<#10 ウソはホントで本当は嘘>
ダイスキな人といつ会えなくなってしまうか分からない
目の前にいる…学校にいる…隣にいる……
きっと必ずひとりは無意識のうちにも、どこかにいる
そのダイスキな人は現実の人?まずまずココは現実?
夢?…そんなこと、僕らには分からない
なら…その人をあなたは───────
外が明るくなってきた
ピー とも、キュー とも聞こえる
朝を告げる音
スピーカーからではない…放送じゃない
鳴き声のようにも聞こえる
サッ……
黒い影が一瞬部屋を暗くする
何年ぶりの光景だろう
ここに収容される前
まだあの町にいた頃…4つか5つの時の記憶
まだ空が小さな窓で切り取られていた頃
キュー───────
〚……〛
窓を見上げる
眩しい
朝だ
学校…
▙▒▚▒君は…今日も一緒に登校してくれるだろうか……
〚……〛
誰だっけ…
ノイズ…いや、モザイクと言った方が良い
モザイクのかかった名前が脳裏に浮かぶ
誰だ…
〚おい!!起きろ!!早く出ていけ!!〛
ザッ……ザザッ……ザーー…
「おはようございます…」
リビングから聞こえる男性の声
それに紛れているテレビの音
少し古いテレビは籠ったアナウンサーの声を届ける
〚……はい…〛
少しぼーっとしてから立ち上がる
いつもの紺のパーカーを手に取る
最後に洗ったのはいつだろう
……早く洗いたい…
(許可が降りるのを待つだけ……あと少し…)
〚……おはよう…〛
返事はもちろん帰ってこない
ある時はなんだか嬉しい
〚行ってきます……〛
部屋を出てすぐに薄汚れて、傷だらけのランドセルを背負って玄関に向かう
〚ちっ……今日雨かよ…〛
男性がソファーに腰掛けて、新聞を広げた
〚あなた珈琲は?〛
〚あー…頼む〛
そんな女性と男性の会話を背にドアを開く
眩しい光が目に染みる
前にもあった感覚だ
何処でだろう……いつ…
鉛色の雲は光を反射して真っ白だ
(……目が痛い…)
目を擦る
寝起きの目には辛かった
俯いて光を遮りながら歩き出す
カラスの鳴き声が頭に響く
……毎日が憂鬱な気がする
足取りが重い
鉛でも着いているんじゃないか
そうも思えるほどの重さ
〚よぉ灯向〛
ふっと背が軽くなる
すぐに振り向く
とても聞きたかった声
顔を見る
……見えない
逆光だとかそんなんじゃない
目が悪い訳でもない
でも…見えない
誰だかわかる
でも……分からない
(▙▒▚君……名前……誰だ…分からない)
誰……誰だ…だれ…ダレ……?
〚……おは、よ…〛
とりあえず返す言葉はいつも同じ
家では誰も返してくれない言葉は
この人なら返してくれるから
〚ふっ…元気か?〛
笑って隣に来る
▙▒▚▒君のランドセルはいつも綺麗だ
黒いランドセル
同じ色のランドセル
…のはず、、
〚元気だせ?お前が笑ってくれねーと俺も悲しいからさ〛
僕の顔を覗き込む
目が合う
〚……うん…〛
〚今日うち来いよ?約束しただろ?〛
約束……してたんだ…
〚…うん、わかった…〛
〚忘れてたのか?〛
〚……………………ううん〛
〚ははっぜってぇ忘れてただろ!〛
クシャッと笑う
その笑顔が好きだった
〚まぁ…来ねぇなら俺が無理矢理にでも家に連れ込む、絶対な〛
(……ユーカイハンみたいなこと…言ってる…)
テレビでいつしか言ってた
〚お前が頼れんのは俺以外いねぇんだからな〛
ドロッとした口調に手が一瞬ビクッとする
〚お前は俺だけを頼っていれば良いんだ〛
〚……〛
僕は何も言わずにただ隣を歩く
この人の隣にいれば何もされない
陰口で済む
人気者のこの人の隣にいれば……
『……た……ひな……灯向!』
パチッと目を開く
目の前には№5の顔がある
『大丈夫……?泣いてるの…』
№5が心配そうに首を傾げる
頷くと安心したかのようにギュッと布団越しに抱き着く
『もぉ……心配したじゃんっ!
