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第八十八話 悪魔アザゼル

 次から次へと湧いてくるモンスターをなぎ倒しながら、俺たちは78階層にたどり着いた。


「ちょっと休憩するか……」


「やっとかよ……」


 俺以外の全員がその場にへたり込んだ。


「ししょー……相変わらず化け物ですね……」


「丸一日以上動いてるのに……凄すぎます」


「私が一番疲れてる自信あるよぉ……」


 リーズ、シル、カナエが順にぼやいた。


「ルチアは大丈夫か?」


「大丈夫ではありませんが、ほかの皆より戦闘回数が少なかったので……」


「キリエのお守りしてたもんな」


「……しね」


 ……さすがのキリエもいつものキレがないようだ。


「しかし、全然追いつけないなー」


「ゼルアさんか?」


「ああ。結構飛ばしてるつもりなんだけどな」


「おかげで俺たちはへとへとだぞ」


「お前……一番張り切ってたじゃねーか」


「モンスターが多すぎるんだよ!」


「ほんと、うんざりするわね……」


「結界の外にうじゃうじゃ集まってるよ……」


 カナエの言う通り、俺がスキルで張った結界の向こう側に、続々とモンスターが集まってきていた。


「……やっぱり、なんかありそうだな」


「なにがだよ?」


「いや、なんでもない」


 グランの問いかけを軽く流し、俺は結界の向こうのモンスターたちを施錠した。


 ※※※※※


 小一時間休憩し、俺たちはさらに奥へと進んだ。


 そして、82階層――


「ここだ」


 俺の左手の紋様が反応する。

 空気が肌を刺す感覚。

 ここに『影』がいる。


〘ホーリーグラウンド〙


〘アンチ・カース〙


 続けざまにシルがスキルを発動する。


「スキルがあっても体が重いぜ」


「私、震えが止まらない……」


 この中でも比較的レベルの低い、カナエとキリエはかなり辛そうだ。


「ルゥ。私たちはここで待ちます」


「ルチア……大丈夫か?」


「これでも結界師ですから。動かなければ大して疲労もありませんし」


「ごめんねルゥくん……まだ役に立てそうにないや……」


「気にするな。よくここまで頑張った」


「ありがと。ちゃっちゃと倒して戻ってきてね!」


「ああ。任せとけ。お前たちは大丈夫か?」


 俺は対の刃たちに視線を移した。


「当たり前だろ! ここまで来て置いてきぼりは勘弁だぜ!」


「ししょーの盾になりますよ!」


 おいやめろ。そもそも俺に盾は必要ない。


「大丈夫ですよ。私のスキルでちゃんと皆を守ります」


「そうね。ここまで来て敵の顔も見ずに帰るなんてできないわ」


 ……頼もしいな。


「それじゃ、行くか。……グラン。お前、気をしっかり持てよ?」


「は? どういうことだ?」


「……行けば分かる」


「おい、ちょっと待てって!」


 俺はグランの言葉を無視して歩き出した。


 最下層だけは『試練の塔』と同じ造りのようだ。


 まっすぐ伸びた通路を進むと、やがて視界が開けた。そして――


「待っていたぞ」


 そこにはゼルア……いや、アザゼルがいた。


 俺の隣でグランが小刻みに震えている。


「ゼルアさんですか!? 初めまして! 俺、グランって言います! 握手していただいていいですか!?」


 ……。


 パァンッ!


 グランの頭をはたくと軽快な音が鳴り響いた。


「お前! いきなりなにすんだよ!?」


「黙ってろ!」


 俺たちの様子を見たアザゼルは、愉快そうに笑った。


「クッ、アハハハッ! ……こうして実物を見ると、下僕を通して観るより愉快なものだなぁ」


「え? ゼルアさん?」


 ようやくグランもおかしいと気づき始めたようだ。


「そんなぁ。嬉しいです! 面白かったですか?」


 ってうそだろ!? ……マジかコイツ。


「アハハハハッ! お前、俺を笑い殺す気か? どうだグランとやら。お前は見込みがある。俺の仲間にならないか?」


 まずい!


〘施錠〙


 直感的に嫌な気配を感じた俺は、グランにスキルを使った。


 倒れ込むグランをサリアに任せ、俺はアザゼルを睨みつける。


「おい、俺の仲間をたぶらかすんじゃねーよ」


「あぁ残念。返事をすれば俺の仲間になったというのに……お前、本当にやっかいな奴だなぁ」


「随分と余裕じゃねーか。お前、自分の立場を分かってんのか?」


「強がりはよせ。効かないのだろう? お前のスキルが」


 ……くそったれ。

 奴の言う通り、さっきから何度『施錠』してもアザゼルは倒れない。

 俺のスキルが使えないわけじゃない。現に取り巻き連中は床に倒れ伏せている。

 どういうことだ?


「種を明かしてやってもいいが……お前は危険だからな。ここで死んでいけ」


 アザゼルが一瞬で俺の眼前に迫る。

 ――速い!

 俺の首を狙った手刀を、首を捻ってかろうじてかわす。

 アザゼルはニヤニヤと笑みを浮かべながら、急所を狙って鋭い突きを連続で繰り出してくる。

 なんだこいつ!?

 アザゼルのレベルは82。グランとほぼ同じなはずなのに……強い!

 俺は『斬魔神刀』を抜き、アザゼルを斬りつけるが――


 ギィンッ!


 アザゼルが抜いた漆黒の剣が受け止める。


 ギンッ! ガッ! キンッ!


 フロアに剣撃の音だけが鳴り響く。


 キィンッ! ギィンッ! ガッ! シュッ!


 確かに強いが……剣の腕は俺の方が上らしい。


「ちっ」


 俺の斬撃がアザゼルの頬をかすめた。

 アザゼルはたまらず距離をとる。


「この状態の俺に傷をつけるとは……お前、本当に人間か? それにその剣……」


「失礼な奴だな。人間やめたつもりはねーよ」


「どうだ? 俺と一緒にこの世界を支配しないか?」


「支配? 破壊の間違いじゃねーのか?」


「ふっ。他の奴らは知らんが……俺は強欲でなぁ。そんな勿体ないことをするつもりはない」


 ……言われてみればそうだな。それぞれが好き勝手やってるわ。


「支配してその後どうすんだよ?」


「そうだなぁ。壊して、増やして、また壊す。楽しいだろう?」


「楽しくねーよ!」


 ガギィン!


 俺の斬撃はまたしてもアザゼルに防がれた。


「やれやれ。俺にここまで言わせてなお拒絶するとは……やはり無理か」


 アザゼルはそう言うと、俺の後ろに視線を移す。


「確かにお前は強い……。だが、お前の仲間はどうだろうな?」


「……てめぇ。いつまでも調子に乗ってんじゃねーぞ!」


 俺の中の何かがはじけた。

読んでくださってありがとうございました!


ゼルア=アザゼル!グランは全く気づきませんでしたが、読者様の中にはうっすらとお気づきの方もいらっしゃったのではないでしょうか?( *´艸`)

そしてなぜか『施錠』が効かない相手!ルゥはこのピンチをどう切り抜けるのか……!( ゜Д゜)

それでは次話をお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ

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― 新着の感想 ―
読了しました!! ゼルア=アザゼルだったんですかΣ(゜д゜;) 確かに名前似てる……全く気づかなかった!! そして何故かスキルが効かないだと!?!? ルゥ、ピンチ!? いやいや、ルゥはスキルなくて…
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