<#4 はじめてのおつかい>
『初めまして、ヒカゲ』
…そう、№6は呟いた
ポコポコとカプセル内の気泡の音
ピッ…ピッ…と機械音
そんな音が耳の奥をくすぐる
それなのに、№6の声だけがはっきりと、周りの音を静めるように聞こえた
『…ゆ、由武くん……、、?』
『…?あ、灯向っ!どしたのぉ?』
明るい声が耳に届く寸前、ピーッと耳鳴りがした
『あ、いや…急に……居なくなっちゃったから…探しに来たの…そしたら、ここにいて』
『ありゃ、ごめんごめんっ!えへへ〜、アイサツに来たのっ』
『挨拶?』
『うん!アイサツ、この子達には…してなかったでしょ?』
そう笑う№6の目には無邪気な光があった
不思議な子…たしかに、全員不思議ではある
だが、№6だけは…なにか……、、
『そう…だね、じゃあ、終わったら帰っておいで?』
『うん!終わったからもう行くよっ』
『あ、そうなの?じゃ…一緒に戻ろっ』
そう言うと№6は№0の手を握った
鼻歌を歌っている
初めて…聞いたかもしれない
鼻歌なんて、単語でしか知らなかった気がする
『綺麗な歌だね、好きな歌?』
『そうだよっ!よくね、ぼくのお部屋に流れてた歌っ』
『へぇ…心地いいや…由武くんの声だからかな』
『えぇ〜?照れるなぁ〜』
№6は後頭部を軽くかきながら笑った
『……そういえば、さっき…あの中、誰もいなかったのに…なんで……?』
『えっ?』
『あ、えと…なんか…挨拶?してたって言ってたけど……あの中には誰もいなくて…それにヒカゲって…知らない名前…、、、
あっ、別に悪い事だとは思わない?からねっ…でも…なんでだろ……って、不思議に…思って…』
『……』
『あっ、長くなっちゃってごめんねっ』
№6は軽く目を逸らした
『…ううん、良いよ
ま、なんでもないから』
(……また…隠し事…)
№6はそれ以降、口を開かなかった
⟡.──────────── .⟡
『あ、帰ってきた〜っ!』
『ほんとだ』
№5と№1がこちらを振り向く
『あら、可愛らしく手を繋いでるわ』
そう、№12が付け足した
『えへへ…ただいま、ちょっと話し込んじゃって…お待たせ』
『お待ったせぇ〜っ』
№6はいつもの…昨日からの調子だ
なんだか…今日は隠し事を2つ手に取ってしまった
内容は知らない…でも…
『どうしたの?』
『…?』
『灯向っ、なんか暗い!』
『そう…?』
『うん!メア、分かるもん!灯向大好きだもんっ』
『あはは、照れるなぁ…』
そんな、あからさまな程…暗かっただろうか
心配させる程に…
(また、心配かけちゃったな…)
ᛝ…ザザッ…ザッ…ᛝ
放送だろうか、スピーカーから音が鳴る
ᛝ№0、1、5、6…今すぐ実験棟、5号室に集まれ…ザザッ…これは…ザッ…命令だᛝ
『今すぐ…?4人とも?』
『なんか団体一斉実験でもするんじゃなぁ〜い?』
そう、№5が笑う
笑うような要素は、ひとつも見当たらないが
初めて、複数人の呼び出されたのだから
絶対と言い切れるほど、なにか良くないことがあるのだろう
死か…それとも、№5の言うように実験か…
そんな疑問も抱えながら5号室に向かった
『何があるんだろ〜ねぇ〜、№12以外なんて〜』
『知るか…うっさいなあ…肩組むな暑苦しいっ』
№6がふわふわと笑うのに乗せて、うざったがる№1
なんとも不思議な感覚だ
実験棟に複数人で行く不思議
№12以外が選出された不思議
先程まで隠し事をするように暗かった子が、今は楽しそうに笑っている不思議
自分が忘れ去られてしまっているような感覚の不思議
今ここで声をかけても、誰も振り向かないのではないか
誰も、気づかないのではないか
そう思ってしまう
最近は考え事が増えたからだろうか
そんなこと、自分にも分からない
『灯向…だいじょぶ…?』
耳元で聞こえる声
№5の、優しくて心強い声
『うん…大丈夫…“なんでもないよ”…』
『………そう…』
なんだか寂しそうな声になった
何故だろう
分からなかった
コンコンコン…
ノック音が聞こえて我に返った
もう5号室の目の前だった…というより、№0は少し通り過ぎていた
『……あ…』
『遅い…放送があれば直ぐに来い、待たせるな…態々呼び出してやってんだ…時間を無駄にするな、一分一秒たりともな…』
『…ごめんなさ……………』
『ごめんねぇ〜っ、メアたちはゆっくりするの、だぁーいすきだから〜』
