王都ワンオペゴーレムマスター。まさかの追放!?~の感想
【タイトル】
王都ワンオペゴーレムマスター。まさかの追放!? ~魔王が討伐され『平民の採用は終わりだ!』と追い出されました。王族所有のアンテナが使えないし全部停めますね。あるべき姿に戻れ!あとはもう知らん!~
【あらすじ】
かつて世界に侵略を進めた魔王は、勇者コミュニティによって倒された。
未曽有の危機からの脱却の後、世界最大の大国であるディアマンテ王国で、平民が一斉に解雇される。
拷問レベルの作業をこなす事務室には、ホーラスという青年もいた。
ろくでもない理屈で追い出されたホーラスだが、悲観している様子はない。
史上最高のゴーレムマスターである彼は、希少金属を求めて他国へ歩き始めた。
のだが、その間に行われたとある式で、ホーラスの秘密が明かされる。
猛者を束ねた勇者コミュニティ、その師匠だったのだ。
逃した魚は大きい。
頑固な王たちを嘲笑うように、勇者コミュニティもホーラスのもとへ。
高い借金と数々の愚行で王国は悲鳴を上げ、ホーラスたちは幸せをつかむ。
臨終間近の王国の運命は、ホーラスたちの行く末は、果たしてどうなるのだろうか。
【感想】
まず初めに冒頭部分を読み始めた感想ですが、やたらと『二重鉤括弧』の乱用が目立ちます。
二重鉤括弧は通常、会話文の中で別のキャラクターが喋った場合や、書名や雑誌名を示す場合に使います。
しかし、本作品では目についた名詞に対し、片っ端から二重鉤括弧をぶち込んできます。
強調の意味で使っているにしては余りにも乱用が目立っており、強調の意味を果たしていません。
というか、そもそも強調の意図があるかどうかすら不明です。
ごく一握りの、いるかどうかわからない良い子のなろう作家に対して忠告すると、精々スキル名だけに使うといいかもしれません。
本編に話を戻すと、この世界ではとある絶世の美女が魔王を名乗り、男性を魅了して支配するスキルを利用して世界征服を企んだそうです。
スキルの対象は種族どころか物体を選ばず、生命体どころか武器やアイテムでも、男性型の意志があれば完全に意のままに操れるそうです。
そのような脅威が出現し、各国が死力を尽くして戦ったところ、数年で討伐できたそうです。よく勝てたな!
そして、とある国ではそのような有事に対応するため、貴族だけで宮廷職を占めていたところに、能力ある平民を雇っていました。
しかし魔王が討伐され、平民を雇う取り決めが無くなった途端、平民は一斉に解雇を宣言されます。
敵の能力が能力なだけに、国は相当疲弊していると思うのですが、作者は設定も整合性も碌に練らなくても追放側の知能を下げれば全部解決すると思っているので、いつものテンプレが繰り広げられます。
ちなみに平民を解雇した理由ですが、「宮廷には貴族だけが居るべきだ」という差別思想によるものです。
そんな形式上は受け入れられたものの、差別された平民である主人公がやっていた仕事は、世界最大の国家の中枢での書類仕事だそうです。
主人公が雇われる前は誰が仕事していたのか、何故重要なポジションに差別の対象である主人公が着任したのか。
他の部分ではやたらと設定を盛っているのに、肝心な部分ではガバガバのスカスカという始末。
あ、「実は財政難だったからクビにした」という逃げ道はありませんよ?宰相は主人公に給料を払っていなかったんで。
それでこのガバガバ設定の何が問題かって、そんな国に黙ってこき使われていた主人公がダサいという結論になる点です。
一応それに対しても作者は言い訳を残しており、なんでも国にあるアンテナを使えば効率よくゴーレムを動かせるそうです。
が、アンテナを使ってやることが書類仕事であり、他に何をやっていたかという描写が見当たりません(私が見落としている可能性がありますが)。
給料が払われていなかったので、遠隔操作で魔物を倒して金を稼いでいたと思われますが、のちに主人公自体が世界最強クラスというのがわかり、王国に固執する必要性が見当たりません。
この小説の大まかな流れですが、魔王による脅威が去り、討伐した勇者と師匠である主人公に対し、貴族どもが難癖をつけて絡んでくるので一ひねりにしましたという流れがくどいほど繰り返されます。
普通に考えたら当然と言えば当然なのですが、魔王という最大の脅威がなくなり、それを討伐した勇者グループに主人公が入っているため、同等な実力を持つ敵は存在しません。
そのため使い捨ての貴族を次から次へと投入し、ワンパターンに撃退する以外の話が描けなかったんだろうと思われます。
それなら戦いが終わった後の主人公たちの日常を描けばいいんじゃないかとなりますが、主人公は研究のために希少金属を追い求めるだけ、勇者たちは主人公のハーレム要員兼、対貴族用の叩き棒以上の役割を見出せません。
この小説の見どころは国王サイドの話くらいしかないと思います。
クビの宣告をしたのは国王ではなく、その下の公爵であり、事実を知った国王は国をどうにかしようと奮闘します。
後に勇者と主人公に感謝と謝罪をすることで、心を許される間柄になります。
しかし、そこはやはりなろう小説。どんなに謝罪と反省をしようと、一度作者からサンドバッグのレッテルを貼られたが最後、他のキャラよりマシとはいえ碌な目に遭いません。
追放後に国の借金を返済しようとしても、貴族たちが借金相手の勇者に喧嘩を売って面倒ごとを増やされたり、謝罪のために勇者が要求したアンテナに加えて、主人公が心底求めていた希少金属を送っても、ナレーションで「あーあ、知っていれば今以上に繫栄していたのにな。あーあ」みたいに見下されます。
ちなみにその金属を送ったことにより、「1年間の国家予算を返済に充てても1%の利子を払うのが限界な額の借金」が全てチャラになりました。
どう考えても最善手だったようにしか見えないのですが、作者的には「結果論だからw。知らなかったんならノーカンだからw」という理屈でしょうか。
本作品では政治的な描写が多く含まれているのですが、そういった話はただでさえ基本的に地味な話になりがちなのに、肝心の政争相手が政治、権力、武力、どれを取っても主人公以下なのに狡猾さのかけらもない行動しかとりません。
そして前述した二重鉤括弧の乱用に加え、ところどころ機械翻訳にかけたのかと言いたくなるような日本語が散見されます。たとえば
>「城の敷地内に設けられた『一般開放スペース』の平民たちが、解決されない問題に威圧感を放っています。このままだと、暴動になる可能性も」
「解決されない問題に対し不満の声を上げています」で十分だと思うのですが……。
一応この世界では威圧感とやらを飛ばすことで相手を圧倒できるという設定があるのですが、当然ながら実力者でないと効果はありません。
どう考えても作者の頭が設定に引っ張られたせいでこのような表現になったと思われます。
もっと作中キャラや読者の立場に立って執筆することをお勧めします。




