はい、闇(もぐり)の錬金術師ですよ~ブラックギルドを追放されたので田舎町でこっそりお店を開きます。~の感想
【タイトル】
はい、闇の錬金術師ですよ~ブラックギルドを追放されたので田舎町でこっそりお店を開きます。戻って助けてくれ? では5000万いただきますね~
【あらすじ】
大手ギルドで三年勤めている少女アルチェは、大量の仕事を押し付けられてこき使われていた。
ギルドに三年以上、勤めてギルド長に認められたら錬金術師の免許習得試験を受けられる資格を得られる。
ところがアルチェは先輩のミスの濡れ衣を着せられて解雇されてしまう。
王都では大手ギルドを追い出された噂が立ったせいで、どの錬金術師ギルドにも雇ってもらえなくなってしまった。
王都を旅立って流れ着いたのは辺境の町。アルチェは一人の少女剣士と出会う。事故で視力をほぼ失った彼女にアルチェは一つの魔道具を差し出した。
「明るくなった! 見える!」
アルチェは彼女を助けたことで自信を取り戻して吹っ切れた。免許がなくても錬金術師をやればいい。
もぐりの錬金術師として、アルチェはこっそり店を開く。
ただし、このお店は相場よりもかなり高いです。例えば――
「その依頼でしたら400万ほどいただきます」
「はぁ!?」
組織のしがらみなんかなくても、腕一つでやっていけます。
【感想】
あらすじでは「先輩のミスの濡れ衣を着せられて」とありますが、本編ではミスなどしておらず、主人公が完璧に仕上げた仕事に細工をしただけです。
そもそも作中では、見習いである主人公が作った魔道具を先輩が検品してから納品するシステムであり、不適格なものを作ったとしても精々注意どまりの所業です。
しかしそこはなろう小説。うまく社会を動かすためのシステムでも、キャラクターの知能を下げることで「ざまぁ」の原動力へと変化させてくれやがりました。
キャラの知能がなろう作家レベルにまで落ちてしまったので、この世界も間もなく終わりが訪れるでしょう。
ギルドを追い出され、途方に暮れる主人公。
王都から離れた辺境の街へ行きますが、そこで丁度冒険者パーティから追放を宣告されている少女と出会います。
ちなみに、ギルド長、先輩、パーティメンバー、全員「ニヤニヤ」しています。
「ニヤニヤ」させる以外でキャラにヘイトを集められれば作家として一人前に近づくのですが、なろう作家は大体「ニヤニヤ」と憤怒させるだけで済ませます。
話を戻すと、けがのせいで視力を失ったため、戦えないから追放するそうです。
まあ、保険が掛けられないタイプの冒険者なら、非情ではあるものの理解できる範疇の判断です。
それに対し主人公は、かつてギルドで作っていた眼鏡をプレゼント。なんでも、かけるだけで「視覚に存在する情報を装備者の脳に届ける」眼鏡らしいです。
盲目の人を助けるために作ったようですが、その説明だと視覚に情報が入ってこない盲人には効果がないことになります。言いたいことはわかるのですが。
眼鏡を作った腕を見込まれて、冒険者パーティの専属錬金術師としてスカウトされる主人公。
しかし、少女を切り捨てたパーティにギルド長たちの姿を重ね、スカウトを断固拒否します。
そこは「錬金術師免許を持ってないから専属になれない」みたいな言い訳をするべきではないでしょうか。
読者の方は「少女とパーティの関係に、主人公とギルド長の姿を重ねたから、断るにはもっともな理由じゃないの?」と思われるかもしれません。私もそう思いますよ?そのあとの展開を見なければ……。
きっぱりと断られたパーティメンバーは逆上し、主人公に襲い掛かります。
しかし主人公は、錬金術師見習の少女であるという設定を忘れたように軽く撃退します。
あーあ、只のチートの2度漬けかよ。まあ、冒頭の部分から期待してなかったけど。
ちなみに主人公の戦闘能力は師匠仕込みらしいです。その師匠の下で3年働けば問題なかったのでは……?
