モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件~の感想
【あらすじ】
マルス王子はガマラス宰相に命を狙われ、その日を生きるのに精一杯だった。
食事には毒を仕込まれ、口を付けられない始末。
彼は仕方なしに、魔獣の森でモンスターを狩り、その肉を食べることで飢えを凌いでいた。
そんなある日、森である人物と出会い……。
【感想】
主人公はとある王国の王子でありますが、宰相に命を狙われているそうです。
何でも国が腐敗して宰相が専横しており、王子である主人公が政治的に邪魔になったから毒殺を試みているそうです。
何故軍事クーデターではなく王子を狙うのか、それは宰相が自身の娘を国王に嫁がせ、外戚となった後王子を除くことで実権を手にする計画だからだそうです。
見え透いた一手ですが、国王はまんまと娘との間に子を作りやがります。
後は王子と国王を亡き者にすれば終わるのですが、何故か宰相は毒殺にこだわります。
あらすじの通り主人公は毒殺を回避するため、宮廷で出される料理を避けて領地の外で魔物を狩り、その肉で食いつないでいます。
魔物に襲われたよう工作して暗殺されないのかって?そんな展開を打開する方法なんぞ「隠しスキル」「特典」「ボーナス」を使わずになろう作家が書けるわけないでしょう。
主人公が隠れて外で魔物の肉を食している事実は、最後まで宮廷の誰一人として掴めません。
そもそも魔物の肉には毒があるのですが、お忍びで市場の物を食べるのではなく、何故わざわざ毒の肉を食べるのか、それは主人公パワーアップイベントを起こすためでした。
いつものように魔物の肉に嚙り付く主人公。そこで唐突に女性から声をかけられます。
その女性曰く、主人公は見込みがあるから剣術を継ぐために弟子にするとのこと。
何でも、毒を持つモンスターの肉を食すことでその強さを取り込むことが出来、主人公はその女性よりも早い時期から食し始めていたからだそうです。
このまま手をこまねいていても暗殺されるだけ。現状を打破するために主人公は師事します。
最初の修行は、毒耐性をつけるために毒の指輪をつけることでした。剣術教えろや。
その指輪をつけると毒に侵され、死ぬか耐性がつくまで外れないそうです。
毒殺を避けるために毒を持つ魔物の肉を食べ、修行のために死ぬ程強力な毒に侵される指輪をつける。
普通ならやりませんが、これはなろう小説です。主人公は成功することが約束されているため、翌朝早速付けます。
指輪の毒に侵され三日三晩死の淵を彷徨った主人公。
実は食事に毒は入ってなかったのですが、傍から見たら毒殺されかけたように見えるため、周りから心配されます。
そんな中、毒殺の原因と言っていい国王である父親からは自己責任だと一蹴されます。
読者からしたら最も重い断罪が下されることを期待されるキャラでしょうが、果たして作者はどう扱うのでしょうか。
猛毒を克服した主人公は、師匠から強力な毒を持つ魔物の肉を生食することを強制され、必死に食べ終わると腕試しと称してボコられます。
動作が遅いのは身体能力が低いからだと、囚人に使われる、体重が2倍に感じられる腕輪をつけられて日常生活を送るよう強制されます。
当初は剣術を教えるという触れ込みだったはずですが、今のところやっているのは基礎スペックでのごり押しだけです。
いや、基礎能力も大事ではあるのですが、今のところ剣術のけの字も出てきません。少しは剣術の修行方法でも教えるとかなさらないんですかね?
