<#23 知らないこと>
『それは…今は置いておいて…
えとぉ…名前……』
『あっ、そうですね……
まだ…名乗っていませんでした』
少し悲しそうな顔をした
が、すぐに微笑む
『私はソフィーナ・ウィ………
いえ、私はソフィーナ…
ただの、普通のソフィーナです』
そう言って軽く頭を下げた
名字までは教えてくれなかったけれど
名前が知れて良かった
これで話しやすくなっただろう
『ソフィーナさん』
『ソフィで良いですよ、べオル様』
『そっか、なら…ソフィ……
あなたも僕を灯……べオルと呼んでください』
そうだ
今は灯向ではない
べオル・ウィスター…
言い慣れないな
聞き慣れないな
でも…灯向って、自分で言うよりかは…
違和感がない
元別人の名前だ
他人の名前だったから
ごくごく普通のことだ
『べオル……はい…よろこんでっ』
とても嬉しそうに笑った
大きな目を細くして口角をあげる
『ソフィ、どうして…父は……
ルズリオはあーやって人を殺してるの…?
何か…元からそういう人…とか?』
『……いえ…元々、とても優しい方でした
子供が大好きで、自ら手料理を作り
使用人らに分けてくださる方でした
私も…幼い頃に関わりがありまして…
沢山甘やかされて……
今思うと、その頃が懐かしいです
大好きでした…ルズリオ陛下が…
父のようで……』
そう言うソフィの目には涙が浮かんでいた
さっきまでとは別の笑顔
懐かしむような、苦しそうな微笑みだった
『私はその後メイドとしてあの城に戻り…
ルズリオ陛下と再開いたしました
けれど…その時の私はもう既に……
あの方が……あの男が憎かった…
腹の底から湧き上がるような怒りと憎しみと
そんな感情しか、残っていなかった…
それは…私が城を出る少し前の出来事のせいでしてね……
って…あっ、申し訳ありません…
自分語りしてしまって…』
『ううん、大丈夫だよ
続けても良いし…止めてもいいよ』
そうか…ソフィが一番の情報源となる…のか
他のメイドさんたちは話せるような状態ではなかった…
けれどソフィはまだ余裕がある…
それは憎しみのせい…なのか
それは考えすぎ…?
でも…いい情報源となるなら…それでいい
『……ありがとう…ございます…
誰にも…今まで言えなかったことでして…
聞いてくださること…感謝致します』
そう言ってまた口を開いた
その時の話しは…こうだった
《ソフィは城生まれだった
何故そこで…とまでは教えてくれなかった
産まれた時から目の前にいるルズリオ
その人はいつでも優しかった
父のようであった
母が城住みだったこともあり、
ソフィは城で育った
1歳の誕生日…
2歳…3歳…4歳…
毎年のように誕生日を盛大に祝ってくれた
物心ついた時からそうだった
優しい笑顔のルズリオが、そこにはいた
が、13歳になる年だった
ルズリオが変わった
人そのものが変わった
偽物なのでは無いが、そう思う程に…
ソフィは城から追い出された
短剣を振るうルズリオがソフィの胸ぐらを掴んで…遠い遠い街外れに捨てたのだ
城がアリのように小さく見える場所だった
ソフィは「憎しみ」や「怒り」の感情を覚えた
初めてだった
体が熱く沸騰するような感情を抱いたのは
その憎しみや怒りを力の源に…
復讐を自らに誓った
けれどどうしたら城に戻れるのか…
幼いソフィには分からなかった
何かないか、と城下町に戻り…住む場所もないまま彷徨った
その結果、運が良かったのか…保護してくれる者が現れた
その者は城で元々働いていたメイドだった
当時はもう既に年寄りだったが
立派なメイドとしてメイド人生を終えた者
城で幾度かすれ違った者だった
ソフィはその者について行き
メイドとして17歳で城に戻ったのだ
ソフィは優秀だった
何でもできた
全てをこなした
理由は少しでもルズリオに近付くため
復讐できるその日を少しでも近付けるために
けれど知ってしまった
ソフィの憎んだルズリオには息子がいることを
ソフィがメイド修行をしている間に産まれたらしく、まだ4歳にも満たない小さな子供
それがべオル・ウィスターだった
ソフィはそれも憎いと感じた
「私を嫌い、私を捨てた男は…私を忘れて子を愛おしそうに抱いていた」という事実に…
それでも憎しみの対象は変わらない
ルズリオに復讐するその日までは……》
『……大変だったんだ…
そっか…』
僕はそんなことしか言えなかった
僕には想像もつかない程のことだったからだ
『…でも……こうやって話してみると思ったんですが……
私…どうして捨てられたのか…
どうして…こんなにも憎いのか…
人は変わるし…私がきっと何か…
悪いことをしてしまったのかも…しれないのに
それを確認もせずに……って…』
『大丈夫だよ…
憎いってさ、思えるくらい…悲しかったり…
したんでしょ?
