<#20 ココ>
<#20 ココ>
真っ白な廊下…
それは…研究所を思い出させる廊下だった
先の見えない廊下
幾つもの窓ガラスの先には…
一面緑の草原や
カラフルな花畑
神秘的に輝く湖や洞窟
中世ヨーロッパ風の街並み
和風の街並み
現代風の街並み
山の中、森の中、林の中
田舎町や風に揺れる田んぼ
様々な世界が広がっていた
どれも綺麗だった
一人一人の思う天国がそこにはあった
けれど1つ…気になるところがあった
一面草原の中にポツンと建っている一軒の家
木製の家
家の目の前には井戸があった
二階建て…
屋上もあるように見えた
『……』
〖◣気ニナリマスカ?◢〗
『うん…なんとなく…だけどね』
〖◣…ナラバ其処ガアナタニトッテノ天国…
アナタにハ…何ガ見エテイルノカ…
私ニハ解リマセンケレドネ◢〗
『ぇ…そうなの?
僕には……一面原っぱの中に、ポツンって建っているお家が見えるの
ペンギンさんは?』
〖◣…私デスカ?
ソウデスネ……私ニハ──────◢〗
そう言っている途中で止めた
するとペンギンさんが薄らと光っていた
青紫色のフワフワとした光だった
ヒュン…
そんな音にもならない音を立てて
光を強烈に放った
『うわぁっ』
眩しくて目を伏せた
少しして顔をあげた
…そこには先程までのペンギンさんの姿はなかった
代わりに…背の高い、すらりとした青年が立っていた
ペンギンさんと同じ模様の入った白衣と髪
そして片手には革の小さなスーツケースを持っていた
白衣の裾が微かに揺れた
『………………だ、だれ…?
ペンギン…さん…?』
〖◣……周逸と…お呼びください◢〗
『…………は?』
〖◣私には…………
ん?あ、驚かせましたか◢〗
『え、うん、もちろん……は?』
ペンギンさん…周逸さんは今までとは違う高さから、僕を見下ろして言った
そして本当に「面倒くさい」とでも言うような顔をしている
(……人間の姿になると表情豊かになるんだ)
〖◣…もう良いですか?良いですね、了解です
私には…
妻と娘が住んでいる温かな家が見えます
とても幸せそうに笑っている2人が見えます
2人が好きなケーキを食べているのが見えます
私には…もう二度と届かないものが見えます◢〗
そう言って僕には草原しか見えない窓ガラスをそっと撫でた
少し俯き、眉を顰めた
『……そっか…ペンギンさん…じゃなくって
周逸さんにも大切な人、居るんだね
天国にいるってことは…もう……』
〖◣えぇ、そうですよ…そうです……
当たり前じゃないですか
何当たり前のことを言ってそんな顔するんですか
大丈夫ですか?◢〗
『それどっちの意味の「大丈夫」なの!?』
〖◣フッ……◢〗
『え!?また笑った!!?酷!!なんで!?』
〖◣あー…灯向さんのせいで耳が聞こえなくなりましたー◢〗
『えぇ!?病院行く!?』
〖◣そんなもの…ここにはないですが◢〗
『聞こえてんじゃんか!!』
〖◣チッ…◢〗
『舌打ちしたァッ』
周逸さんは僕を見て、少し表情が崩れた
口元が緩み、苦笑のような笑みを浮かべた
それを見た僕は一瞬表情が強張る
けれどすぐに先程までと同じ笑顔を貼り付けた
きっと…それには周逸さんも気付いていない
〖◣……気の済むまでご覧になってください
次回もご案内します◢〗
『次回……うん、ありがとう
そっか……次回もあるんだったね』
〖◣きっとまたその次もあると思いますが◢〗
『嬉しくない付け足しなんだけどぉ』
次…次はいつだろう…
その時は…もう少しゆっくりしていたいな…
〖◣…あっ、そうだ…知ってます?◢〗
『ん?なにが?』
〖◣……やっぱなんでもないです
どうでもいい事ですので、忘れてください◢〗
『ぇ…気になるんだけど…』
〖◣時間の無駄です◢〗
『うわぁ…………ん?』
その時、僕は何故だか、奥の通路の方から目が離せなかった
なんだか気になる
なんだろう
他のどんな扉よりも…
キラキラ光るダイヤモンドの扉よりも
木製の古い扉よりも
真っ赤で高貴な扉よりも…
そっちにあるかもしれない扉が気になった
気が付いた時には、既に
その通路へと足を進めていた
『あっち……行ってもいーい…?』
僕は足を止める気はなかった
けれど、やっぱ怖い
だから、保険として一応の問いを投げかけた
〖◣勿論です。お好きな場所の、お好きな扉をどうぞ…そうでなくては地獄の意味がありませんから……◢〗
周逸さんは後ろに手を組んで僕の後に続いた
コツ…カツ…ジャッ…
カッ…コツ…ザ……
砂利混じりの地面を靴が擦れる音
その音が周りの声や扉を開く音…
全てをかき消していくようだった
ドキドキと心臓の音も…いつもならうるさいくらいに聞こえていたのに
今は動いているのか心配になる程に聞こえなかった
近づくにつれて大きくなる通路の入り口
先の見えない入り口
だけど、進みたかった
そこに僕が選ぶべき扉がある気がした
コッ……ジャッ…ザ…
カツ…カッ…コツ………ジャ………
足音が止まった
遅れて周逸さんの足音も止まった
目の前には、大きな宝石に囲われていた
ボロボロに壊れて、崩れかけている扉があった
少しでも触れれば崩れてしまいそうだ
そう思いながらも
『ココだ…』
そう、確信した
『ONEマイライフ!#20』を読んでくださってありがとうございますっ
今回はですね、注目して呼んでほしかったことがあり、
灯向と周逸の距離感の変化に注目してほしいのですっ
ぜひ、良かったらもう一周してみてくださいっ




