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第八十六話 黒い靄

〘アンチ・カース〙


 シルが俺たち全員にスキルを発動した。


「ありがと。そういえば、コロッセウムの時、あそこにいた全員にかけてたよな?」


 あれだけの人数にスキルを発動するなんて、落ち着いた今考えると少し異常だった。


「え……はい」


「ほんとびっくりしたよ。凄いな」


「えへへ、ありがとうございます」


 俺の言葉にシルは頬を赤らめた。


「シルって、ほんとにハイプリーストなのか?」


 グランのツッコミにシルはびくっと肩を揺らす。


「ほんとにって……そうですよ?」


「グランさん! シルをいじめるのやめてください!」


 怯えた子どものようにグランを見上げるシルの前にリーズが割り込んだ。


「いじめてねーよ! えっ何その目!」


 皆からジト目で見られたグランはタジタジだ。


「緊張感ないなー。一応ここ、七大ダンジョンだぞ?」


 俺のツッコミに、全員が苦笑いを浮かべた。


「それにしても……造りは塔にそっくりだけど、構造は違うんだな」


「そうだね! 塔は一直線なのに、結構道が分かれてる」


 俺たちがいる四角形のフロアから、正面と左右にそれぞれ通路が伸びていた。


「どこ選ぶ?」


 立ち直ったグランが俺に尋ねる。


「そうだなぁ……。お客さんが待ってるみたいだから、顔を出してみようぜ」


「お! バトルだな!」


 途端にうれしそうな顔をするグラン。


 左の通路の先からは、複数の気配と殺気が漂っていた。


 ※※※※※


 左の通路には、いくつもの罠が仕掛けられていた。


「あ、そこ毒が撒かれてるから避けてね。グランさん! そこ触らないで!」


 カナエがいち早く罠を察知してくれるので、まったく影響はないのだが……。


「罠って新鮮だな」


「そうだね、ダンジョン内ではあまり見かけないかも……」


「んじゃ、お客さんが仕掛けたってことかな」


「たぶんね。罠自体もまだ新しいし」


 軽口をたたきながら進むと、開けた空間が現れた。


 正面に三人。回り込んだのか、あとから来たのか……後ろにも三人いるな。


 前方の三人は教会で見たローブをまとっていた。

 俺は声が届く位置まで移動し、確認する。


「おーい! なんで俺たちを殺そうとするんだ?」


 俺の問いかけに、一瞬、目の前にいる奴らのローブが揺れた。

 え、殺気飛ばしまくってんじゃん。こんなんで動揺するなよ……。

 俺が呆れていると、返事があった。


「我々の計画の邪魔だ」


 真ん中の奴がぽつりとつぶやくと、三人はそれぞれの得物を取り出し、俺たちに向かってきた。


「ルゥは休んでろよ!」


「ししょー! 私の成長も見てくださいね!」


〘プロテクション〙


 シルが俺たちに身体強化のスキルをかける。

 

「やばかったら手を出すからなー」


 ……まぁ、アレくらいの相手なら大丈夫だろ。


 俺とルチア、キリエは床に座ってグランたちを見守った。


「ルゥ、後ろの奴らはどうしますか?」


「んー、ちゃんと気づいてるみたいだから、どう対応するか見てみようぜ」


「分かりました」


 ルチアは目を細めて微笑んだ。


 前方の三人の武器は斧、短剣、そして杖のようだが……。


〘フレイム・バインド〙


 杖を持った奴がスキルを発動すると、轟々と燃え盛る炎の縄がグランに迫った。


「じゃまくせえっ!」


 一閃。グランは持っていた刀を振りぬき、炎の縄を消し去った。


 ……あいつ、俺に似てきたな。


 グランは勢いそのままに、杖の奴に接近し、刀の峰で薙ぎ払う。


「がはっ!!」


 勢いよく壁に打ち付けられた杖の奴は、床に倒れ伏した。


 あ、また靄(もや)出てる。


〘施錠〙


 俺がスキルで靄(もや)を消すと同時に後方の通路から人影が飛び出してきた。


「遅いぞ!」


 斧の奴が苛立った声で怒鳴る。


「残念! そこで見ててね!」


〘影縫い〙


 カナエが懐から取り出したクナイを、後方の三人に投げ放つ。


 カカカッ!


 クナイが三人の足元の影に刺さると、三人は動きを止めた。


 へぇ……面白いスキルだな。完全に動きが止まってるじゃん。


〘アース・バインド〙


 サリアのスキルで床から無数の石の蔦が出現。ちょこまかと動き回る短剣の奴を、その蔦が絡め取った。


「くそが!」


〘竜巻戦斧〙


 苛立ちが頂点に達したのか、斧の奴がスキルを発動。高速で横回転しながらリーズに迫る。


 ガギンッッ!!!


「勢いが足りませんよ!」


〘シールド・インパクト〙


 真正面からスキルを受け止めたリーズは、スキルを発動して斧の奴を吹き飛ばした。


 ドンッ! ガッ! ズシャーッ!

 

 斧の奴は跳ねるように床を転がり、動きを止めた。


 ……死んでないよね?


 俺は靄(もや)を消しつつ斧の奴を心配した。

 

「い、いやだ! 死にたくない!」


 その光景を見ていた短剣の奴が、急に悲鳴を上げる。


 いや、死んでないと思うよ? 多分。って!?


 なぜか短剣の奴と後方の三人から黒い靄(もや)が湧き出している。


〘施錠〙


 慌ててスキルを発動すると、靄(もや)は跡形もなく消え去った。


「……助かった、のか?」


 短剣の奴は顔をぐしゃぐしゃにしながら、呆然としている。


「おいお前! ちょっと話せるか?」


 俺は短剣の奴に声をかけた。

読んでくださってありがとうございます!


仲間の成長を描くお話は楽しいですね!ヾ(≧▽≦)ノ

カナエも大活躍で頼もしい限りです( *´艸`)

そして謎の靄……もやもy


それでは次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ

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― 新着の感想 ―
読了しました!! シルやグランの成長が目に見えてきましたね!! めちゃくちゃ良い(*´ω`*) グランやっぱりかっこいい!! 大好きなキャラの1人なので、めちゃくちゃ嬉しい!! 次回も楽しみにして…
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