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第九十五話 ホンマグロン

「失礼しますね」


「は?」


 俺は一瞬でアリエルの背後に回り込み、腰に両腕を回して持ち上げると、勢いよく体を反らした。


 ゴッ!!


 アリエルの頭を地面に叩きつけると、鈍い音が盛大に響き渡った。


「よっと」


 体を捻って手を離し、立ち上がってアリエルを見下ろす。

 悪魔だし、これくらいじゃ傷もつかないだろ……。


 ピクリ


 アリエルが頭を支点にくるりと回転し、その勢いで立ち上がる。

 後ろを向いたまま小刻みに震えたかと思えば、しまいには声を出して笑い始めた。


「ふっふふっふははははっ!」


 ……やばっ、頭強く打ちすぎたかな?

 心配する俺をよそに、アリエルはこちらを向き直ると、にへらと笑った。


 ……壊れた?


「お前は今から俺のものだ」


 …………。


「え? 今なんて――」


「お前を俺の婿にする」


 …………。


「壊れた?」


「あぁ!?」


「あっ! すみません! 声に出ちゃった」


「ごたごた言ってんじゃねぇ! 俺と交われ!!」


「無理です! ごめんなさい!」


 俺はその場から逃げ出した。


 ※※※※※


「……撒いたか?」


 全力で走る俺に追いつける奴はそうそういないはずだ。

 俺の左手の紋様も、先ほどより反応を弱めている。

 ……助かった。


「てか、どこだよここ」


 見たこともない木々が生い茂る森の中で、俺は途方に暮れた。

 お腹すいてきたな……。

 俺は食料を求め森の中を彷徨い始めた。


「なんかいい匂いする……」


 しばらく彷徨っていると、どこからか香ばしい匂いが漂ってきた……。


「ごちそうだ……ごちそうがある……」


 気がつくと、吸い寄せられるように足が動いていた。


 ※※※※※


「なんだこれ……」


 目の前には、じゅうじゅうと脂がしたたり落ちる巨大な丸焼きが鎮座していた。

 漂う香りによだれが止まらない。

 我慢できずにふらふらと近寄ると――


「誰だ!」


 小太りのおっさんが丸焼きの向こうで威嚇してきた。


「ちょっとお腹がすいちゃって……少し分けてもらえませんか?」


「駄目だ! これはオラのだ!」


「そんな……こんなに大きいのに……」


「欲しけりゃ海まで行って自分で捕ってこい!」


 おっさんはそう言ってニヤリと笑った。


「うみ……近くに海があるんですか!?」


 俺の勢いにおっさんは後ずさりした。


「お、おめぇ、よそ者か? 海ならこっからまっすぐ行けばすぐだべ」


 そう言うと、おっさんは自分の後ろを指さした。


「これ、海で捕れるんですね?」


「腕がありゃ、いくらでも捕れるぞ」


「ありがとうございます!」


 俺はおっさんに礼を言って駆け出した。


「……なんだぁ、あいつ」


 ※※※※※


 ざざーっ ざざーっ


 目の前では、巨大な湖のような水面から波が寄せては返している。


「でかいなー。これが海か……」


 俺は靴を脱ぎ、海へ足を踏み入れる。


「気持ちいい……」


 暑さで火照った足に、ちゃぷちゃぷと揺れる水が心地いい。


「塩辛いんだっけ」


 俺は足元の水をすくい、一口含んでみた。


 ぶーーーーっ! っぺっぺっ!


「塩辛い……」


 水を盛大に噴き出した俺は、塩気のせいか喉が渇いてしまった。


「くそっなんか色々やばいな……とりあえず腹を満たさなければ」


 海の中に無数の生き物の気配を感じる……。


「めんどくせぇ」


 俺は水面に向かって拳を叩きつけた。


 ドパンッ!!!


 拳の衝撃で海底が露わになり、大量の水と共に生き物が空へと舞い上がる。


「おー、あれデカいな!」


 俺は空中でびちびちと跳ねる巨大な生き物を捕まえ、頭上に掲げておっさんの元へ走った。


 ※※※※※


「なっ……」


 俺が持って帰った生き物を見た途端、おっさんは目を見開いて絶句した。


「おっさん! これ焼けば食えるのか?」


「おめぇ……その魚、どうやって……」


「殴ったら捕れた。なぁ、腹減ったんだよ」


「なんちゅう奴だ……。待て、そのホンマグロンは生でもうめぇんだ。オラがさばいてやるから、ちっと待っとれ」


「そうなのか……なるべく早く頼むよ。あと、なんか飲むものない?」


「そこの樽に水が入ってるから、好きに飲め」


「ありがと!」


 俺は巾着の中からコップを取り出し、樽の中の水をすくって飲んだ。

 ……あー、生き返った。


 おっさんは小屋の中から包丁を持ってくると、手早くホンマグロンをさばいていく。

 おー、手際がいいな。慣れてる。


「ほれ、食ってみな」


 俺は切り分けられたホンマグロンの身を口に運ぶ。


 口に入れた瞬間、身から濃厚な脂が溶けだした。


 ゴクン。


「なんだこれ! めちゃくちゃ美味い!!」


 俺は夢中になってバクバクと食べ続けた。


「すげぇ食いっぷりだなぁ……」


 おっさんは呆れた顔で俺を見つめていた……。

読んでくださってありがとうございます!


ルゥの貞操が危ない!

アマーズ……というかアリエルが強烈な個性を放っております(;^_^A

そして謎のおっさんとホンマグロン(*‘∀‘)

ホンマグロンは美味しいのです( ̄▽ ̄)


次回の更新は10/14(水)18時頃を予定しておりますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
読了しました!! アリエルに求婚されるルゥ!?Σ(゜д゜;) ごめん 声に出ちゃった は、笑いました笑 ホンマグロンは美味しそう(*´ω`*) 次回も楽しみにしてます!!
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