<#30 ᑭᗩ乙乙ᒪE >
僕は10歳になった
書庫にも毎日のように通った
そして嬉しい知らせもあった
実は3歳の時の冬に、妹が産まれていたらしい
たしかに…その頃は母と顔を合わせることが減っていた
会いたいとも思ったが
忙しいものだと思っていて、会いにいかなかった
何故その時に教えてくれなかったのかは、今も分からない
『シアル…今日は事前に伝えた日です…いいですね?』
母がいつもとは少し違う口調で話す
そっと僕の肩に両手を置いて微笑んだ
『はい、嫌われなきゃ…良いのですが…』
そう、今日は妹の誕生日…
そして初の対面をする日だった
僕は嫌われまいかと心配で仕方なかった
『大丈夫ですよ…うん、大丈夫っ
私のシアルなら大丈夫よっ…だって…
だってカッコよくて優しい子なんだものっ』
そう微笑んでから立ち上がる
執事の一人が何か母に耳打ちをした
そして嬉しそうに笑ってから頷いた
『どうされたのです?』
『ふふっ…お楽しみよ〜』
「ニアラス王妃様、シアル第一王子殿下のご入場です!」と声がかかり、金管楽器の音が響く
僕は深呼吸をしてから母に続いて歩き出す
母の桃色のドレスが歩く度に小さく上下する
足首まである長い髪はドレスに合わせた赤い髪飾りで飾られていた
僕の服はというと、白基調とした礼装だ
若干…僕の知っている軍服を連想させるものだった
金の刺繍が胸元から肩に流れ、袖には青と黄色の細い飾り紐が縫い込まれていた
これは平和の花と果てしなく続く青空を表しているらしい
金は、この国で代々受け継がれてきた小麦や、稲畑を表しているだとか…
『お待たせジェーン…シアルがとても緊張しているの…ふふっ、可愛いでしょう?』
母は父の元に行き、そう話した
『なっ…可愛くなんてありませんっ
それに…それになんで緊張しているなどと言ってしまわれるのですかぁ…
恥ずかしいではありませんか…っ』
『あらっ、可愛いわぁ〜』
『えぇ…はぁ…まぁ、今日は許しますよ』
そう言って僕は、まとめられた少し長い前髪をかき上げ、顔を上げる
すると父の後ろに母と同じような色のドレスを着た少女と目が合った
『っあ…』
『はっ………こっ、こんにち…あっ…ご、ごきげんよう…?』
『え、えとっ…そのっ…僕っ……私?は…』
緊張で背筋がのびる
カタコトになってしまう自分が少しウザったい
何故もっと上手く話せないのか…
こんな些細なことでも自分を責めてしまう
『大丈夫…深呼吸してみなさい』
父が僕と妹とを交互に見つめて言う
『は、はいっ…』
『うんっ…じゃなくって………はいっ…』
2人とも頷いて深呼吸
少し自分を急かす気持ちが落ち着いた
『…お初にお目にかかります、僕はこの国の第一王子…シアル・オルターと申します…
……いっぱい…仲良くしてくれると嬉しいな』
僕は自己紹介を終えて微笑んでみる
すると妹もパッと笑顔になってくれた
『わ、私はシュリア・オルター…と申します…っ、おっ、お兄ちゃ……お兄様と…私もいっぱい仲良く…し、したいです…っ』
『お兄ちゃんでも…その…良い…よ?』
『っ……はいっ!お兄ちゃんっ』
(良かった…嫌われなかった…このまま…最期まで仲良くいられたら嬉しいな……
まぁ…それもそうだけど────
僕の……シアルの妹めっちゃ可愛いんだけど!?子犬かな!?お父さんっ子…なのかな、あっ…お母さんにも抱きついてる……
前世絶対小動物じゃん!)
僕は幸せだった
こんなにも優しい両親に、愛らしい妹…
これが、僕がシアル・オルターから奪った幸せだ
奪って
奪って
奪った
何もかも…
母も父も妹も地位も名も体も全て…
ならばその分僕が…
魂ごと幸せを作ろうか
『シアル様…っ』
背後から不意に呼ばれる声が聞こえた
振り向くと、同い年くらいの少年がいた
『はい…なんでしょう』
『えとっ……俺は…いえ!私は此の国騎士団所属、ガリーラーファ・リアバーナの息子の…アルラルガ・リアバーナと申します!』
『騎士団……あっ、僕は第一王子、シアル・オルターと申します…既に存じ上げられているとは思いますが…あはは…』
(騎士団員の息子か…どんな人なんだろうか
きっと…この子も騎士団に後に所属するのか
それとも…別の道を────
あっ……また別のことを考えてる…っ)
『えぇもちろん、存じ上げております
貴方様の知名度は驚くほどですから…』
『ぁ…えっ!?な、なんで!?』
『えっ…だって……生まれつきティーラの量が異常、そして…ルーズヴァーナ王国の一件の次の日にご誕生した方…ですし……
あっ…あの一件のこと…知っていますか?
私は最近知って…』
『ルーズヴァーナ…王国……ルーズ…ヴァーナ…聞き覚えが……』
(なんだ……どこ…あっ!!?えっ…ちょ…)
『ルーズヴァーナの一件ってあの!?えとっ、えとっ…ルズリオの…ルズリオ王の!?』
『えっ…ぁ…はいっ
け、結構有名な事件でして…
ルズリオ様、その専属の魔術師様、そしてべオル様が行方不明となられまして…
それと同時に、西側諸国での不可解な地震が何度も発生…そして魔素の急激な減少事件です』
まさか…まさかそんなことがあるはずない…
べオルとして生きた世界と…
この世界は同じ場所…?繋がっているのか?
偶然…なのか…
確かに…地獄で選んだ扉も、
互いにすぐ近くのものだったけれど…
『そ、そう…なんですね、僕もつい最近知って…
その話題を出す者がいなかったもので…
あははっ…』
『いえいえ、私も同じですよ…
あっ、そうではなくって本題!
本題に入っても…よろしいでしょうか』
『あ、はいっ…どうぞ…お待たせしました』
『それでは…内容は後程、まず始めに………
如何でしょう…私と、手を組んで頂けませんか?』
#30を読んでくださりありがとうございます!!
#30まで書くの頑張ったぁぁっ
最近まで#3で行き詰まっていたのに…今じゃもう30話も書いたの!?って感じで…まだまだだと分かっていますが…ちょいと自分を褒めさせてくださぁぁいっ




