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<#35 イザユカントス>

『乾杯〜っ』


 チャリン…カーン…


ガラス細工のコップ同士の優しくぶつかる音

軽く響くこの音が心地よい

風鈴を…思い出させる音


『シアル様、お肉食べる?

あーんしてあげようか?』


イタズラな笑みを浮かべて肉を僕の口の前に持ってくる

大好きなお肉が今目の前に……!!

食べないわけがないだろう…!


『やったぁ!食べちゃぉ〜っ』


パクリと勢いよく食べる

とても美味しい!

この肉は以前、僕が城下町で見つけた、

魔獣と呼ばれる獣の肉を売っている店のもの

高級なものではないが、とても美味しい

柔らかくて、臭みのないこの肉は

きっともっと大きな価値がある気がする


『あははっ、すごい勢い…美味しい?』


『うんっ!すんごい美味しいっ』


『なら俺も食べてみよ…』


『毒味係にされたぁ!?』


『ははっ…バレたかい?

なんて…そんなことあるはずないでしょう

シアル様には美味しいものをいっぱい食べていてほしいからね!』


『えぇ〜?嬉しいなぁ〜』


『照れた?』


『ううん?』


『ふふっ、なんでよ』


『ツウジョー運転っ』


『そっか…確かに』


微笑むアルラルガは幼い頃と変わらない

世界一大好きな親友の笑顔だ

壊されたらたまったもんじゃないや


『あっ、そうだよ、アル!』


『ん?何?』


『見てみて!気付いた?

シュリアの髪飾り…僕が作ったのっ

かわいっしょ!』


『……ほんとだ、新しいのになってる!

でも…俺は髪飾りよりシアル様のが可愛い(面白い)と思うけど』


『僕…何年経っても面白いとか変な人で

トーイツするのやめてぇ?』


『事実』


『えぇ〜?』


『事実以外のなんでもないじゃん』


『それに比較対象おかしいじゃんかぁ』


『大丈夫、結構合ってる』


『どこが!?僕髪飾りだったの!?』


アルラルガは笑ってもう一度肉をよこす

僕は頬を膨らませてながらもパクリと食べる

…美味い

美味しいから許す…


『美味しかったから1回だけ許す……っ』


『いいの?』


『………………………ぅん』


『ふふっ、ほぼ「ん」しか聞こえないんだけど…?』


『いーのいーのっ、それが僕っ』


『お兄様はアルラルガ様の前では…

本当に人が変わりますね』


シュリアがもぐもぐとパンを頬張りながら

僕らを見て笑う


『別に良いでしょ〜

大好きな親友がいるんだよ?存分に甘えなきゃ

そう言ってるシュリアもデレデっ…』


『わぁぁぁーーーっ!!

なっ、なんでもありませんよ……っ』


僕の口を塞ぎながらアルラルガに言う

その姿は本当に可愛らしい

さすが母上と父上の娘……っ


『ん?そうですか…?

それにしてもシアル様…俺に甘えてくれるのかい?犬かな』


『犬じゃないっ

あははっ、犬かぁ……言われたことないなぁ』


(動物に例えられることなかった……

いや、んー…そう言ってくれる友達もいなかったなぁ…まず…ふふっ

そう考えると嬉しいや)


『微笑むくらい嬉しかったの?』


アルラルガが目を少し細めながら

僕の顔を覗き込む

その後ろでシュリアは頬をふくらませている

可愛い

シュリアの方が犬っぽいとも思った


『まぁね、アル、シュリアは動物で例えるなら…なぁに?』


『シュリア様?……ミニャーロ…かなぁ

ほらっ、耳が長くてモッフモフのさ!』


自分の手をミニャーロの垂れた耳のようにして頭に添えた

ミニャーロは簡単に言えば…だっくすふんど?とかゆーやつに似ている動物だ

それと鳥を混ぜたみたいな…変な動物

「だっくすふんど」が分からないけどっ


『ミ、ミニャーロ…ですか……』


『えぇ、柔らかいシュリア様の髪がミニャーロの耳のようで可愛らしいので、ふふっ』


『かわいらしぃ…

えへへ…ありがと…ございます』


シュリアは自分の髪を指に絡めながら

俯いた

耳が少し赤い

恋する乙女を見るのは…

とても楽しいものだと知った今日この頃


『ご馳走様でした…美味しかったぁっ』


僕は先に食べ終えてゆっくりと食器を重ね

そして厨房に駆け、食器を流し台に入れる


『ごめんなさいっ、洗い物頼んでも良いですか…?

夕飯!夕飯の時は必ずやりますのでぇ…っ』


僕は総料理長…シャーラ爺に何度も謝った

そして笑ってから僕の肩に手を置いた


『はっはっは!

