<#25 ナレナイ>
陸地が見えてきた
ボス……
砂浜にボートが当たった音がした
重い音が鳴る
ボートから降りると、足裏に靴越しに
柔らかい感触が伝わった
ソフィに手を差し伸べる
ソフィはその手を支えにしてボートを降りた
「ありがとう」と微笑んで僕の前を歩く
ソフィの持つランプは行く先を暖かく照らしていた
砂に足跡を残して進む
振り返ると、ボートは月明かりと海の色で青く染まっていた
再び前を見る
ソフィの長い髪が揺れていた
『ソフィ……』
『なぁに…?』
優しい声だった
いつも…何故か僕の周りには必ず…
悲しくなる程の優しい声の持ち主が居た
かしこまった口調は消えていて
慈愛に満ちた声だった
『僕さ…あのね……』
ドォォォォォン!!!
静かな空間が一瞬にして壊れた
地面が大きく揺れる
視界がブレるような大きな揺れだった
反射的にソフィがしゃがんで
僕を覆うような体制になる
『な、なに……っ』
地面に亀裂が入る
ソフィは走って片側に僕を抱いて避けた
手にはもう武器…というのか
木でできた棒のようなものを持っていた
『大丈夫……きっと地震…だと思うっ
……でも…心配…西は地震が多いものね…』
地面の割れ目の奥底にカラカラ…と
土や石が落ちていく
すぐそこの木の根が半分以上も丸見えだった
底は見えない
けれど水が流れるような音が聞こえた
『海の……』
『かもね…深そうだもの』
ソフィが周りを見渡しながら頷く
『べオル…一応結界の張り方を教えておくね…
何かあったらしっかり使うのよ?
ちゃーんと、ねっ?』
そう言って僕の手を握る
『べオルの分の杖はないのだけれど、大丈夫
杖がなくとも魔術は使えるわっ
空気中には魔素というものがあってね
ティーラの…小さなやつって言ったら良いのかな……
でもそれを集めれば少しはティーラの代わりになるの
魔道具がない時に、自分のティーラと混ぜて使うのよ』
そう、少し早口で説明をして
結界を自分に張って見せた
半透明の青紫色のものがソフィを囲う
『一部に…細かく自分の思う方にティーラを集中させて使ったり
ティーラを感知して自動的に発動させたりすることもできるの』
それも目の前でやって見せた
『1回…やってみな?
思っているよりも簡単だからっ』
「ほら、こうだよ」と人差し指を点に向けて立てる
僕はそれを真似た
特に…そんな特別に感じるものは何もなかった
『指先に…』
そう言ってトントンと僕の人差し指を軽く叩く
集中するために目を閉じてみる
じっと…指先に集中して────
(うんっ、何も分からないっ!)
そう思った瞬間だった
ヒュッと風の切る音が聞こえた
フワッと外套が浮き上がる
『わっ…えっ…』
『そうそう!上手っ!さすがっ』
ソフィはそう言って拍手する
───こんなにも平和に話している間でも、
どこかで木の折れる、倒れる音が聞こえていた
それが近付いて来ているようにも感じるのは
ただの僕の過ぎた思い込みだろうか…
指先に光が集まる
『点を打つような感覚を思い浮かべて、
流れるように指を動かしてごらん?』
ソフィは空を切るように指を素早く横にズラす
言われた通り、点を打つ様子を思い浮かべながら指先をスライドさせた
『…!!』
等間隔に、並ぶように半透明の青紫色の円が現れた
円の中には様々な綺麗な模様が描かれていた
僅かにすら動くこともなく在るそれは
淡く光っていて、僕の顔をほんのりと色付けた
『んー…なら強度を確かめるために、石とか枝、投げてみるからそのままでね!』
ポンッと掌に拳を当てた
落ちていた石や枝を拾って戻って来る
『絶対に解除しちゃダメだからね!』
そう言って「えいっ」と石を投げつける
ブォンッ!
そんな音を立てて飛んでくる
(えっ…あれ!?石ってそんな音なるっけ!?こわぁっ!!初耳なんですけど!)
思わずギュッと目を瞑った
シャーン……
軽やかな音が鳴る
僕は、コンとかカツとか、そんな硬い音を想像していた
そのせいか、僕は「はぇ…?」と
情けない声を落としていた
カサ…コト…
足元の草に石が落ちた
僕には…当たっていない
『いいじゃん!すごいすごい!』
そう言って僕の頭をワシャワシャ撫でる
ドォォォォン!!!
またそんな音が鳴って地面が揺れる
ガサガサガサッ!!
草むらを突っ切ってくるような音
パキパキと枝の折れる音もする
ガサ!ガサガサッ!!
どんどん近付いて来る
ソフィは僕の一歩前に出た
ガサ…
音が止まる
『…ど、動物…?
きっと逃げてきた動物だよ…ね……?』
そう言って安心した声をソフィが漏らす
ホッと安堵のため息をついて杖を持った手を下ろす
ガサッ!!シャ…パリン────
草むらから目を離した一瞬だった
何かが飛んできた
結界の軽い音がして、パリッと割れる音
それとほぼ同時に僕の視界からソフィは消えた
『ソフィ!!』
天高くにあるソフィの姿を捉えた時にはもう、手の届かない高さにいた
月に重なるように少しづつ小さくなる
(何…何が……何が起きたの……っ)
僕はその場に立ち尽くす
すると僕の背後でカサ…っと音が聞こえた
振り向くと真っ白な程に光ったものがあった
徐々に光が強くなり、目の前は真っ白になった
眩しくて目を閉じてしまった
キラ……パリ…カランッ…………ヒュッ!
『がはっ……』
『ONEマイライフ!#25』を読んでくださりありがとうございますっ
作者ですね…気付きました…『戦闘シーンが一番書くの面白くない?』と……いや、ね?確かにキャラたちは痛かったりするけど…でも…っ
かっこよくね?、って…活躍するシーンとかで思っちゃうんですよ…っ




