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神は巫女の頭に宿る  作者: 榊 雅樂
第四章 ?
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八十六話 退屈しのぎ

「……随分と、気軽に答えてくれるんですね」


「キミたちとの()()のお話だからね。答えてあげないと、さすがにかわいそうかなあって」


 返答に対し、日向は眉を顰める。そして、ややあって口を開いた。


「前に、望緒さんが気を病んだことがあるんです。その際、あなたの声が聞こえました。初めは、誰の声かわからなかった……。ですが、今声を聞いて、どこか確信したんです。あの時、あなたもあそこにいましたよね?」


 それを聞いて、火夜は口角を上げる。楽しそうに、笑っている。

 日向の発言を聞いた望緒は、「あ」と呟いて手で口を抑えた。()()()のことを、思い出したから。


「どうした?」


「あ、いや……。私が森の中で炎に包まれる前、夢でずっと声が聞こえてて。最初はボソボソ言ってるから、何も聞こえなかったんだけど、最後に一言だけ聞こえたの。『お前のせいだよ』って……」


「なんでそれを言わなかったんだよ……!」


「ご、ごめん。疲れててそれどころじゃなくて」


 望緒は困ったように笑って言うが、隣にいる藤花も、目の前にいる八下も、笑ってくれることはなかった。

 特に藤花なんて、あの光景を目にしたのだ。笑えるはずもない。


「すごい。よくわかったね」


 火夜は感心したように、笑いながら言った。日向は険しい表情でありながらも、その顔は「やっぱりか」と言いたげである。


「僕の“念”としての形ができあがってきた頃かな。変な霊力のやつがいると思ってね。これは脅威になりかねないと思ったから、ちょ〜っと心を壊させてもらおうと思った次第だよ」


 それを聞いた飛希や他の子どもらは、一層険しい表情を浮かべた。


「何が壊させてもらおうや。ざけんな」


「やだな、そんなに怒らないでよ。僕こわぁい」


 クスクスと、嫌味ないたずらっ子のような笑みを浮かべる火夜。爽玖の眉間の皺は、深くなるばかりだった。


 すると、火夜は脚にグッと力を込め、爽玖との間合いをいきなり詰めてくる。彼は驚きながらも、攻撃を防御した。勢いで何メートルか後ろに飛ばされるが、よろめきながらも体勢を整え、持ちこたえる。


「なんや、急に!」


「話はまだ終わっていないのですが」


 怪訝そうな表情を浮かべる日向を、火夜は横目で見る。クルッと振り返り、白々しい表情で、


「何もしないで話聞いてるの、飽きてきちゃったんだもん」


 子どもらしく、可愛らしい言い方をしているが、行動は全くもって子どもらしくない。脚をブラブラとさせている彼は、まるで退屈そうに親を待っている子どものようであった。


「クソガキ……」


 とは言うが、彼は千年近く昔を生きた人間だ。空白の時間が年齢に換算されていないとは言え、爽玖よりも年下とは言い難い。


 それよりも、どうすれば火夜に大人しく話を聞いてもらえるかが重要になってくる。日向が聞きたいという話は、あと一つ残っているから。

 日向は考えるが、火夜はそんなことお構いなしに、朝陽に突撃した。


「ぐっ……」


 火夜は炎で創り出し刀で朝陽に斬りかかる。彼女はすんでのところでそれを受け止めるが、あまりの衝撃に、思わず声が漏れ出た。

 防ぐので精一杯な朝陽を見て笑っている火夜。しかし彼のすぐ真上、虚空から微かに霊力が感じ取れる。


 勘づいたときには、既に遅い。


 上から、蛇口を強く捻った時のような水が流れ出る。それはさながら滝のようであった。それは、千夏が繰り出したもの。

 彼は避けるが、半身が濡れてしまう。軽く舌打ちをして、朝陽からの反撃を後ろに飛び退いて避ける。


「あーもう。最悪」


 そう言いながら、衣服を捻り、吸われた水を絞り出した。びちゃびちゃと音を立てて、地面に染み込んでいく。


 横目で結界の外を見る。八下が望緒の背中に手を当て、霊力を流し込んでいる様子が伺えた。何をしているのかは、大方予想が着く。助け舟だ。

 自身の霊力を望緒に流し、それを彼女が使ってそのまま結界の維持へと繋げる。


 特殊な霊力を持った彼女にとっては、八下の霊力は拒否するようなものではない。難なく受け入れることのできるものであり、火夜にとってはとても煩わしいもの。

 うっすらと額に血管を浮き立たせるが、このまま結界を壊そうと思っても、神によって強化された結界を壊すことは、さすがの彼でも不可能であった。


 では、自分が創った結界を解いて、そこから逃げるか? それも無理な話だ。上には闇戸がいる。彼は依然と雨を振らせたまま。このまま出たとしても、雨に濡れて力が半減するだけ。

 その状態で逃げるには、人数差がありすぎる。だから、


「やっぱり、ここで倒しちゃうしかないんだよなあ」


 火夜はそう呟くと、竜巻を起こした。風が吹き荒れ、衣服や髪が行動の妨げとなる。火夜はそれに火を混ぜ合わせ、結界内を燃やしてやろうとした。


 いざ炎を混ぜこもうとしたその時、激しく舞い上がっていた竜巻は、忽然と姿を消した。


「……は」


 わけもわからず声が出る。何が起こったのか、すぐに脳は理解しない。


「聞きたいことはまだあります。あと一つだけ」


「……!」


 声の主は、日向だ。彼の方をバッと見た時、火夜は瞬時に理解した。荒れている息、多量の汗、能力を使った痕跡。その全てが、火夜の考えていることを証明している。


 竜巻は、相殺されたのだ。日向の手によって。そして、彼はそのまま体勢を整え、勢いよく旋回する風を繰り出した。


「風宮の男児は霊力量が少なく生まれる。それは––––あなたのせいですか?」

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