謝ることなどありませんよ

なんならそれが我々の仕事です、逆に奪われてしまってますよ』


髭をいじりながら大声で笑って僕の背を押す


『早くお二人の所へ戻って差し上げなさい

後片付けなど容易いものです』


『あ、ありがとう…ござぃますぅぅ…っ』


僕は一礼してからふたりのいる食堂に戻る


『………………』


『………………』


  カチャ…チャ……

    チン…カチャ………


『……………』


『……………』


誰も何も話していなかった

食器の軽く当たる乾いた音だけがあった


(え、無言やめて…?怖いんだけどぉぉ…)


僕は恐る恐る席に戻って座る

そして2人ともこちらをバッと振り向く


『!!?』


『1人にしないで!』

『1人にしないくださいっ』


『2人だよ!?片方消さないで!?』


今にも泣きそうな幼子みたいな声で2人が言うが、僕にはどうしようもない

でも…2人が気まずそうだったのはわかる

多分きっと恐らくもしかしたら……、、うん…


僕がいない間にシュリアとアルラルガも食べ終わったらしく、「ご馳走様でした」と言ってから席を立つ

そして2人とも僕に耳打ちした


『お、お兄ちゃん…私2人きり無理ですぅ…

恥ずかしくって死んでしまいますよぉっ』


『え、えぁ…ぇ…』


『シアル様ぁ…っ

わ、話題が…分からない…っ

女の子…女性との関わりが少なさすぎる!』


『は…んん?えぇ?』


『『だーかーらぁーっ』』


『2人同時に言われた聞き取れないよ!』


『『えぇ!?』』


『え!?ぇ…?僕のこと、ほんとーになんだと思ってるのさ……』


はぁ…、とため息を着きながらも笑う

するとアルラルガも面白そうに笑う


『あははっ、シアル様はシアル様だよ

俺の愛すべき(大好きな)親友だ』


『かっこつければ良いと思ってんのかぁ

…………許すけどっ』


『良いんだ!?』


『お兄ちゃんっ』


『ん?』


『えっ……いや、その…お兄ちゃんはお兄ちゃんだと……思ってる…です』


『……ふふっ、可愛い〜っ

僕の妹可愛い〜っ』


『えぇっ、そ、そんなことありませんよぅ…』


『シュリア様が照れていらっしゃる』


照れるシュリアを見てアルラルガも笑った

そのアルラルガの笑顔はいつ見ても優しいものだった


『照れてなど……っ

あぅぅー…』


『シュリア〜、素直になりなよぉ

ね?その方が良いよ〜?


ほらっ、大好きなアルが目の前にいるよ?』


僕は耳打ちでシュリアにそう言った

シュリアは首がもげそうなほど激しく首を振る


『えぇ〜?』


『シアル様、次はどうした?』


『シュリアがさぁ〜?モゴモゴモゴ』


『は、ん?』


『聞かなくても平気なものですのでっ!!

お兄ちゃん!何しようとしてるんです!?』


シュリアに咄嗟に抑えられた口

モゴモゴとしか音が出ない

シュリアの顔は真っ赤だ


『ごめんなさぁーぃ…………』


『もぉっ!ほ、ほら、次のご予定があるのでしょう?』


『あ、そーだった!