その次の話では、腕輪をつけてから3年経過しました。
その間暗殺されなかったのかと疑問に浮かぶでしょうが、毒耐性をつけて1年ほどしてから事故を装った暗殺を仕掛けられたそうです。
腕輪のせいで動きが緩慢だったので、鉄砲玉でも送れば楽にやれたと思うのですが、それは作者が許さなかったようですね。
師匠との手合わせで回避する修行をしていたため、流れ矢、魔法、建物の崩落などを仕掛けられましたが全て回避したそうです。建物の崩落ってどうやって回避したんでしょうかね?コミカライズの作画担当、頭抱えてそう。
そうやって修行をつけていましたが、ある日突然「基礎はできたから後は自分で鍛えろ」といって別れを告げられます。
死なない訓練しかしておらず、剣術は微塵も出てきませんでしたが、それでいいんですかね。
それと同時に暗殺も大胆になり、あちこちから刺客が複数で襲ってくる状況でした。
修行のおかげで余裕で対処できますが、反射的に殺してしまうために背後関係は分からずじまいでした。
主人公は
>「殺すつもりもないんだけど、生かして捕えるには弱すぎるんだよね」
と、まるで他人ごとのように語ります。
武器を取り上げた後は側近に任せるとかすればいいと思うのですが、この作品では主人公も知能を奪われたのでしょう。
そもそも修業を始めたきっかけは暗殺から逃れるためではあるのですが、物語の主人公ならばそこから国を立て直すことに繋げてもらいたいものです。
ある日森の中を歩いていると、剣術の稽古をしている音が聞こえてきました。
「剣術のパワーアップイベントかな?」と思われましたが、始まったのは突っ込み所満載の設定語りでした。
主人公の国は200年以上平和が続いたせいで戦いが軽視され、剣の強さは不要どころか野蛮なものとして忌避されているそうです。
ちなみに師匠との訓練は倫理的に一発アウトで、バレたら余裕で監獄行になる行為だそうです。
このような文化の中暗殺者を差し向けるというのは、極刑も生温い程罪深い行為であることと思われます。
王子として差し向けた者を一刻も早く暴く必要があり、「弱すぎて殺しちゃう」などとイキってる場合ではないのですが、ただのなろう小説特有の設定の反作用です。要するにいつもの。
話を本編に戻すと、そんな文化の中主人公は実戦形式の訓練をしている連中に出会いました。
彼らは貴族階級を憎んでおり、訓練に混ざりたいとほざく主人公に対し斬りかかります。
行動は乱暴ですが、原理は理解できます。
それに対し主人公は脳筋呼ばわりし、暗殺者なら体が真っ二つになる程の一撃を喰らわせます。
連中は頑丈だったので瀕死で済みましたが、読者から見たら殺すつもりの一撃を喰らわせた主人公にヘイトが向かうことが予測されます。
格付けが済んだ主人公は、5人組の連中に対し剣の稽古につき合わせます。
リーダー格の男から「そんなに強いなら、俺らを相手にしても訓練にならないだろう」と言われたのに対し主人公は
>「僕にも事情があってね、多人数を相手にした時の訓練が必要なんだよ」
>日常的に命を狙われていて、最近アサシンの数が増えたから、そのための訓練、とは言いづらい。
と、なろう小説らしい答えを返します。
問題解決のために訓練するのではなく、とっくに問題が解決しているのに解決しようとするという、一般人には理解できない思考回路をしていらっしゃいます。
その後、5人に対し魔物の肉は食べられることを説明する主人公。
肉に毒が含まれるのは一般常識ですが、よりによって生肉を食べることを勧める主人公。
食べたことのない男たちは当然吐き出しますが、それに対し主人公は
>彼らは躊躇したが、意を決したオグマがまず肉を少し口にした。
>「グエッ! ウェェェッ……」
>齧った肉をすぐに吐き出すオグマ。
>他の連中も試してみたが、同じように食べることなどできない。
>モンスターの肉が食べられることを証明出来て、僕は少し誇らしかった。
一切編集せず貼り付けているんですが、誰か翻訳してくれませんかね?
食べられてないのに食べられる証明ができたとか、もしかして作者は日本人ではないのでしょうか?それとも義務教育終えられなかった方ですか?
なろう小説でよく見る「強い奴=偉い」理論でその組織のリーダーとなった主人公。
しばらく経つとハンドレットという組織になり、日に日に拡大する戦力を危惧した騎士団員が潜入したところ、色々洗練された組織だと述べられております。
が、今までの主人公の能力に信用がないため、組織をまとめ上げたのは元々居たメンバーなんだなとしか思えません。
さらにハンドレットの上位陣の戦いを見て、「その辺の騎士では太刀打ちできない」とか感心してます。
作者は実戦形式の訓練は違法だとか、そのせいで騎士は型にはまった訓練しかできないといった設定を忘れているんですかね?
この小説において騎士団員が実戦形式の試合を見たら、やるべきことは騎士団に帰って逮捕や討伐の準備をすることです。
まあ、騎士なのに実戦訓練したらダメなんて馬鹿みたいな設定を作者から押し付けられている状態ですので、作者が設定を忘れた隙をついて自然な風に勝馬に乗ろうとする動きは評価できます。
作中キャラが作者の知能を超えた瞬間です。
主人公はハンドレットを率いて、傭兵団として他国へ亡命することを目標とします。あれ?作者の知能上がった?主人公にまともなムーブさせてる。
そこに国王から呼び出しをくらい、魔物の肉を食ってるのは邪教かもしれないから討伐して来いと言われます。
主人公はハンドレットを率いて直ちに亡命することを決め、組織の上位陣が集まった日に姿を見せます。
しかし、そこでは亡命ではなく反逆を企てていました。
主人公は反乱までは望んではいませんでしたが、知らないところで軍事クーデターの準備が完了していました。
騎士団の手引きのみならず、主人公の婚約者も、主人公の知らないところで反逆に加わっています。
主人公の意志を無視して、全て勝手に物事が進む状況。
普通のなろう小説なら「世界が主人公を接待する」系の作品ですが、これは主人公の望まない計画が進んでいます。
これでは周りが主人公のチートを勝手に利用している状況になってしまい、なろう読者のニーズにあっていないのでは?