朝だよって言いに来たら泣いちゃってるんだもん…』
№5の手が№0の髪を撫でる
『……』
『…どうしたの…灯向……?』
№5が撫でる手を止める
『……キミ…誰……?』
✧• ──────────── •✧
メアが知ってる灯向じゃない…
違う
誰
灯向はこんな話さないなんてない…
いや…違うのかもしれない…
こっちが本当の灯向なのかもしれない…
分からない
『……』
ジッとこちらを見つめている灯向の目は
何処かくすんでいるようにも見えた
灯向は元々普通のニンゲンだ
子供だ
外の世界の存在だ
そこから急にここに収容されたことをメアは知ってる…
きっとのその反動だろうか
そりゃ……そうなるだろう…
当たり前だよ
『灯向……ごめんね…今日はゆっくりしてね』
そう言って部屋を後にする
広間を出て廊下に出る
長い長い廊下を歩いてどこかへ向かう
メアだってどこに向かってるかは分からない
…でも、考える時間が欲しかった
『灯向はよく無理をする…だからかな…
ニンゲン…普通の……
メアたちの知ってる灯向はウソだった…?』
メアの勘はよく当たる
今回も確信を持っていた
でも、ぐちゃぐちゃだ
ウソだったなんて、信じたくない
ホントの灯向は嫌だ
無理をさせる気はない
でも嫌だ
……灯向は…あの子はいつもの灯向がホントだ
絶対にそうだ
そう、信じたくて自分に言い聞かせた───
✧• ──────────── •✧
……ここは…あぁ、研究所だ
嫌だなぁ…なんで僕がこんなことに…
今更過ぎるかな…あはは……っ
(……黙れ…バカバカしいから…)
自分にそう言う
さっきのは夢…?
『……』
分からない
こっちが夢…?
そんなことを考える
特に何も話せずに№5は何かを言って部屋を出る
『はぁ……メアの言う通り…今日はゆっくりさせてもらお…』
そのまま目を瞑る
まぶたの裏にはあの人の後ろ姿が見える
その後の記憶はない
寝てしまったのだろう
夢…そう思われるものは見た…
〚おい!!起きろ!!早く出ていけ!!〛
ザッ……ザザッ……ザーー…
「おはようございます…」
リビングから聞こえる男性の声
それに紛れているテレビの音
少し古いテレビは籠ったアナウンサーの声を届ける
さっきも見た光景
〚……はい…〛
少しぼーっとしてから立ち上がる
いつもの紺のパーカーを手に取る
最後に洗ったのはいつだろう
……早く洗いたい…
(許可が降りるのを待つだけ……あと少し…)
なんだろう
同じ夢…
〚……おはよう…〛
返事はもちろん帰ってこない…さっきもだ
ある時はなんだか嬉しい…なんでだろう
考える余裕もあった
…さっきより…時間の流れが遅かった
〚行ってきます……〛
部屋を出てすぐに薄汚れて、傷だらけのランドセルを指でなぞる
〚ちっ……今日雨かよ…〛
男性がソファーに腰掛けて、新聞を広げた
〚あなた珈琲は?〛
〚あー…頼む〛
そんな女性と男性の会話を背にドアを開く
ランドセルは玄関に置いて…
眩しい光が目に染みる
あれ、晴れてるじゃないか…
鉛色の雲はなく、晴れ渡っていた
群青の空がどこまでも…
(……綺麗…)
目を擦る
寝起きの目には辛かった
でも、見上げたまま歩き出した
トンビの鳴き声が朝を告げるように
山々の広がるこの町に響き渡る
……なんだろう…心地いい
足取りが軽い
宙にでも浮いているんじゃないか
そうも思えるほどの軽さ
〚よぉ灯向〛
ふっと背の方から声がする
すぐに振り向く
とても聞きたかった声
顔を見る
……見えない
逆光だとかそんなんじゃない
目が悪い訳でもない
でも…見えない
誰だかわかる
でも……今回も分からない
(▙▒▚君……名前……誰だ…分からない)
誰……誰だ…だれ…ダレ……?
〚……おはよ〛
とりあえず返す言葉は変わらず同じ
家では誰も返してくれない言葉は
この人なら返してくれるから
〚ふっ…元気か?〛
笑って隣に来る
▙▒▚▒君のランドセルはいつも綺麗だ
黒いランドセル
同じ色のランドセル
…のはず、、
〚元気だせ?お前が笑ってくれねーと俺も悲しいからさ〛
僕の顔を覗き込む
目が合う
綺麗な茶色い目だ
〚……うん…〛
〚今日うち来いよ?約束しただろ?〛
約束……してたんだ…そうだったね
〚…うん、わかった…〛
〚忘れてたのか?〛
〚ううん〛
〚よしよし!偉い偉い!〛
クシャッと笑う
その笑顔が好きだった
〚今日もオムライス作ってやるよ…お前好きだったろ?〛
(……母親みたいなこと…言ってる…)
学校でいつしか聞いた母親
みんなの言う母親
〚お前が好きなもんななんでも作ってやるよ〛
ふわっとした口調に手の力が緩む
〚お前はお前…自分でいれば良いんだ
好きなもんは好きって言え、知りてぇんだ〛
〚……〛
僕は何も言わずにただ隣を歩く
この人の隣にいれば何もされない
陰口で済む
人気者のこの人の隣にいれば……幸せだった
〚うん…ありがとう……〛
目を瞑って礼を言う
〚大好き〛『大好き』▲大好き▼
『ONEマイライフ!#10』を読んでくださりありがとうございますっ!
なんか序盤軽いお話になる予定だった#1〜#10(とかそこら辺!)、今じゃ予定が狂いに狂って軽いお話とは?状態……
けれども読んでくださる方々がいるおかげで迷わず書き続けることができています…っ
本当にありがとうございます……!!
これからも応援、よろしくお願いします!!




