に抜け出せない
所謂、出口無し…
この能力は別名-̀͏̗ No Exit ́͏̖-
そのままだが、恐れられる能力だ
『わ…すっごぉー!!』
№6が飛び跳ねて拍手する
『でっしょー?メアは凄いんだから〜』
『おいこらテメェーら!!仕事しろ!!』
№1が遠くから怒鳴る
『えー?コヨくんだってぇ〜、目が離せずにいてさぁ〜?立ち止まってたじゃーん?』
『チッ…うっさいなぁ…』
№1が目を逸らして第1層を抜けようとしていた
『じゃー、ぼくは灯向のとこいるねぇ〜』
⟡.──────────── .⟡
戦争が始まってしばらく経った
№0はまだ1歩も動いていない
『……ひ…ぁ…ぁ……うぐっ……ふっ…』
足が震えて上手く立てない
だからと言って…いつ死ぬか分からないから座り込むこともできない
後ろに誰かいるかもしれない
座り込んじゃ、№5達に迷惑をかけてしまうかもしれない
邪魔してしまうかもしれない
そんな考えと共に
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…っ)
と、震えている
『ひーなたっ!だいじょぉーぶー?』
№6の声だ
その声を聞いて安心した
ドサッと座り込んだ
血の匂い…第2層まで他の子は到達したのだろう
『ほら、みんな第1層はお片づけしたよ〜
みんなのとこ行こっ!』
その場で飛び跳ねて手招きをした
遠くでは悲鳴や武器がぶつかる音、そして血の跳ねる音が聞こえる
けれど、やはり自分の心臓の音が五月蝿い
『み、な…とこ……い、いけ……こわ、こ、…』
話すことも上手くできない
『もー…ほら、ぼくが、ついてるよ?みんなもいる…大丈夫……
怖ければ後ろに隠れていればいいさ、1人でも刺せればそれでいい…
いや、なんならチョイ!って触れば、かすれば、風圧を送れればそれで良いんだよ…?』
あはは…、と№6が苦笑する
(みんながいる、か……でも怖い…死にたくない、だって、、だってたった数ヶ月だ…まだ12歳なんだよ…?)
背後の草が揺れる
ぽた…ぽたぽた…
震える顔に何かが降り落ちた
目の前の草が赤く濡れていた
赤い筋を引きながらツー…と音もなく液体は垂れ落ち、草は元の位置に跳ねるようにして戻る
『え……』
見上げる
『っ…!?』
№6の喉を貫通した刃物がギラついた
その先から赤い液体が伝って落ちてくる
血の匂いはしなかった
代わりに、独特な臭い…
だけれど薬品のような臭いがした
なんとも言えない臭いだった
『ガハッ……あ"…かッ…』
口からも咳き込むようにして飛び散る
声とも言えるようで言えない音を鳴らしながら震える瞳でこちらを見つめる
『ひっ……ゆ、由……武く…ん、?』
刃物がサッと引き抜かれた
№6が力が抜けたように倒れ込んだ
ヒューヒューと音をさせながら何とか息をしてるようだった
手当の仕方なんて知らない
したことはない
いつもしてもらっていた側だったから
『雑魚はいらんのよなぁ〜…あはは〜、初戦闘かな、』
そう言って刃物に付着した液体を振り払いながら、背後に居た者が笑う
『ん…?あ、もう1匹居たじゃん!って…んんー?ニンゲン?ありゃー』
ニンゲン、そう呼ぶということは実験体《clone》だろう
だが既に第1層は崩したはずだ
(第…3層…!?)
「最後に第3層…そこには人と強力な実験体兵器がいるだろう…」
研究員の言葉が木霊する
体が強ばる
そして再び震え出す
どうしても視線が落ちてしまう
でもそこには息もままならない№6と赤く染まる服、そして草が見える
見あげようとすればただ楽しそうに笑う敵
どうしても地獄だろう
どこを見ても悪夢のようだ
グシャッ!!
