ハズレギフト「下限突破」で俺はゼロ以下のステータスで最強を目指す~の感想
【タイトル】
ハズレギフト「下限突破」で俺はゼロ以下のステータスで最強を目指す ~弟が授かった「上限突破」より俺のギフトの方がどう考えてもヤバすぎる件~
【あらすじ】
「下限を突破してどうするんだよ!?」から始まる自由で気ままな逆転ライフ!!!
成人の儀のある世界――
双子の兄であるゼオンとその弟のシオンは、対照的なギフトを神から授かった。
ゼオンは「下限突破」を。
シオンは「上限突破」を。
レベルの上限を突破できるシオンのギフトの優秀さは明らかで、その場で勇者パーティからの勧誘を受け、さらには実家である伯爵家の家督を兄に代わって受け継ぐ権利まで得てしまう。
その逆に、「ハズレギフトを授かるような奴は前世で悪事を働いたに違いない」という迷信により、ゼオンは実家である伯爵家をその身一つで追い出されてしまう。
だが、「下限突破」には思いもよらない可能性が眠っていて――!?
【感想】
いつも通り、主人公とその弟が成人になることでギフトなるスキルを貰う場面から物語が始まります。
兄が『下限突破』スキルを貰ったのに対し、弟は『上限突破』スキルを貰いました。
「下限なんか突破してどうすんだ」という当然な感想とともに兄である主人公は廃嫡。同時に弟が後継者と決まりました。
なろうテンプレならこの後「主人公様はスキル関係なく裏でこんな活躍をなさっていたのに、勘当なんて酷い!」という女の持ち上げがあるのですが、この世界には輪廻転生を元にした宗教が存在するそうです。
つまり、前世で善行を積むと強スキルが貰え、悪事を働くと外れスキルを与えられるという考え方です。
なので外れと思われるスキルを渡された主人公は勘当されて不思議ではないのですが、作者は息をするように設定を忘れるため、周囲の人間は主人公上げを始めます。
傍から見たら父親はざまぁの対象ではなく、過去から続く凝り固まった教義に支配された被害者という一面もあるのですが、なろう小説でそんなこと考慮する作者はなろうで投稿なんてしないので、彼には破滅的な未来以外待っていません。
追放されたため冒険者ギルドに行く主人公。以前から依頼する側として度々ギルドに来ていたそうです。
顔見知りの受付嬢に対し「外れギフトを授かったせいで家を追い出された」とは言いずらいようで、受付嬢の方から顔色を察してもらい話を進めます。
受付嬢に事情を説明する主人公。それに対し受付嬢は
>「ギフトに当たりもハズレもありません。そんな言い方は神に対して不敬です。もちろん、ゼオン様ご自身に対しても不敬です」
>「酷すぎます。ギフトの優劣を人の身で論じることが神への冒涜であるのももちろんですが、何より、自分の期待にかなったギフトを授からなかったというだけで、ご子息を家から追放するなど……」
この世界ではこういう宗教があるんですよ~と前振りしておきながらのちゃぶ台返しである。
もちろん、主人公を慰めるための方便というのも十分考えられます。しかし問題なのは、作中キャラに「スキルは優劣を図る物差しじゃない」という主張をさせながら、「実は主人公のスキルは強かった」と、否定した理論を用いて主人公を大成させるところです。
一般作品なら主人公の個性で強敵を破る展開を描くのですが、なろうではそんな凝った設定を描く頭などないので、ラスボスが持っている能力以上のものを主人公に与えて逆転劇を描きやがります。
話を戻し、冒険者になるためにギルドに来たことを明かす主人公。
今まで貴族の嫡男とのことで、受付嬢から敬語を使われていましたが、もう貴族ではないので敬語を使う必要はないと話す主人公。
話し方を変えることによって、主人公は線引きができる大人と描きたかったのでしょうか。
しかしサービス業である受付嬢が敬語をやめられるわけもなく、冒険者に落ちた主人公はため口をやめることもせず結局今まで通りです。まじで何が書きたかったんですかね、このシーン。
結局話し方が変わらないのは流石にまずいと思ったのか、ここで「実は主人公はこんな貢献をしていた」話を差し込み、受付嬢が敬語をやめない理由を語ります。
何でも、主人公は依頼の達成状況や報酬の多寡、冒険者の直面する危険などについて詳しく受付嬢から聞き出し、依頼内容に反映していたらしいです。
……つまり……どういうことだってばよ?
受付嬢から「依頼の危険度に対して報酬が少ない」と言われたから報酬を増やした程度の話にしか思えないのですが……。ガキのお使いと何が違うんですかね?
それに対し主人公は、「俺は依頼を適切に割り振っていたな」と、本来ギルド側がやるべき仕事を自分がやったと思い込みやがります。
もしかしたらギルドがサボった分主人公が頭を働かせていた可能性もありますが、結局のところ片方を下げないともう片方を持ち上げられないという、なろう作家のストーリー構築力の杜撰さが明らかになっただけです。
父親からそれほど手切れ金を渡されなかったため、食つなぐために早速依頼を受ける主人公。渡されたのは過去に自身が出した依頼でした。
週をまたいでも未だに消化されなかった依頼ですが、難易度に対する報酬は妥当なのに対し、場所が徒歩で丸一日かかる遠距離の為、駆け出し冒険者が手に取らなかったそうです。
さっき散々「主人公しゃまは冒険者のことをかんがえておられましゅの~」とか持ち上げてたのに、移動に丸一日かかる距離を考慮していなかったんだって。
作者「主人公は外れスキルを貰ったという設定で書き始めるか」
→「でもそれだと序盤でヨイショされないから、冒険者を慮った依頼を出してたことにしよう」
→「で、主人公に美味しい依頼を受けさせたいけど、すで他の人が持って行ってるよな……」
→「そうだ!距離が遠いから誰も行きたがらないようにしよう!」
こんな感じだったんですかね。それなら最初から自分が出した美味しい依頼を自分で受注したという展開で良くないですかね?なんで主人公の無能ムーブ挟んだの?