少女を助けた主人公ですが、その少女から無免許で錬金術師の店を開店することを勧められます。
いくら3年間をドブに捨てられたといえ、不法行為で人生まで無駄にするつもりでしょうか。
出会ったばかりの少女から犯罪を唆された主人公ですが、1㎜も迷うことなく受け入れます。
初見では「どういう神経しているんだ」と思いましたが、これはなろう小説。主人公の倫理観のなさはこれで終わりませんでした。
開店して初めての仕事は、武器のナックルの修理でした。
修理費は特注品でも30万が相場のところ、主人公は100万要求しました。
主人公は「自分の技術を安売りするつもりはない」とほざきますが、作者は主人公がギルドに奉公する錬金術師見習いであるという設定を忘れているのでしょうか。
主人公がギルドを追放された、プロローグ以前の経緯がマジで謎です。
初めての仕事の出来が良かったために、主人公は義賊団なる連中に絡まれます。
義賊団とは悪人に対して盗みや強盗を働く非合法組織ですが、町の人から信頼されているというとってつけた設定があります。
非合法な店に非合法組織が寄ってくるという、普通なら碌なことにならないのですが、主人公補正を乱用すればいくらでも事態は好転します。
義賊団に武器を提供しているという話を耳にした警察組織が店を訪問しますが、特に摘発するまでもなく、それどころか武器を注文します。
さらに、主人公は衛兵に対し、例え戦争に使われようと武器を作ることに抵抗はないとも宣言します。
そして、主人公は摘発されそうになったら反抗するつもりだったそうです。主人公補正がなかったら破滅するほかない選択しかしねえなこいつ。作者は何が楽しくてキャラを介護しているんですかね。
一方追放したギルドパートですが、主人公を追放してから不良品が多発しクレームが殺到していました。
主人公が素材の選定をしていたそうですが、例えば炎に耐性を持つフレイムアーマーの素材に、普通なら火竜の鱗を使用するところ、火吹きカエルの油を使用したそうです。
特殊な工程を挟めば火竜の鱗並みの性能になるそうですが、なんで火竜の鱗を使用せずに面倒な工程を挟んだのか説明されません。
というか、炎に耐性を持たせるのに何の疑いもなく油を使用したり、その間違いをしたのが追放したギルマスでなく下っ端の職員だったりと、ざまぁにしては設定や展開が雑すぎます。
それに加え、錬金術師は呪いに対処できないという設定が明かされるとともに、呪い付きの修理依頼を引き受けて主人公に回していたそうです。
それで今まで問題なかったというのに、主人公の異常さに気づかなかったそうです。
もう突っ込む気力もねえや。
が、作者のマジキチワールドはこれで終わらず、更なる追撃が私を襲いました。
主人公の店に、獣人の少女が来店。主人公に人を殺すための武器をオーダーしました。
話を聞くと、獣人は仲間たちを人間の貴族に娯楽で殺され、報復のために武器を求めていました。
こういう話は、どのように対応するかで主人公の人となりを表すエピソードになるため、素人が気軽に手を出せるような代物ではありません。
それを知らずとエピソードに組み込んだ結果は……。
>「私は人を殺す目的の武器だろうと依頼されたら喜んで作る。
>「それに一千万ゼルは覚悟の金額の証でもあるんだよ。武器を持って命を奪う選択をするのは何も使い手だけじゃない」
>「武器を作る私も人を殺すつもりで作らなきゃいけないの。だってそうでしょ? 使っている人間の手だけが血に染まるなんてそんな都合のいい話はない。作った私も同罪なんだよ」
言っておきますが、主人公が武器を作ったせいで身の回りの人や無実の人間が死んだというエピソードはこれまで出てきませんでした。多分これからもですが。
何か「私は覚悟してます」みたいなアピールをしますが、それが読み取れる描写がないためただのサイコパスにしか見えません。
で、少女が持っていた9ゼルで武器を作ることを約束しました。
いくら最もな動機があるとはいえ、少女に武器を持たせて戦場に送り込むという、あらかじめ作者の加護がつくとわからなければ、只の人でなしとしか思えない行動をしやがります。
主人公の覚悟が薄っぺらいと感じるのは、こんな風に責任が感じられない行動をするからだということを作者は理解しておりません。
獣人少女が来店した翌日、主人公は少女の仇である貴族の別荘に招待されました。
なんでも、逃がした獣人が報復のために襲ってくるかもしれないから、トラップを作って撃退したいそうです。
最早主人公は死の商人のような立ち位置になってしまいましたが、覚悟しているから問題ないんでしょう。どうせ。
矛盾の故事のような状況ですが、トラップを破れる武器を少女に渡したため矛の勝ち。
貴族から大金をせしめておきながら罠にはめたも同然の状況ですが、「どうせこの後貴族が死ぬんだったら問題ないでしょ?」と言わんばかりに貴族は殺されます。
貴族は人でなしですが、双方から報酬をもらっておきながらその実片方に肩入れする主人公も負けてないと思います。
その後は呪い付きの修理をするために、追放ギルドが主人公のもとを訪ねるのですが、そこで呪いのついた物品はエクソシストギルドに頼んで祓ってもらうのが普通という設定が明かされます。
主人公に泣きつく前にそうすれば良かったんじゃないか、読者が抱いて当然な疑問はスルーされ、追放側は破滅へと向かっていきました。
いつもの。
総評ですが、地位や資格よりも覚悟が重要というテーマで恐らく書かれた小説ですが、主人公が物事に対し一切逡巡しないせいで、覚悟というより無責任という印象が勝っております。
普通覚悟とは、高いハードルを超すときに持つものですが、本作品の主人公はハードルを跳ぶどころか最初から飛行しているため、いくら覚悟覚悟と口にしても読者が共感できません。
それに加えて見下し要素も満載のため、唯々ヘイトを買う存在となっております。
要するにいつものなろうでした。
エピローグで主人公の師匠パートで締められるのですが、主人公がなぜ錬金術師の資格を求めたのかという説明は最後までされませんでした。
普通なら錬金術師として人々の役に立つためとかなのですが、解説した通りよくわからない信念で死の商人をしています。
免許持ちの公認の錬金術師の存在とはかけ離れているように思えるのは私だけでしょうか。




