第九十一話 目標
「ラングストラも久しぶりだなー」
塔を出ると、日が傾きかけていた。
以前と変わらない街の喧騒に、少し心が安らいだ。
「あいつら、どこにいるかな……」
転移の途中で拉致られた俺は、皆がどこにいるのか見当もつかなかった。
「……とりあえず、家に帰るか」
俺は、久しく帰っていない自宅へと歩き始めた。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ」
「あれ? サンタナじゃん。久しぶり!」
明かりの灯った家に入ると、なぜかサンタナがいた。
「塔に挑む間、こちらにお邪魔させていただいております」
サンタナはそう言って、丁寧に頭を下げた。
「ああ、そうか。自由に使ってくれていいよ。掃除してくれて助かるくらいだ」
部屋の中はきれいに整頓され、俺がいた時と全く変わって……いや、なんだか家具に艶が出ている気がする。
「ルチアたちは、ここには来てない?」
「いえ、しばらくお顔を見ておりませんが……何かあったのですかな?」
「何かあったというか……とりあえず座ろうか」
俺は深みのある艶が出た椅子に座り、今回の拉致事件についてサンタナに話した。
「そのようなことが……承知いたしました。直ちに探らせましょう」
話を聞き終えたサンタナは、上着の内ポケットから小型の通信機を取り出し、何かをつぶやいた。
そして――
「どうやら、ルチア様たちはジークフリード陛下の居城にてお世話になっているようですな」
……凄すぎだろ。
「あー、そうか。ヴォルムスに戻ったのか。ありがと、助かったよ」
「お嬢様をよろしくお願いいたします」
サンタナは優しく微笑んだ。
※※※※※
「ししょー!! どこ行ってたんですか!?」
「おい、話してやるからとりあえず離れろ」
ジークフリードの城の客間でみんなと合流すると、ものすごい勢いでリーズが突進してきた。
リーズを引っぺがして客間の椅子に座り、落ち着いたところで、俺は皆に事情を説明した。
「相変わらず……訳の分からない男だな」
ジークフリードが呆れた様子で口を開く。
「失礼だな。俺だって訳が分からねーよ」
「胸を張って言うことではないがな。次は『瀑布の祠』に向かうのか」
「んー、まぁ、頼まれたからな。瀑布の祠ってどこにあるんだ?」
「『パグア島』という島にあるそうなのだが……爺」
老騎士さんが机に地図を広げてくれた。
「この大陸の西の果て。海を渡った先にある、この島だな」
「へぇ……海か。見たことないや。どんなところなんだ?」
「実は俺も見たことはない。さすがに行く機会がなくてな……」
俺は皆に視線を向けたが、同じく首を横に振っていた。
「一応、知識としては知っています。巨大な湖のような場所で、水が塩辛いのだとか」
さすがルチア。商売してるだけあるな。
「水に味がついてるんだ! 変わってんなー」
「どこにでも行けるお前がうらやましいぞ。すぐに向かうのか?」
「うーん……いや、ちょっと皆にレベルを上げてもらってからにしようかなって」
俺は再び皆に視線を向けた。
「おう! まだまだルゥには追いつけてないしな! 修行しようぜ!」
「賛成だよ! 私、途中でへばっちゃったし!」
グランとカナエが即座に賛同した。
残りの皆も言葉には出さないが、目には確かな気合がこもっていた。
「んじゃ、しばらく世話になるぞ」
「当然のように……まぁいい。俺もお前の修行に付き合ってやろう」
「陛下。政務優先ですぞ」
「……分かっている」
ジークフリードは老騎士さんのツッコミに苦い顔をして答えた。
「よし、目標は全員がレベル90を超えるまでだ。期間は……一か月ってところかな」
「「「は?」」」
俺の言葉に全員が驚愕する。
「大丈夫だって。ちゃんと階層主の攻略法は教えてやるから」
「それでも一か月って……」
いつも明るい性格のカナエも、表情を硬くしている。
「ここなら装備も充実してるし、何とかなるさ。おいキリエ、他人事じゃないぞ? お前もだからな」
急に話を振られたキリエは、俺を見て口をパクパクさせた。
キリエにしては珍しく、反論の言葉が出てこないらしい。
「お前たち……ゆくゆくは世界征服を企てたりしないだろうな?」
ジークフリードが笑顔を引きつらせて尋ねた。
「するわけねーだろめんどくさい」
……いや、ルチアなら別の意味でするかも?
即答した後にルチアを見ると、意味ありげな笑みを浮かべられた。
……まぁいいか。
「ならばいいが……くれぐれもこの国で暴れたりしないでくれよ?」
「しつこいなー。暴れてほしいのか?」
「ルゥ殿、それだけはご勘弁を……」
老騎士さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
まったく……頼りない皇帝だな。
俺は苦い顔をするジークフリードにジト目を向けた。
読んでくださってありがとうございます!
久しぶりに登場したサンタナ! 相変わらず仕事ができる男ですね(*‘∀‘)
この世界に一応海は存在するようです(水着回はありませn)
そして次回は修行回!(∩´∀`)∩やったるでー!
それでは次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