シュリアに紹介したい人達がいるんだよっ

ね〜っ!アルっ』


『紹介したい人……?』


『えぇ、シュリア様』


僕の代わりにアルラルガが口を開いた


『私とシアル様共通の友人です

3人の者をご紹介させて頂きますね

確か中庭に集合とさせて頂いておりますので、ご一緒願います』


シュリアに見せる笑顔は爽やかなもの

僕に見せるものとは少し違って、

親友ってこんな感じなのか、と理解が深まる

僕は2人の後ろを歩いて中庭に向かった


『ここ最近はお二人はあまりお会いできていないとお聞きしていましたので…

共通の、というものがなんだか新鮮です』


シュリアは口元に手を添えながら微笑む

アルラルガの前では完璧なお姫様を

この子なりに頑張っているらしい


『新鮮……そうですね

最近は本当に会えていなかったので

話す機会もあまりなくて…


シュリア様とこうやってお話できるのも、

私にとってはとても嬉しいことですよ?』


『嬉しい………

えへへ…ありがとうございますっ

なんだか照れちゃいますっ…へへっ』


2人とも楽しそうに話している

僕は中庭の景色を眺めながら少しづつ間を開け、1人の小さな時間を楽しむ


鳥のさえずり

木々の揺れる音

風の音

使用人の足音

窓を開ける音

花売り少女の鼻歌

少女の持っている花の揺れる音

馬車の通る音

誰かの話し声


そんな音を拾いながら歩く

とても心地がいい

瑠璃色の太陽はもう天高く昇っていた

あと少しすれば白い太陽は沈みきる

次は白い2つの輪に入った緑の月が顔を見せる頃だ

僕はその月が大好きだ

ほんのりと、優しく光っているからだ

理由に……なってるかな


『ふふっ、シアル様が可愛いと言う理由も分かりますね

そう言うシアル様も可愛いのですけれど〜』


『お兄ちゃんが…?』


『えぇ、親友というのは相手が可愛らしく見えてしまうものなのでしょうか、』


『は、、!?』


静かに聞いているのも我慢の限界…っ

親友って可愛く見えんの!?

は!?

それ僕知らない!!


『?』


『首傾げないで!?

急に可愛いって言って何があったのさっ』


僕の頭の中は“めりーごーらんど”のように

グルグルと回りながらハテナマークを浮かべる

もう何がなんだか

ため息を漏らす


『はぁ……あははっ…アルと居るとさ…

なんだか暇しないよ』


『そう?嬉しいなぁ〜、

俺、世界一の幸せ者だよ』


『んぅ……そうかぁい?』


『ははっ、そうだよ

シュリア様も良い兄をお持ちですよ』


シュリアにも微笑みかけた

何故だろう

その笑顔から、僕は目が逸らせなかった


⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·


『お嬢様…母上様がお呼びでございます…』


1人のメイドがシュリアにそう伝えた

「あっ、今行くね」と頷く


『ちょっと行ってくる!アルラルガ様っ、お兄ちゃんをよろしくお願いします…っ』


『お任せ下さい』


『えぇー…僕って面倒みられる側だったんだぁ…

行ってらっしゃ〜い』


シュリアの背に手を振る

……僕は何故呼び出されたか知っている

だって…僕からの提案だもん


(てへっ…うわキモっ!)


しばらくしてから、シュリアは戻ってきた

走ってきたからか、驚いたからか、息が弾んでいる


『ちょっ…お兄ちゃんどういうこと!?

そのっ…え!!?』


『んー?おかえりぃ〜』


『んー?じゃなくって!旅って…魔王討伐って何!?は!?

わた、私っ…実戦とか…まずお兄ちゃんも冒険者とかじゃないし…!何考えてるのっ』


『いやぁ…僕はこっそり魔獣討伐とかしてたしぃ

冒険者ギルド入ってたしぃ…アルにもお稽古つけてもらっててぇ〜…』


『はぁ!?んん!?

いやだからと言って魔王!?あの!?』


『うんっ!』


『馬鹿!?』


『ううん!』


『は、はぁ…』


シュリアは訳が分からない、と言うように天を仰ぐ

そして眉をひそめた


『承諾は…しちゃいました……あ、あまりにも急なことで…つい…ですが…っ』


『やったぁ!ありがとんっ

がんばろーねっ!』


笑って僕はシュリアの手を握る

そのまま集合場所へと走った


⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·


『アルラルガ!シアル様も!』


中庭で座っていた茶髪の少年がこちらに気付いて

大きく手を振っている


『あっ、シュリアちゃんもいるじゃん……』


もう一人の赤髪の少年も嬉しそうに笑う

最後の黒髪の少年はチラリと見ただけだった

僕は走って3人の所へ向かった


『みんなぁ〜っ!久しぶり久しぶりっ

元気してた?』


僕は茶髪の少年……トアに抱き着く

トアはこの国の180代目の剣聖だ

16歳で、1つ上…最年長の少年だ


『トアくん、寂しかった?』


僕はトアの首に手をかけて彼の膝に乗る

少し顎を引きながら首を傾げる


『寂しくないよ?』


『えっ、悲しいっ!僕寂しかったんだよ!

アルにもトアくん達にも会えなくってさ…』


『そーかー』


『ちゃんとしたお兄ちゃんになるのも大変だしさぁ、貴族のマナーとか分からないしさぁっ』


『おい王族』


『てへっ』


『てへ、じゃないでしょ?ほらほら、アルラルガがものすごい形相で見つめてるよ?