次に聞こえたまた肉の切れる音
次は誰だ、そんな事を考える余裕なんてない
耳を塞いでうずくまる
小さくバタッと音がする
『灯向!!由武ちゃん!!』
自分と同じように、余裕のない呼び声だ
でも自分とは違う余裕のなさだった
なんだかその一瞬を…憧れた
『うぐっ…うっ……め、メアぁ……っ』
『わっ!だいしょばないね!うん!泣くのはあとあとっ!』
『…もーさー?今俺が雑魚と話してるじゃんか…ふっ…サイテーだよねぇ…それって差別とか何だとかなんじゃないかな!!泣くよ!?』
そう叫んであの実験体が立ち上がった
『うわ!』
№5は最悪!とでも言うように嫌な顔をした
『第3層から遊びに来たってのにぃ?みーんな壊されちゃって暇なんだy…』
そう言っている途中で№5は鎌を振るう
『うっさい!こちとら命かかってんだぁ〜』
『戦なんだから…双方だろ?何を得るための戦争なのかは知らないけどな!そんで、話途中だろうがぁっ!泣くよ!!ほんとに!!』
№5の鎌をサッと避け、刃物を構える
『とりあえず…メアが勝つんだからねっ、名前くらい…教えてあげるっ!覚えて還ってよね〜』
『はっ…態々名前なんて…覚えでも無駄な情報が増えるだけだ』
余裕そうな声の2人の武器が当たり弾ける音
金属音が響き渡る
その周りでも№1が戦う音、声が取り巻く
それでも№6の微かな呼吸音だけは大きく聞こえた
『メアの名前はナイトメア!本日二度目の自己紹介さ!』
『ならば俺も名乗っておこうか…俺は───』
言いかけた瞬間、目の前に赤が散った
そしてそいつはまた倒れた
背後には白衣の裾が見えた
真っ白なキャンバスに赤い絵の具を散らしたような痕ができた
『此奴はコアの次の目的の奴だ…連れ帰る。
保管棟で保管する』
『は……え……ぇー…?』
突然のこと過ぎて、№5も鎌を落とす
『え、今めっちゃ良いとこだったじゃーんっ』
思わずそんなに文句まで飛び出た
そして№5は№0の方へ駆け寄った
『ほいほい、由武ちゃんもそろそろ起きてぇ〜?血、止まってるでしょぉー?傷ももう塞がりかけでしょーがっ』
『あ、バレたぁ?えへへっ』
そう言って№6は立ち上がる
服や口元、喉元は赤く染っている
『へ……?』
『あー、僕もねぇ?さっきぶっ刺されてぇ〜、死ぬわぁ…って思ってたらなんか血が止まってさぁ?ほら!汚れちゃうけど完全回復!ちょー無敵っ』
№5が赤く染って破れた服をヒラヒラさせて
わけも分からずに呆然とした
『不思議だよな』
そう言った№1が見下ろす№6の首には
確かに致命傷だった傷が、うっすらと残っていた
『ん、あともうコア、手に入れたぜ?』
№1も真っ赤に濡れていたが、何事も無かったかのように淡く赤く光る小さな宝石のようなものを幾つか持って駆け寄ってきた
皆が集まって汚れているのを見て、№0は自分の無力さに座り込んだ草を歩く虫を見るしかできなかった
みんなの声が遠く聞こえた
『よし、じゃー帰るよっ』
№6は震える№0の手を握る
そしてポータルへ向けて手を引いた
『由武……くん…』
⟡.──────────── .⟡
研究所に戻ってきた
気分が悪くなる程の真っ白な光の下にただ、立ち尽くす
何もしなかった
何も出来なかった
何の成果も得られなかった
誰も殺せなかった
『……死ぬ…?』
「生の権利を一部与えよう」
そう、出発前に研究員は言った
フラッシュバックする
『…そうだな、お前は……』
『えー?メア、そんなこと……言われた記憶はないよぉ〜?』
『いや、私はハッキリと言った。
コアを手に入れた暁には、お前らに生の権利を一部与えよう、と』
『ふーん……でも、手に入れた暁には…“お前らに”、なんでしょぉ〜?』
ニヤッと笑う№5を見て研究員は舌打ちをした
『…今回だけだ、今回だけは全員に与えよう』
『やりぃ〜っ』
№5は笑って№0に抱きつく
『メアは灯向がだぁーいすきだからっ
死んで欲しくないのぉ〜』
リンリンと鈴を鳴らした
その隣で№1は1歩前に出た
『…あー、ひとつ質問あんだけど…』
『なんだ、サッサと終わらせろ』
『サッサとって…ははっ…まぁいいや
…なんであっくん……№12達は駆り出されなかったんです…?』
№1が不思議そうに問う
間が空き、研究員がため息をつく
『…あいつらは既に戦闘経験をさせ、現在も訓練をさせている。ただそれだけの事を察せないのか』
『へぇー…トクベツだったんだね、あの子達は』
『当たり前だ、唯一の成功作品だからな』
『唯一、ね…』
№12が唯一の成功作品ならば、№0含めたその他は失敗作にあたる
だが、失敗作とカルテに書かれているのは№6だけだった
なぜ№0がそれを知っているかって?
