「お前の魔術は最弱だ」と告げられた少年、すべての属性と効果を作り出せる最強の「魔石術」で自覚なく辺境開拓する。~の感想
【タイトル】
「お前の魔術は最弱だ」と告げられた少年、すべての属性と効果を作り出せる最強の「魔石術」で自覚なく辺境開拓する。実家は魔石を侮ったせいで崩壊に向かった模様。
【あらすじ】
魔術師の名家に生まれた11歳の少年リオは落ちこぼれだった。
兄と違い、リオは魔石を作り出す魔術以外を習得できない。
威力偏重主義の魔術社会において、リオの魔石術は歓迎されていなかった。
両親はリオに魔石を作らせてこき使うことを決めた。
「生まれたからには私達のために金を稼げ。それが恩返しだ」
過酷な日々をおくりながら、リオはいつか認められると信じて働き続けた。
しかしある日、リオは自分が死ぬことを両親が望んでいると知る。
衝撃の事実にショックを受けたリオは家出を決行した。
そして名も知らない辺境の集落に辿りつく。
衛生環境も悪く、ろくに食料もない限界集落にてリオは魔石術を使って人々を救うことを決意する。
水が湧き出る風呂やキッチン、全属性耐性がある家、炎と冷の魔石による冷暖房。
朽ちかけの集落で快適な生活ができるようになり、リオを失った実家は大失態をやらかしてしまう。
【感想】
あらすじの通り、主人公は魔術適性がまったくなく、高名な魔術一家の出来損ないとして冷遇されております。
魔術の威力が高くないとゴミ、そんな思想の一家ですが、戦い方に工夫が見られないせいで最後に主人公たちにボコられます。主人公なら工夫する必要無かったのにね。
冷遇され粗末な寝床と食事で魔石を作り続けさせられる主人公ですが、そもそも魔石とはなんなのか説明がされません。
最初に魔石が活用されたのが、主人公が一家の元から逃げる際に魔石で梯子を作ったシーンでした。
手のひらを向けて「生成」というだけで出現したのですが、魔石が変形して梯子の形になったのか、魔石の力で梯子が出来たのか、絶妙にわかりにくいシーンとなっております。
少しでも説明があれば察せるのですが、なろう作家にうまい描写を求めるのは酷な話でしょう。
逃げた主人公は魔導列車とやらを乗り継いで逃げます。
料金はどうしたのかって?寝床である物置小屋にいくらか放り投げられていたそうです。
家族は一生飼い殺しにする計画をべらべら喋っていたのに何故そんなことをしたのか。
別に列車に乗ることが今後の展開に関わることはないので、『這う這うの体で逃げた』ということにすれば問題ないのですが、真実は作者のみぞ知る状態です。
主人公が逃げた先は、家がボロボロで廃墟と見間違うほどの集落でした。
主人公は早速家を修繕しますが、そこで魔石術の概要が明らかになります。
魔石には複数の種類があり、それぞれに対応した魔石を使用することで望んだものを作り出せるそうです。
これで鋸を作り出すなど、魔石術を使用して集落を発展すると、普通の小説ならそのような展開になるでしょう。
でもこれはなろう小説なので、主人公が最強じゃないといけません。じゃあどうするかって?
家を修繕した後、チュートリアルのようにイノシシのモンスターが登場します。
その突進攻撃に対し、魔石で壁を作って動きを止め、魔石で頭上に槍を生成し落下。イノシシに突き刺して討伐しましたとさ。
その後も種類だけでなく、強さもまちまちの魔石を使い分け、息をするように魔石を生成する主人公ですが、これは魔術を使うのと何が違うのでしょうか。まあ、作者もそこまで考えてないでしょう。
一方家族サイド。
主人公が逃げ出したことに気づき、総出で探します。
そこで明かされますが、なんでも主人公の魔石術で商売をしていたとか、魔術が使えないからと魔石術の本を惜しみなく支援していたとか、どう考えても息子を邪険に扱う予定があったとは思えない待遇だったそうです。
受注している魔石は六千個程で、色々忘れっぽい父の反応を見てもとんでもない数だとわかります。
しかも受注相手は国王。もし納品できなければ主人公の兄は王立学園を退学、父は魔術師団団長を、母は学園の理事長を解任されることが予想され、一家は破滅だそうです。
相変わらず主人公を虐げる者よりも国王の方がヤバい奴という設定です。
一週間という長いようで短い期間で魔石をかき集めた一家ですが、国王に納品したところ「質が悪い。(主人公が作った物でなく、)適当にかき集めたものだろう」と一家が不正をしたのだと断罪します。
ちなみにかき集めた魔石はクズ石というわけではなく、どちらかというと上質だそうです。
つまりこの状況を打開するためには、最上級の魔石を作れる主人公に無理を押してでも六千個作ってもらうことになりますが、そう考えるとこれで破滅して果たして「ざまぁ」になるのでしょうか。
他の追放物と違い、一家は悪手を打ったとは言えず、むしろ主人公を虐げるのはどちらかというと正解だったと言えるのではないでしょうか。
「虐げないのが正解じゃないの?」と思われる方もいるでしょうが、どのみち受注量が魔石を作れる主人公一人を酷使するレベルの量ですし、惜しみなく支援したのに作者の我儘で一家は主人公を虐げる他なかったため、一家を責めるのはお門違いという考え方がでてきます。
それに対し国王は一家のやったことを不正呼ばわりし、兄の婚約者だった王女はブチ切れて婚約破棄。そして団長だの理事長だのもクビになります。
そこまで激昂してまで最上級の魔石を大量に欲しがった理由?書かれてないから知らん。
一家を破滅するための避けようのないイベント以外の答えがあったら教えてくれ。
一家は破滅し、主人公の力を頼ろうと訪ねてきますが、主人公は当然拒絶。一家と主人公たち村人との戦闘になります。
兄は周りを焼き尽くすような炎を放ちますが、魔石で作った炎完全耐性の装備で攻撃を完封。
というか、魔石が魔術を吸収するという設定が最終話付近で突如湧いてきます。
兄の使用する世界最強クラスの魔法だろうと吸収するため、あらすじで述べられるような威力偏重主義など、普通は生まれません。
父は雷をまとった獣に変身し、光の速さで突進しますが、直線的な動きしかできないからと動きを読まれ瞬殺、母はラミアに変身するも、何か魔法で作られた黒い球体に飲み込まれてあえなくダウンします。
工夫すれば勝てたかもしれないね。工夫する余地は作者に奪われてるけど。
一家を倒した主人公は、発展した町で幸せに暮らしました。めでたしめでたし……と終りますが、エピローグであの王様が街にやってくるという話が出ます。
少しでも品質の悪いものを提供したとたん破滅する上、完結により作者のご都合主義が発動しなくなるため、きっとこの後主人公たちは高確率で破滅するでしょう。
本当にハッピーエンドが書きたいなら、想像できるような展開とキャラ作りをする必要があると、この作品を読んで思いました。