シアル様』


『んぇ?』


僕が振り向くと眉を顰めて見下ろしているアルラルガが見えた


『おぅ……』


『あっ、、いや…なんでも…

トアお前後で覚えとけよ……』


『あー、怖い怖ーい』


トアは笑いながら両手をあげた

アルラルガは僕を引きずりながら回収


『んぅ……なにぃ?』


『俺の膝の上に座ってて、ほら』


ポンポンと自分の膝を叩いた

どうやら僕の親友は甘えたがりの僕を

よく理解っているようだ

嬉しい

さすが僕の親友だ


『やったぁ〜』


僕はどーんっと突っ込むように抱き着き、

アルラルガの膝の上に座る


『コホン…えっとぉ…甘えるのも良いですが…

その……』


シュリアは少し困った様子で見下ろしていた

そして僕の服を掴んで無理やり立たせると

頬をふくらませて


『そこは未来の私の居場所なのですっ

お兄ちゃんはダメっ、ずるいですっ』


と、小声で言う

そして僕の袖を思い切り引っ張った


『ほらっ、私にご紹介してくださるのでしょう?ご友人の方々を…』


そう言ってトア達をチラッと見た


『あー、そうだったねぇ

まず1人目っ!

茶色がトアくんっ

この国の剣聖だよ…へへっ、かっこいいよね〜


2人目!

赤色がラージャくんっ

ランがあだ名っ!由来は…知らんっ

何となく〜

ランは一応…僧侶っ


最後に3人目!

黒色がオファル!

オファルは面倒臭がりで、すこーし無愛想だけど

めっちゃ良い人っ!ちっちゃい子とシュリアが大好きだよ〜』


『一応……?』


『なっ……!!ちょ、シアル何言って…っ』


2人は慌てた様子で僕の口を塞ぐ

なんだろう…僕の周りの人はみんな

僕の口を塞ぎたがるなぁ……

苦しいんだけどなぁ


『んー?のーにぃ?』


口を塞がれて、籠った音で何かと首を傾げた


『なーにぃ?…じゃねぇよ、馬鹿

何余計なこと喋ってんだ…!


特に最後のシュリア様のやつ……!!』


小声で低くそう言って、僕の背中を蹴っ飛ばす

ほんの少し鈍い音がして

一瞬息が止まるのがわかった


『いっ……な、何するんだよぉ…

いたぁーい…』


『オファル!シアル様に何してんだ!

俺の愛する者(大親友)を少しでも傷付けてみろ

その首が天高く舞うことになるぞ…』


『ちょ、アルぅ…そんな怖いこと言わないよ〜』


『…つーかさ、俺らを紹介する時…なんで色分けだったのさ

別に…名前から入っても良かったんじゃね?』


オファルは自分の黒い髪をいじりながら言った

僕は少し考えてみた


(確かに……おぉー、名前からでも全然良かったじゃんか…!

ん?いやでも…頭の色で言ってあげなきゃ、シュリアが理解できないのでは…?)


彼は…シュリアを舐めていた

ずっと幼いままだと思っていたのだった


『でもぉ…頭の色で言ってあげなきゃ、シュリアも区別つきづらいんじゃ…って思ってさ

ほらっ、オファルも好きな女の子に姿、覚えてもらえないよ?』


『っせぇ……まぁ、そっか、なら色で…いいのか?』


『うん!!』


『ねぇシァ…、好きな子…いる……?』


『んー?急だねぇ〜

えぇー…好きな子かぁ…………

…みんな、みんな好き!!』


ラージャは目を少し細めて考え込む

そして「そうじゃないんだけどな……」と呟いた


『…まぁいいや……それで…今日出発なんだろ…

良いのか…?もう月昇るが…?』


ラージャは天を指さした

もう空は暗くなり始めていた


『ありゃ…じゃあ準備して行こうかっ

あ、3人はもう準備万端じゃんっ』


3人の背後にある荷物を見て僕は手を合わせる

「ちょっとまってて!」と僕らは急いで城に戻る

そして荷物を持って戻ってくる


『お待たせ〜』


『遅い、もう夜だ…ほれ、行くぞ』


オファルがやれやれ、と言いたげにため息をつく

そして荷物を手に取って歩き出す


『あわっ、待って〜…

もうっ…ははっ、置いてかないで〜』


僕はシュリアとアルラルガの手を取って

3人の所へと駆け寄った


『いざ、遠い旅へ…!!』


『え…遠い旅ってなんか不吉なんだけど…?』


『えぇー…じゃあ、なんだぁ?』


『…普通にしゅっぱーつ…とかでいいんじゃ…』


ラージャがそう言って自分の頬に触れる


『そっか!なら…

しゅっぱーつ!!』

#35を読んでくださってありがとうございましたぁ…


お久しぶりです…っ


なんか…めっちゃ長くなっちゃいました…

あれだね、#0思い出しません!?w

あれ…一応1万文字近くあるらしいですよ!

俺びっくりしちゃいましたよっ


また36も凄いことになるかもしれませんが…

読んでくださると…嬉しいー…ですっ…

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