それは勿論のこと、実験体をまとめるのは、オリジナルの仕事だからだ
まとめるにあたって、カルテ情報は重要である
故に、特別に№0には情報共有している
(たった一部らしいけど…共有になってるのかな…)
そう思いながらも№6の-̀͏̗ 失敗作 ́͏̖-の表記が気になった
『あ、あの……僕…からも質問…いいですか?』
『早く言え』
『っ……え、えと…№12は成功作品、なんですよね…それでー…他は失敗作として…なんで№6にだけ………』
『それ以上口にするな』
話している途中で止められてしまった
隠したいことなのだろうか
『す、すみません…っ』
『戻れ、』
『ぇ…あ、は、、はい』
№0は俯きながら収容棟へと向かった
『……灯向、怪我…していない?』
誰かが声をかける
籠って聞こえた声はハッキリと誰だ、と認識させてくれなかった
『うん…』
そう答えると、間が空いた
『甘いもの…食べる?』
『ううん…いらないよ』
『……あ、あーちゃんの紅茶、飲まない…?みんなで行こうかな…って、、』
『大丈夫だよ…みんなで行っておいで』
廊下に響く2人の会話と4つの足音
でも最後の誘いを断ると、シーンとした沈黙が流れた
耳鳴りがする
気が付くと自分の部屋の目の前に着いていた
ずっと足元を見ていたから気づけなかった
そしてドアノブを握り、捻った
『灯向…』
また誰かの声で名前が呟かれたが、聞こえないフリをして…部屋の扉を閉めた
パタン……
その後のとこは覚えていない
目を覚ましたら扉に寄りかかった状態で座っていた
部屋に入ってすぐに寝てしまったのだろう
コンコン
『……』
『灯向……おはよう…よく…眠れた?』
№6の声だ
そういえば…昨日もこの声で話しかけられたっけ
『……うん、』
頷きながら扉越しに返事をする
『あのね…?良ければぁ…メアが作ったぬいぐるみ、見に行かない?今…作ってるの』
『…ん、行く……』
扉の外で安堵のようなため息が聞こえた
(僕がいて…そんなに良いこと、あるのかな…)
そんな考えが浮かぶ
(違う、違うっ…こんなんじゃダメだよ灯向っ!せっかく誘ってくれたんだからっ!ね!ほら笑え笑えっ…………笑え…)
ニコッと笑顔を作ってから扉を開ける
夏の生暖かさを纏った空気が入り込む
№0の顔を見て№6が嬉しそうに笑いかけた
だから微笑み返した
『行こっか』
『……うん!!』
№6が№0の手を取る
なんだろう、いつもより冷たいと感じた
『今日は手が冷たいね…寒いの?』
『えへへっ、寒いのぉ〜…だって窓開けっ放しじゃんか〜?』
そう言って身体を震わせる
『たしかに…?』
首を傾げながら広間に向かった
みんな楽しそうに話している
その中心に№5がいて、ぬいぐるみを作っていた
クマの小さなぬいぐるみだった
耳に花の刺繍をしていた
『灯向だ!おはよ!おはよぉーっ!』
そう叫んで抱き着いてきた
『わっ…おはよぉ、ごめんね?昨日…心配かけちゃったよね…』
『えへへっ…でもヘイキ!メアは強いし、灯向大好きだからきっとまた、仲良くしてくれるって信じてる!』
そう言って笑う
『あ…メア、これ…刺繍糸切れてね?』
№1がぬいぐるみの花の刺繍を見て言う
『あ"……うぅ…ほんとだ…途中で切れてるぅ…』
『ん?あ、、ほんとだぁ……』
花びらに続く糸が一部切れていた
『あー……収容棟ってここであってるー?合ってるよね、合ってるはず、合ってなきゃ泣くぜ?』