そう、№5が被せた
庇ったのだろうか
何故だろう
『…優先順位を考えろ…その前に、口を弁えろ』
『ハァーイっ』
元気に返事をした
そして№0の手をギュッと握り、部屋にそっと引き入れた
『……、、大丈夫…謝る………て…灯向に……だから…』
機械音が遮ったせいで、はっきりとは聞き取れなかった
でもきっと…
《大丈夫…謝ることなんて灯向にはないんだから》、と言ってくれたのだろう
そんな気がした
ただの、思い込みがすぎるだけかもしれないけれど…
そう信じたかった
何かに…縋りたかった
『お前らに初仕事だ』
そう言って机に手を付き、4人分のカルテを差し出した
そして数秒の沈黙が流れた
が、どうもノイズにしかならなかった
『戦場に行け』
そんな言葉が耳に入った
『……ぇ…?』
『せ、戦場…?あはは…っ』
笑い声混じりに、でも混乱気味な声でメアが聞き返した
繋がれた手には力が僅かに籠った
『お前らは元から戦争で戦わせるための兵器に過ぎない、そうだろう?』
『そ、そう…だけどさ、、え、ほら、訓練…とかしてなくなぁい…?』
№5がわなわなと疑問を口にする
『そんなもの…今は必要ないだろう。
まずは実力を見る必要があるだろう』
『ははっ…実力が分からぬうちは…ってことねぇ〜…それでぇ?…実力が雑魚けりゃ、サヨナラ・アディオース…ってゆーことかな?』
『……あぁ、廃棄処分だ、弱い物など必要ないだろう、費用や時間…その他諸々の無駄使いに値する』
ふっ、と鼻で笑った№5は1度俯いてからすぐに顔を上げた
『やってやんよ、、メアは強いもんねっ』
いつもの明るい笑顔、鈴の鳴る音
なんだか背を押されているような…でも、
(……戦争…死ぬ…嫌だ…嫌だ…怖い…こわい…っ)
ガタガタと手と足が震えているのがわかる
№5の手の握る力が強くなる
『大丈夫、メアたちは強いんだよっ、灯向は強いっ!大丈夫っ!…ね?』
うざったいほどに頭の中は同じようなことを繰り返そうとしている
まだ、、頭の中では怖いだの嫌だ、だのがグルグルしている
その度にメアが『大丈夫』と声をかける
もうこれ以上は呆れられてしまうかも
分かっているけど…
つい先程まで、つい数ヶ月前まではただの子供で、小学六年生で…あの人に守られてばかりの子供だった
それなのに、なんだこれは
夢なのではないか…?
ただ、長い長い嫌な夢を見ている
嫌な夢…怖い夢……悪夢だ…悪夢…
(悪夢の中でメアに慰められてるのか…ふふっ…変な感じ…)
顔が強ばる
『頑張らなきゃ…ううん…夢だから…夢だからきっと死なないよね…そうだよ…』
自分に言い聞かせる
深呼吸をして落ち着かせる
『行こう…僕らで行こう…!大丈夫…!ありがと、メア…』
そう言って、立ち上がる
『立場を弁えろ、№0…。説明をする』
『うわ…メアこーゆー人キラーイ…』
№5がボソッと笑いながら文句を呟いた
『……まずは敵軍も同じ、実験体兵器を使用する見込みだ、だから壊せ。それが第1層だ、重要用語は多々出すだろう。覚えろ。
…第1層が突破できたら次は第2層だ…
そこには実験体以外の機械が並んでいるだろう、それときっと騎馬隊がいる…それらを消し去れ。ただの邪魔だ…。
最後に第3層…そこには人と強力な実験体兵器がいるだろう…
それら全てを破壊し、敵軍の持つコアを手に入れた暁には、お前らに生の権利を一部与えよう…以上だ、準備をしろ』
そう、長々と、だけど淡々と説明をした
コア…そう呼ばれたものを手に入れる
そうすれば得られる生の権利
ということは、元々№0達には生の権利なんてもの、なかったということだ
『うわぁ〜、、一部かぁーい?酷いなぁ〜
メアたちには元から生きる権利なんてありませんよぉ〜ってこと〜?ひどぉい』
震えた声で№5が第一声を出した
『命をかけた…そして生をかけた…
はじめてのおつかい、か…』
『ONEマイライフ!#4』を読んでくださりありがとうございますっ
いやぁ…いかがでしたでしょうかっ、なんだかんだで、あとがきも既にネタ切れになりました…
雑談でも…しましょうか。昨日ですね、灯向を描いていたんですよ、そしたらぁ…なんかメアも描きたくなって…暦も描きたくなって…
結果、3人の集合絵が描けて幸せ?でした〜
(作者のネタ切れ雑談に付き合っていただき、ありがとうございました…)