なら…今のままの方が、人間味あっていいじゃん』
僕はソフィの顔を見て言う
けれど…目はどうしても合わせられない
昔からのくせだ…
怖い…
人と目を合わせることが怖い
『ありがとうございます……
あっ…そうだ…先程から思っていた事なんですが……』
そう言って首を傾げた
『ニンゲンって…なんですか?』
驚いた
すぐに声も出なかった
予想外すぎる程の質問
「人間とは…」
分からない
わかるはずもない
今まで考えてこなかったことだ
会話が途切れてしまう
『あの……すみません…
変なこと…聞いてしまいました……?』
『あっ、ううん…なんでもない
大丈夫だよ』
ソフィの声でやっと口が動いた
『人間…は……えと、だからそうっ
僕らだよ!僕ら、僕らが人間…
この形…この思考…この……なんか色々!
わ、分かるかな……』
『私たち……ならニンゲンっていうのは、異国……それか地域の差でしょうか?
べオル様…旅がお好きでしょう?
よく、旅した地域特有の話し方や言葉を使ってしまう時があったじゃないですか』
ふふっと、丸みを帯びた声で笑う
口に添えられた手は、先程触れた手とは別物のように見えるくらいに
……とても綺麗な手だった
『…そう…なのかな…
なら…ここではなんて言うの?』
『私たちの種族ですか…?
それなら「フラニューラス」…と、呼ばれております
見た目は人族と似ているとよく言われますね
けれど人族よりも魔力が少なく…
代わりに少ないティーラで強力な魔術が発動できるんです!
この事からもですね…他の種族よりも強いんですよ!人族よりも強い…なんて言われることもありますね!
ぁ…でも……すぐにティーラ切れになるんですっ』
そこがダメですよね、と笑った
『ティーラ……?まじゅつ…?』
『あっ、魔術というのはですね!
簡単に言えば、西の大陸で伝承されてきた…
ティーラを利用して起こす超常現象の総称ですっ
現代では可視化されるものもあり、進化を続けているんです
魔学として専門的に教えられるものなんで、私もべオルも幼い頃から教わっております!
ふふっ、しっかりとお勉強をして身につければ、完璧な魔道士や魔術師になれますよ』
腕を大きく広げて説明する
ちょーじょーげんしょー?そーしょー?
何それぇー
それよりも…、、まじゅつ……マジュツ…?
ほぉ…まぁ…うん、何となく理解!!分からんけど!
僕にも使えることが解った
でも…どうやって?
それに…何のためにあるもの?
何に使うんだろう…
強力…とか言ってたし…戦いとか?
『ねぇその…マジュツって、何に使うの?』
『興味ありますか!!?
私大好きなんですっ、魔術!
使い道はですね、戦闘時の攻撃や防御、治癒などが一般的に知られているものです
他にも日常生活にも活用可能!画期的ですよっ
そのおかげで生活も豊かになりました
そして!この世にはティーラを持たず、魔術の使えない種族も存在するのです!
人族がそのひとつなのですよ』
『え、でもさっき…人族よりもティーラが…って』
『えぇ、私たちのようなフラニューラスやその他の種族はティーラを持って産まれてくるんです
あっ、それにも個人差はありますよっ
けれど人族の場合、生まれ持つ者と持たぬ者が存在するのです
持たずして産まれた人族は機械物を中心として発展してきたのです
そうした者が集う街がありましてそこにはドワーフと呼ばれる種族も共存しているのです…!』
ジャンッと効果音が聞こえるかのような締め方に
僕は思わず拍手した
マジュツ…すごい…すごいよ……っ
めっちゃ気になんですけどぉーっ!!
興味しか湧かないのですがぁ!?
『ONEマイライフ!#23』を読んでくださってありがとうございますっ
作者ともくん。!!ネタ切れです!第2弾です!あとがきのネタが全くありません!!
なので皆さんに質問します!!
異世界といったら…どんなことを思い浮かべます?
ともはですね
お肉…なんですよ
お肉、大好きです…っ、ソフィよりは…語れませんけどっ




