第八十九話 突破
〘施錠〙
「なっ!?」
俺は動きを止めたアザゼルの顔面を殴りつける。
ゴギィッ!!
鈍い音を立てアザゼルの鼻が陥没し……すぐに何事もなかったかのように元に戻った。
「ごはぁっ」
俺の拳がアザゼルの鎧を砕き、そのまま鳩尾をえぐる。
「なっ、なぜっ! ぎっ!」
下から顎を殴り上げる。
アザゼルは身動きが取れないことに狼狽えているが、俺は構わず殴り続けた。
「大した回復力だな。殴っただけじゃ効かないか……」
アザゼルの防具は粉々になったが、本体は傷一つなくきれいなままだった。
「そろそろ終わらせようか」
俺が斬魔神刀に手をかけると、アザゼルが目を見開く。
「ま、待て! ぐふっ!」
「待つかよ」
斬魔神刀がアザゼルの心臓を貫く。
「がっ、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
傷口からおびただしい量の血とともに、黒い靄が流れ出した。
「きさまっ……こんなところで……この俺が……」
アザゼルの目から光が消える。そして、しばらくすると足元から塵になり、完全に消え去った。
そして――
アザゼルがいた場所からダンジョンが変異していく。
「終わったのか?」
「ししょー!!」
「わっ」
リーズが後ろから俺に抱き着いた。
「もうだめかと思いました……ししょぉぉ」
振り返ると、リーズはボロ泣きしていた。
「おまえ……なに泣いてるんだよ」
「だって……ししょーのスキルも効いてなかったじゃないですかぁぁ」
「私たちも動けなくて……ルゥさんもやられちゃうんじゃないかって……」
見ると、シルもぽろぽろと涙を流していた。
「シルまで……」
「でも、どうやったの? ……スキルは効かなかったんでしょ?」
一人だけ冷静なサリアが俺に問いかけた。
「ああ。効かなかったよ。アザゼルにはな」
「あっ」
サリアが察したように声を上げた。
「あいつの周りの空間を施錠したんだよ」
「そういうこと……。でも、よく思いついたわね」
「色々考えてるんだよ、これでも。上手くいくかどうかは賭けだったけどな」
「大したものね……」
「おい、いつまで抱き着いてるんだ。グランを起こして帰ろうぜ」
俺の背中に顔をうずくめているリーズに声をかける。
「……もうちょっと」
「リーズさん! 離れてください! もうっ」
シルがリーズを引っぺがした。
〘開錠〙
目を覚ましたグランが叫ぶ。
「なります! ってあれ?」
がばっと上半身を起こし、きょろきょろと周りを見回す。
「あれ? ゼルアさんは?」
……まったく、コイツは。
「ダンジョンを攻略して、次のダンジョンに向かったみたいだぞ」
「えっ!? 俺を置いて?」
「お前は『対の刃』のリーダーだろ? 何言ってんだ」
「そうだけど……ゼルアさん……」
「グラン。しっかりして頂戴。私たちはついていかないわよ?」
「なに!? ……それは困る。それじゃあ次はちゃんと断る」
「ぷっ……あははははっ!」
事情を理解していないグランを置いて、俺たちは皆で笑った。
※※※※※
「おかえりなさい」
「ルゥくんおかえり!」
「……ふん」
82階層の階段に戻ると、ルチアたちが出迎えてくれた。
「大丈夫だったか?」
「ええ。ここの階層はモンスターが出現しなかったので」
「ドキドキしてたけどね! ダンジョンが変化してルゥくんがやったんだってすぐに分かったよ!」
「なんとかなったよ。さ、帰ろうぜ」
俺の言葉にルチアが反応する。
「ルゥ、待って。このまま戻るのはあまりよくない……いえ、確実に面倒なことになります」
「あ……確かに。……どうしようか」
「ん? どうしたんだ?」
能天気なグランは何も分かっていないようだ。
「このまま外に出たら、教会の関係者につかまって、根掘り葉掘り聞かれるってことよ」
「あー、そりゃめんどいな」
さすが嫁。説明もばっちりだ。
「それじゃ、サリア先生。よろしく頼むよ」
「え? 私? 何をするの?」
珍しいな……色ボケか?
「こういう時こそ転移魔法だろ?」
「あっ」
サリアの顔が赤く染まる。
俺たちはそれをニヤニヤと見つめた。
「じゃあ、集まってちょうだい」
サリアが呪文を唱えると、光とともに魔法陣が現れる。
〘デバイン・ゲート〙
俺たちは眩い光に包まれた――
読んでくださってありがとうございます!
アザゼル本体に『施錠』は効きませんでしたが、周りの空間を施錠することはできるんです!(∩´∀`)∩
なぜ本体に効かなかったのかは、この先のお話をお待ちいただければと思います!m(_ _)m
それでは次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ




