<#3.5 初めまして>
収容棟…
色鮮やか…とはいかない、ここも真っ白な廊下や広間
『しゅーよーとーっ!しゅーよーとーっ!』
なんでそんなに嬉しそうなのだろうか
ユウエンチに来た子供のよう
子供…
(…僕も……まだ12歳の子供なんだっけな…そういえば)
当たり前のこと
それなのに新鮮に感じてしまう
『そうだよ、収容棟…ここは夜とかに集まって、みんなで遊ぶの!当分、研究員さんは来ないからね』
『おぉ〜っ』
キラキラと目を輝かせる
帽子を振り回して、走った
『そこの廊下を行くとね、緑ぃ壁紙になるから、そこの4番目の扉に入るの…したらまた白い廊下に続くよ』
『そこがお部屋?』
『うん!6番だから…近い……とは限らないかぁ…』
少しの間が空く
『…さみしーの?』
『え?』
驚いた
初めてそんなことを言われた…のかな……
もし…既に言われているのなら…
申し訳がない…
(言われ…たっけ…)
一瞬…ダレカの姿が浮かんだ、が、それもすぐに消え去り…そのこともすぐに忘れた
『あ、いや……あ、あ!部屋…隣じゃんっ
研究員さんが札をねぇ…こうやって事前に下げてくれるの、ありがたいのっ』
『……そうかぁ〜っ!えー!隣?隣ぃ?やった〜っ!』
『大はしゃぎじゃん』
№0は顔をくしゃっとさせて微笑む
そしてゆっくりと№6の頭に手が伸び、音もなく撫でた
『ん?えへへっ』
可愛い笑顔、優しい笑顔、愛しい笑顔──
⟡.──────────── .⟡
№6の匂い…色に誘われたのか、まるで花に集う蝶のように全員が集まった
(あ、みんな来た……)
『どしたのー?誰その子ぉぉ』
『メア…あ、、えっとね、』
『№6!由武だよぉ〜』
『№6…?』
『うん!』
へぇー、とまじまじと№5が観察するかのように視線を撫で回した
『……似てる』
『…?…なにがぁ?』
『メアに性格そっくり!灯向大好きでしょぉ〜』
『お!気付いちゃったぁ?もちろん大好き!』
ほらね、とでも言うように№5はドヤ顔を決めた
双子実験体…ならば似るのだろう
そうでなくても、還るところが…造り出された本体が同じならば、似つくのだろうか
(たしかに、2人ともそっくりだなぁ…見た目、髪色とかも一緒だし…あ、でも歳と服装とかは違うや)
『目の色、メアもおんなじ?』
『…メアの?んー、どーでしょ〜かっ』
『え!気になるじゃんかぁ…っ』
№0は頬を膨らませたり
『喧嘩かしら…?それなら…外でやってちょうだい…』
『お、おは、よぉ…』
♡№12が口を挟んで割った
♢ №12は申し訳なさそうな顔で、体を小さく竦めつつ、挨拶をした
『あ、おはよ、違うよっ。喧嘩、してないよ〜』
№0は両手を振って否定
『……それで…その子が№6なのね…?初めまして』
『初めましてぇ〜』
№6が嬉しそうに手を振る
そして、名は?と首を傾げた
『……№12 アリス』
『……№12 アリス』
ピッタリと、機械のように重なった声
『…私はあーちゃん、そう皆に呼ばれているわ』
『ぼ、僕はあっくん…って……よろしく…』
『わぁーお…綺麗にハモってたね!すごいっ』
№6は感嘆の声を上げて拍手をした
『…あ、それでね、この子が№1 峰川暦、あんまり初対面の人と話すのが…苦手みたいなの』
『へぇ〜…よろしくねっ!こよくんっ』
『こよくっ…ま、まぁ…それでも…構わないけどっ!』
№1が少し嬉しそうな顔を隠して、そういった
『もぉ…僕と2人の時はもっとフワフワしてたのにぃ…』
そう、最近…いや、№5が現れてから、№1は以前の柔らかな口調から、冷たい口調になってしまった
何故だろうか、なんて考えても無駄なことだろう
いや、本当にそうか…?