聞き覚えのある声が聞こえた
戦場…№6の喉を貫通した刃物…赤い液体…
昨日のことがフラッシュバックした
そう、あの…№6を刺した実験体の声だった
『……?誰かしら』
♡№12が問う
№0は震えるだけだった
『俺か?俺はなぁ、新人だぜ、セーンパイ☆』
笑って目元でピースをした
『そう、なら……はじめましてね』
『アッハッハーっ!だな!!』
明るい雰囲気だ
昨日とは別人のようにあたたかい
見上げるとそこには、やはり見覚えのある
あの“実験体”の姿があった
でも…どこか違った
服装が違ったのか
『はじめまして…俺は№1 峰川暦、よろしく』
№1が先頭で名乗った
そこから順にみんな自己紹介をした
『初めまして、№12…アリス』
『初めまして、№12…アリス』
相変わらずこの2人は息ぴったりだ
『昨日ぶり、メアは№5!ナイトメア!!君は知ってるよね?』
『んぁー、忘れた』
『はぁ!?ならはじめましてッ!!!』
不機嫌そうならフリをしてから笑って言った
『……おめさんらは?そこの雑魚2人組のさぁ』
黒髪に青い耳飾り、赤い着物が特徴…
とは言いきれない
首には赤い模様が見えた、目は瞑っていた
その代わり…口元を隠していた黒く薄い布の下や手のひら、そして頭の大きな角、頬に紅く光る目があった
まさに異形だ
『んー?ぼく?雑魚って言われるのは嬉しくないなぁ…それこそ泣いちゃうっ!!』
異形を真似した
『早く名乗れよー』
異形は手をヒラヒラとさせた
『はいはい、、ぼくは№6 由武、よろしく』
『……はじめ…まして…僕は…№0《オリジナル》…田邊 灯向…よ、よろしく…』
すぐに俯いた
№0の悪い癖だ
『へぇー…コヨコヨにぃー、アリちゃん2人にぃー?それとナイメアとユンユン、それとヒナちゃんね〜、了解!!』
『……なんか変なあだ名着いてない…?』
№6が頬をかきながら言う
『変じゃないぜ?普通だ』
『それでー?君は…なんて言うの?』
№5が問う
『た、、、たしかに…気になるね…』
♢ №12が№1の背後から言う
『…俺の名前かぁ、毎度言おうとすっと…刺されたり刺されたり刺されたりで…』
はぁぁ…、と長い溜め息を着く
『良いから早く言え』
№1はもう不機嫌だ
『はいよはいよ〜、改めまして…はじめまして、俺は柊蛍研究所出身、晷だ
番号は18、№18だ!よろしくな…
……っしゃ!言えたぜ!!!』
嬉しそうにガッツポーズをした
異形……異形が目の前にいる
知っている形…でも光を当ててみると別のもの
そんな感覚だった
でもそんな異形とも普通のように接し話すみんなが信じられなかった
(……これからも…できるのかな…晷のような異形……晷…?晷…聞いた事…ある…)
晷…名前…
そう考えている横で、№6が口を開いた
『……久しぶりだね、ヒカゲ』
『ONEマイライフ!#5』を読んでくださりありがとうございますっ
今回は今までよりも長い回となっております!いつもより書き終わるのも遅れてしまって、次回の執筆も結構遅れて…ストックがほぼ0です☆
タスケテ……、、クダサイ……、、
そんな感じで猫の手も借りたい…そう思いながら今日も明日もこれからもONEマイを書いていきます!!
(ネタ切れあとがきも頑張ってネタ作ります!
きっと雑談のような独り言が殆どですが!!)




