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<#29 手の中のシアワセ>

光に向かって飛び込んだ

淡い光に包まれて、目を閉じる

どうだろう

次はどうだろう

また目を覚ましたら不幸がそこにはいるのか

はたまた…幸せがいるのか…

知る由などないまま、僕は重力を感じ始めていた


『……ティ…セファ…………』


『ニーニャ!エルフィー スティーリァ…』


徐々に声がはっきりと聞こえてくる

日本語……じゃない…

…当たり前か

僕は目を開く

明るい…

起き上がろうとする…が、起き上がれない

代わりに、天に向かって手を伸ばしていた


(え……?ぇー…えー……)


その手はとても小さかった

べオルの時よりも…

少しぼやけている視界でもわかった

そして大きな影が近付く

持ち上げられる感覚

背中にそっと暖かい感覚が伝わる


『シアル……ユラ アリュー ウェイナーラ…

ウェイナーラ……』


優しくて温かい声

背中をゆっくりと摩られる

心地が良い

うとうとし始める


(……あぁ…ようやく手に入れたんだ…幸せ…)


僕はふっと心の中で微笑みながら

眠りについてしまった


✧• ──────────── •✧


あれから早3年…

僕はあの日…誕生したらしい

だから…この体の元の持ち主は

自分の人生を生きることなく、

僕に奪われたという訳だ────

そう思うと、胸が痛くなる


今僕は3歳

この世界の言葉も…ある程度は分かるようになった

少しは…日本語のような…そんな感じに聞き取れる

けれどやはり、所々分からないものもある


『あー!シアルっ……ダメじゃない…』


そう言ってこちらに向かって走ってくる若い女性は、

この体の本来の持ち主…シアルの母親だ

名前は…まだ知らない

けれど情報はほんの少しだけ得た

と言いたかったけれど…

まだ3歳の脳では…何故か分かるはずのことも…理解ができなくなっていた

少し混乱している


『もぉ…テリャール…セラフィー!おやつ抜きにしちゃうよ?』


(……別に良いのだけれど…ご飯が…あるなら……いや…それもなくても平気かな…)


次の日にある事を願っていれば…

そう思ってはいるけれど

この体ではすぐにお腹は空くし、眠くなる

それに頭も…重い……

はっきり言えば…めちゃくちゃ不便!!


『たべ…るぅ……』


上手く話せずに、口調も幼くなる

なんだか恥ずかしい…

手も上手く動かせないから、

一人で何か食べようとしても落としてしまうし、物も上手く持てない


『ふふっ…今日のおやつはママのカラゥナのケーキ!』


『からぅな……?』


『カラゥナはママが作った…っていうリリだよ〜』


(出た!!また分からん言葉!!リリ!?リリって何!?


…会話すればする程…知らない言葉が出てくる……うぅ…分からないよぉ…)


僕は軽く絶望しながらも頑張って理解しようとして…“聞く”という方法で勉強する


この世界で上手く幸せを何も取り溢さずに…

生きていくために────


✧• ──────────── •✧


僕はどんどん成長していった

会話もスムーズにできるようになって

言葉も殆ど理解した

手先も器用になって、ボタンだってとめられる

コップにだって上手く水を注げて

上手にご飯も食べられる

「凄いね」って、いっぱい褒めてもらえるし

撫でてもらえる

嬉しかった

僕にとっては初めての幸せ

僕の思う幸せと同じようで違う


これは幸せ……なのかな

少し違っても…幸せは幸せ…か


まぁいっか

僕は用がある

考えるのはそれを終えてからにしよう


『お母さんっ、しょこにいってきますっ』


『あら、行ってらっしゃ〜い

いっぱい読んでらっしゃ〜い』


僕は今5歳…

そして新たなる情報も手に入れた

僕はまた、貴族として人生を始めているらしい

けれど、前とは違う、平気な貴族生活だ

温かくてふわふわしている

母も父も優しくて偉大な人

父はこの国…スラーグラの国王らしい

ギョクザノマという所で、よく色々な人の

相手をしていた

殆どは自分のショサイという部屋にいた


『はいっ』


この生活では父母や祖父母などの家族でも敬語が当たり前らしい。

他国の王子や姫、彼らが歳下だとしても…変わらずだ


僕は走って廊下に出る


『魔術…魔術頑張りたいなぁ…ぁ…でもその前に……文字の読み書きかぁ』


僕は昔から国語とか苦手だった

だからどんな言語も文法も苦手…

できることなら魔術や好きなものだけ学びたいなぁ


トコトコと小さな足音が廊下に響く

途中途中で何人かメイドや執事を見たけれど

みんな壁を向いて、僕に背を向けて動かなかった

不思議に思いながらも走り続ける


そしてもう1つ…もう1つ気になることがあった

メイドたちの服がボロボロで汚れていたことだ

執事たちは真逆で、とても品のある背広姿だった

昔…時々見た、灯向だった頃のお父さんの背広姿を思い出させた


でも…メイドに母が新しく綺麗なものを渡していたり…

「直す」とか言ってた気もするけど…………


『なんでだろ……』


僕は一言呟いてから書庫に入った────


『よぉーしっ!いっぱい読むぞ〜っ

魔術〜魔術〜、あるかなぁ…

まだ一回も見つけたことないけど…えへへっ』


少し遅れて聞こえてくる扉の閉まる音

僕は扉近くにある宝石の

触れそうで触れないくらいの高さで軽くサッと手を滑らせた

するとフワッとすぐに書庫が明るくなる

…これも魔道具なのだろうか


『4度目のショコ!まだまだ半分も読めてないなぁ…いっぱい読みたい、いっぱい読みたいっ』


ルンルンで本棚に手を伸ばす

時間も忘れて読み進めていった

『ONEマイライフ!#29』を読んでくださりありがとうございますっ


 …どーしましょう…投稿ができなくなる日に近付く度に悲しくなるんですが…っ

 皆さん…投稿ができなくなっても…次の投稿を待っていてほしいです…っ

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