まあ、一番の問題は軍事クーデターという人生の一大事にもかかわらず、真剣味のかけらもなく行動する主人公なんですけどね。
投げやりに王都を攻撃する命令を出したシーンは、明智光秀が見たら作者の家を焼き討ちするために生き返るレベルです。
騎士を蹴散らし、玉座の間にたどり着くと、そこには国王と宰相だけでなく、冒険者の一団も居ました。
そこで重力の魔法を喰らったのに対し、師匠からもらっていた腕輪を外す主人公。
そしたら力加減が出来なくなったと言って冒険者を殺めます。
敵対しているとはいえ、クーデターには直接関係しない相手を手にかけても特に感じることのない主人公。
それどころか自身の毒耐性の自慢までほざきやがります。
>「食べた? ポイズンリザードを? あれは毒の塊だぞ? というか、ポイズンリザードの血は毒の素材として取り引きされてるんだぞ?」
>「ああ、道理で不味いわけだ。僕もあの肉は一回しか食べていない」
このやり取りをするために、今までスパルタの師匠から死ぬ気で回避する訓練を重ね、宰相仕込んだ事故を回避し続けたという設定を無視して敵の攻撃を喰らいました。
これなら「やりたい展開を描くために無茶苦茶な設定を作る」方が、「今までの展開を無視してやりたいことを書く」よりもましでしょう。
なろう小説は常に最悪へと突き進む性質があるのか。
歯向かう冒険者を虐殺した次の話で、物事の元凶である宰相の過去話と内面が語られます。
実は宰相が実権を握る前は王妃がやりたい放題しており、財政危機と恐怖政治に対抗し、王妃を糾弾し取り除いたという歴史が語られます。
国王は何をしていたかって?ただ宰相から説得されるだけで何もしてません。本当にこいつは……。
その後王妃が握っていた権力を受け継ぎ、各貴族と分け合って『少しずつ国を良くしてきた』そうです。
……あのさぁ、冒頭で「国が腐敗して宰相が専横している」って語られてんだけど?
「主人公目線だから!」と言い訳するつもりなんでしょうか?それなら主人公は王子という立場にも関わらず、自国の歴史に無頓着で只々被害者意識だけを振りかざし、常人には理解できない行動を取りやがるクズ野郎ってことになるのですが?
「国を良くした」というのが宰相目線の的外れな分析だとしても、
>牛のように遅い歩みではあったが、貴族たちがいる以上、清濁併せ呑む形でしか、政治を動かすことはできなかった。
と、自身の至らなさを素直に認めるだけ好感が持てます。
要するに素人作者がヘイトコントロールを大失敗したってことです。
で、「実はいい人」属性が急遽作られたってことは、主人公の手下になることが決定したってことです。シンパではなく、手下です。
ハンドレットたちが他の貴族を皆殺しにしてしまい、このままでは政治が出来ないと思った主人公は宰相を生かして政治を一任します。
国王もあっさり王位を主人公に譲ります。第二の元凶ですが、特に報いを受けることなく物語から退場します。
そして残ったのはやる気のない主人公と、クーデターの際禁術レベルの魔法を使った婚約者と、貴族憎しで皆殺しにしたハンドレット幹部、そして宰相です。
まともな人材がいないと国を立て直せないとはいえ、それでやることが寄りにもよって元凶に対し、突然「実はいい人」属性をつけて任せる……本当に理解できません。せめて主人公の婚約者をまともにすれば済む話ではないでしょうか?
そして王位に就いた主人公ですが、主人公補正が無かったら父親と同じ運命をたどること間違いなしの政治センスのなさを披露します。
自身もハンドレットも魔物の肉を食べて強くなったというのに、魔物が国周辺で絶滅危惧になったと聞いて「あんな不味いもの食べなくていい」と感情論をぶっちゃけます。
また、他国の使者からされた無茶な要求を全面的に飲んだりと、宰相をはじめとする側近が好意的に解釈して動いたからいいものの、そうでなかったらバッドエンド直行してもおかしくない判断力が見て取れます。
その後は主人公のチートパワープレイで領土拡大する話が続くため、ここで終わりにしたいと思います。
一つ言えるのは、ヘイトコントロールが下手糞な作者は勘違い物を書くべきではないということでしょう。