しかも、冒険者に交通費を支給しないくせに、自分は目的地まで伯爵家に出入りしていた商人の馬車に乗せて行ってもらう始末。
貴族の義務を果たさずに権利だけ貪る、なろう主人公の鑑にして人間の屑である。
現場に到着した主人公。そこでなろう小説おなじみのアイテムボックスが登場します。
口で収納と唱えるだけで異空間にしまっておけるいつものですが、主人公の物に関しては(当然)違いました。
一つの枠に1種類のアイテムを99個まで収納でき、16個の枠があるアイテムボックスですが、個数が0になったアイテムは当然枠から無くなります。
しかし主人公の場合は0以下のマイナスに個数が振り切り、収納した以上の個数を取り出すことが出来るそうです。
要するに、この先の展開は「ぼくがかんがえたげえむ」内でバグと称して都合のいい展開をだらだら書くだけの設定集となるということです。
普通ならそのような反則的な行動に対し、理屈に合ったペナルティ(一定時間内に数値を戻さないと死ぬみたいなの)を加えて物語にアクセントをつけるのですが、このタイプの小説では設定はすべて主人公に都合のいいように働くため、茶番以外の何物でもありません。
アイテムと同様に、魔法を使用する際に消費するMPも、マイナスに振り切って使いたい放題であることがわかります。
やはりペナルティみたいなものもなく、読者から見たらHPも同様な仕様で、主人公は不死身なんじゃないかという疑念が生まれます。
そこで一遍死んでみて、HPは下限突破せずそのまま死ぬ展開ならコメディとして評価出来るのですが、それをやるのは多分物語終盤のネタが尽きた時くらいだと思われます。
その後も習得した魔法の検証を色々やってますが、作者の胸先三寸でどうにでもなる設定を並べられても、読者から見たら字数稼ぎ以外の何物でもありません。
検証回の後書きで「コミカライズしたときに漫画家が苦労するだろうな~」などと、すでに商業展開する気満々の銭ゲバ作者には呆れて言葉も出ません。
これ以上主人公を追っても無茶苦茶な理論を並べ立てられて頭がおかしくなるだけなので、弟について述べたいと思います。
弟は上限突破というスキルから将来を有望され、実力派の勇者パーティへの推薦を受けました。
パーティが泊まっている部屋のドアをノックし名乗りますが、パーティメンバーから冷たくあしらわれます。
元々教会が推薦し、パーティが受け入れを承認したらしいのですが、パーティからは
>「はっ、勇者パーティに入れば勇者だぁ? てめえなんかお呼びじゃねえや。おまえを甘やかしてくれる優しいパパの元に帰ることだな、次期伯爵」
>「じゃあ、てめえの気持ちはどうなんだよ? 教会が推薦したから? 俺たちが望んだから? てめえは誰かに望まれたらなんでも安請け合いしてんのか?」
などと意味不明な罵倒をしてきます。作者さん?なんか壊れてんだけど、取り替えてくれない?
流石の弟も相手にしていられず、他のパーティに入ると宣言。するとパーティは
>「馬鹿を言うな。つい最近ギフトを授かったばかりのお貴族様を、誰がレベル上限まで育成キャリーしたいと思うってんだ? てめえのギフトが『上限突破』なら、それ以外に戦いに役立つような力は持ってねえってことだろうが」
この世界の貴族とはパイプを作る価値がないのでしょうか?作者の言う貴族と私の思う貴族に大きなずれがありますね。
別に弟が名指しでパーティを指名したわけでもないのに、圧迫面接で追い払おうとします。
どう考えても教会に報告したら罰が下るようなやり取りですが、弟はそんなことをせず、実力をつけてからメンバー入りする道を選びました。
おい作者!こっちの方が主人公してるんだけど!どうなってんだよ!?壊れてるってレベルじゃねえぞ!!?
これが主人公だったら、特に説明してないのに周りがぶち切れてパーティに怒鳴り込むだろ!
いや、マジで作者の考えというか、感性が理解できません。
しかも、これなろう小説だからね。弟はこの後も碌な目に遭わないでしょう。
折角スキルの使い方を考えついても、ナレーションで
>シオンがこの閃きを元に行動したことが、結果としてこの領都クルゼオンを思わぬ形で脅かすことになるのであった―
と、破滅することが予定されてますからね。
結局のところ、人の価値はスキルでは決まらないとか何とか作中キャラに喋らせておいて、やっぱりスキルで決まってしまうとか、どんなに努力しようとも破滅役は破滅する他ないとか、人間の屈折した部分だけがにじみ出た作品です。
主人公パートでは設定がおかしいし、弟パートではキャラクターがおかしいという、誰得な2段構えが待ち構えており、読むのは覚悟が必要でしょう。
ちなみに弟がやった、都市を脅かす結果となった行動ですが、回復薬を買い占めてレベリングだそうです。
買い占めたせいで品薄になったらしいですが、どう考えても悪いのは受け入れると言いながら門前払いした勇者パーティです。
主人公なら黙ってても誰かが断罪してくれたんでしょうが、悪役認定されたキャラはどんなにアピールしても報われることはないでしょう。それがなろう小説ですから。