(なんか…悩みとかあるのかな…寄り添って…あげなきゃ…っ)
『暦…どうしたの…?ほんと、最近変…だよ…?僕も、君との関わりは薄いけどさ…』
『なんも…ないよ、ちょっと…ね、』
(ちょっとって…なんかあるんじゃんっ)
『ほんとーにっ!悩みとかあれば聞くからねっ』
№0が胸を張って笑うと、№1は見上げ、嬉しそうに笑い
『ありがとーね、えへへっ』
(あ…いつもの、いや…“前までの”笑顔…)
№1は皆の輪に戻った
(隠し事…やっぱあるんだな…僕の隠し事なんて…この子達には分かってるんだろうけど…僕にはみんなの隠し事…分からないや)
胸がキュッと、小さくなった気がした
これが、寂しいのかな…と小さく呟いた
⟡.──────────── .⟡
『おはよ、由武くんっ』
『ん……?』
『あ、ごめんねっ、勝手に入っちゃって…』
目を擦り、重い瞼をこじ開ける№6の姿を、微笑ましく眺める
寝癖が付いた髪をとかして直しながら、朝の爽やかな青白い光に包まれた
『朝ぁ…早いねぇ……、、みんなと同じ棟のお部屋ぁ……ぼく好きぃ…』
『…!ふふっ…嬉しいなぁ…前のお部屋って、どんなだったの…?』
№0が問う
№6の顔が驚きの表情に変わった
どこに驚くところがあったのかなんて、№0には知る由もない
『なんかぁ……真っ白!机も椅子も窓もない真っ白!ベッドはあったよぉ?フワッフワなやつ!これと一緒だねぇ』
『真っ白……え、研究所と一緒…辛くないの?』
『んー…慣れた!だって…最初に目を覚ました時もねぇ、既に真っ白だったから!』
『慣れ……』
慣れても良いものなのだろうか
そんな心配…する必要はないのかもしれない
(でも……悲しいじゃん…)
『ー?灯向!灯向っ!みんなのとこ行こっ』
『あ、ごめ…いや、うんっ…行こっ』
№6に手を引かれて歩く
小さな手、暖かい手…
№0の冷たい手にとっては心地の良い手だ
広間には4人が既にいて、♡№12の作ったクッキーを食べていた
『あ!クッキーっ!!美味しそっ!ぼくも食べたいっ』
『ほんとだっ』
『あら、起きたの…えぇ、好きなだけ食べて良いわ…余るほど作ったの』
『おいひっ!おいひーよっ』
口いっぱいにクッキーを詰め込んで幸せそうに食べる№5
『あー、こらこらっ、入れすぎっ!喋るなら飲み込んでからにしなさいっ』
『ごくんっ…ぷはっ、えへへ〜、灯向、なんだかおかーさん見たぁーいっ』
『お母さん…?』
『うん!』
お母さんって…こんな感じなんだ…
そうなんだ…
そんなことを思って首を傾げる
『何となく、だけどね!!!知らんけど!』
№5はそう付け足した
その顔には邪、なんて言葉は似合わない笑顔
『お母さん…良いね、まぁ……ここで言うなら、あーちゃんが1番お母さんみたいだよっ』
『えっ?私が…?そうかしら』
面倒見の良い母親、そんな気がした
普通のお母さん、なんて知らないけど
なんだか嬉しかった
『あれ?由武は?』
そんな声が聞こえた
誰の声だったかは、はっきりと覚えていない
『え?お部屋?かなぁ、僕見てくるよっ』
№0はそう言って広間を後にした
コツコツと響く廊下
そこだけは…やはり実験棟…本棟と似ている
ガチャ…
『由武くん…?いる…?』
扉を開けた
姿は見えない
部屋はこの1つだけ
(…食堂…?いや、今日はご飯ない日だしなぁ…んー、本棟…だとしてもあれかぁ…自ら行かない…よね、嫌だもん)
そう思い、まだ立ち入ったことのない、場所が思い浮かんで走った
それは……液体カプセル保管庫…
そのくらいしか、まだこの巨大施設の場所が分からない…
(いなかったら…戻るのを待つしかない、か)
走る足音が広がる
なんだか…あの匂いがないのは、心細い
出会ってからまだ、24時間も経っていないのに…
ギィィ……バタンッ
ガチャ…カチャッ…キィィィ…パタン…
そんな金属の二重扉と鍵を開ける音が響いた
2枚目の重い扉は案外、ゆっくりと閉じた
ピッ…ピッ…ピッ…
ポコポコポコポコ……ボコッ…
ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…
液体カプセルの中の気泡の音や機械音が不気味に大きく聞こえる
真っ青な光に包まれている
朝の陽の光とは全く別物の青さ…
顔を上げた
『っ……』
声が詰まった
まだ会ってもいない子供たちが何人か、両手に収まる程だが、カプセルの中に浮かんでいた
№12未満の子供たちなのだろうか……
それとも、それ以降の子もいるのだろうか
分からないが、、何人もいた
きっと…その子たち以外にも、
処分されてしまった…
いや、死んでしまった子もいるのではないか
そう思った
ふと視線をズラすと、№6の姿が見えた
1番手前の誰もいないカプセルに手をついて、カプセル内を眺めていた
『由武くん……っ、もう…心配したんだよ?急に居なくなっちゃうんだから…クッキー…まだ残ってるから……』
そんな声は届かなかったのか、こちらへの反応がない
代わりに、空のカプセル内に向かって口を動かした
『初めまして…ヒカゲ』
『ONEマイライフ! #3.5』を読んでくださり、ありがとうございます!
今回は#3を「#3.0」と「#3.5」に分けて投稿してみましたが、いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいですっ
これからも『ONEマイライフ!』をよろしくお願いします!




