第九十話 ここはどこ?
「ん? あれ?」
光が晴れると、俺はどこかの『塔』にいた。
周りを見渡しても、誰一人仲間はいない。だが――
「……誰、ですか?」
そこにいたのは、おそらく管理者の一人。
ルシフェルたちと同じオーラを放つ存在だった。
ただ……なぜか床に座って両足を抱え、俺から目をそらしている。
「……」
「え?」
「……」
「すみません、聞こえないです」
「突然呼び出してごめん」
顔を近づけると、ようやく声を聞き取れた。しかし早口だな……。
「いや、いいですけど、どうやって……?」
「君たちが使った転移魔法はかなり特殊でここにいても発動を察知できるんだつまりその発動に合わせて我が介入して――」
……息継ぎはどうした。
床を見つめながら延々と話し続ける謎の管理者を、俺はただ見守ることしかできなかった。
「えっと、あの、俺はなんで呼ばれたんですかね?」
終わりが見えなかった俺は、強引に言葉を遮った。
「我お前に頼みたいことがある」
よかった……今度は短文だ。
「頼みたいこと?」
「アリエルを救ってほしい」
「アリエルって悪魔ですよね? ……救うってどうやって?」
「アリエルに会ったらこれを使って」
名前もわからない管理者は、水色に透きとおった小さな玉を取り出すと、俺の方に転がした。
ころころと転がる玉を指でつまみ、光に透かしてみる。よく見ると、玉の中で虹色の何かがゆらゆら揺れていた。
「これ、何ですか?」
「アリエルの良識」
「りょうしき……」
「それを使えばアリエルは管理者に戻れる」
「そんなことができるんですか!?」
びくぅ!
「あ、大きな声出しちゃってすみません。あの、他の悪魔の分はないんですか?」
「知らない我が持ってるのはそれだけそもそもほかの悪魔とは仲良くないしむしろ滅べばいい」
「そ、そうですか……それで、これをどうやって使えばいいんですか?」
「飲ませればいい」
……簡単に言ってくれるなぁ。
「分かりました、やってみますけど……上手くいかなかったらすみません」
「失敗したら恨むから末代まで呪うから確実にやり遂げて成功報告以外は受け付けないそこんとこヨロ」
物騒な言葉が聞こえたような気がしたが……気のせいだよな?
俺はぶつぶつとつぶやく管理者を無視して耳の羽に手を添えた。
※※※※※
「良かった。ルシフェルの部屋か」
「ルゥ。どうしたの?」
転移した先にはいつものルシフェルがいた。
「いや、ちょっと……かなり変な管理者につかまってさぁ……」
「あー……レミエルかな?」
「名前も聞けなかったよ……声が小さくて早口だった」
「レミエルだね。つかまったってどういうこと?」
「いや、アザゼルを倒して転移魔法で転移したらさ、俺だけレミエルの部屋に拉致されたんだ――」
「なんだって!? ルゥ! 大丈夫かい!?」
ルシフェルが慌てて俺に駆け寄り、俺の体を確かめるようにべたべたと触った。
「ちょっ、なんだよ? やめろって」
「転移の途中でそんなことされたら、次元の狭間でバラバラになっちゃうかもしれないんだよ!」
「は?」
俺は慌てて自分の体を見回した。
大丈夫。欠けてるものはないはずだ……。
「良かった無事で……」
「ほんと良かった……信じらんねえ……レミエルのやろう……今度会ったら絶対泣かす」
「どうやってさ?」
「……大声出してれば泣きそうじゃね?」
「ふふっ……確かに」
ルシフェルはいたずらを思いついた子どものような笑みを浮かべた。
「あ、そうそう、アザゼルなんだけどさ。俺のスキルが通じなかったんだよ。なんでだと思う?」
「え? それでよく倒せたね……」
「スキルを応用してなんとかな。んで、なんでだと思う?」
「うーん……どういう状況か説明してくれる?」
俺はルシフェルにいきさつを説明した。
「そうだな……一番濃厚な線は、アザゼルはルゥと出会った時、『原罪』と融合してたってことじゃないかな」
「原罪と融合?」
「原罪が悪魔の魂だってことは前に説明したと思うんだけど……原罪と悪魔が融合すると、存在の次元が変化するんだ」
「……つまり?」
「簡単に言うと、スキルの影響を受けなくなる」
「そういうことだったのか……ん? でも、俺ぼこぼこに殴ったんだけど?」
「……素手でかい!?」
ルシフェルはあからさまにドン引きした。
「うん。すぐ回復したけど……」
「まあ、僕の加護の影響だろうね」
「あっ。この紋様か」
「それにしても、悪魔たちもなりふり構ってられなくなってきたみたいだね……」
「あー……今回かなり面倒だったんだよなぁ」
「何が?」
「アザゼルに目をつけられて粘着された……」
「あれだけ目立つなって言ったのに……自業自得だよ」
「俺だって気をつけてたんだけどなぁ」
肩を落とす俺をルシフェルは呆れた目で見つめた。
「そうだ。これ、アリエルに使ってくれってレミエルにもらったんだけど……」
俺が巾着から玉を取り出すと、ルシフェルの表情が驚きに染まった。
「『良識の塊』……これ、アリエルの……?」
「って言ってたぞ。救ってくれって渡された」
「ははっ。よく持ってたなぁ……いや、異常にアリエルに執着してたからな……あり得るか」
「正直ちょっと引いたんだけど」
「僕も引いてるよ」
「ちなみに、アリエルの原罪ってどのダンジョンに在るか分かる?」
俺は図書館でメモした紙を取り出した。
「そうだね……この中だったら、『瀑布の祠』だと思う」
「瀑布の祠ね。りょーかい! ありがと」
それじゃあ、皆のところに戻るか。
俺はルシフェルの部屋を後にした。
読んでくださってありがとうございました!
キャラの濃ゆい管理者が登場しました!\(^o^)/
アザゼルとの闘いの謎も無事解消したはず……( ゜Д゜)
説明回でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?
それでは次話もお楽しみに!( *´艸`)




