第八十五話 神々の塔
「一日に二度も訪ねてくるとは……なかなか珍しいこともあるものだな」
枢機卿はあきれた顔でそう言った。
「大変申し訳ございません。猊下、私たちに『神々の塔』に入る許可をいただけないでしょうか」
ルチアが代表して申し出た。
「許可か……一応教会の基準があってな。一つ、頼みを聞いてくれないか?」
「畏まりました。どのような内容でしょうか?」
「バビロムの南に『カクラダ』という村があるのだが……少し前にモンスターに襲われたという報告が入ってな。君たちに調査と討伐を依頼したい」
それくらいならすぐ終わりそうだ。
俺はルチアに目配せした。
「承ります。それではすぐに出発いたします」
「ああ。よろしく頼んだぞ」
※※※※※
「カクラダまではどれくらいかかるかな?」
「半日で到着する。黙って座ってろ」
……お前に聞いたんじゃないんだがな?
トレインカーを運転するキリエが、耳ざとく俺の言葉を拾ったようだ。
「それまで休むか」
「はい。どうぞ休んでいてください」
ルチアの言葉に甘え、俺はソファーに座って目を閉じた……。
※※※※※
「ルゥ。起きてください」
「ルゥくん! 着いたよ!」
「んぁ? もう着いたのか?」
「ししょー、半日寝てましたよ?」
「だいぶお疲れみたいですね……」
背伸びをするとポキポキと軽快な音が響いた。
「んー! すっきりした! ありがとな。んで、カクラダの様子はどうだ?」
「今、グランさんとサリアさんが様子を見に行ってくれています」
「そかそか。それじゃあ、俺たちも向かおうぜ」
「「「はい」」」
外に出ると、辺りは薄暗く、ぽつりぽつりと雨が降っていた。
……雨か。珍しいな。
少し歩くと村を囲う柵の前で、グランとサリアが何かを話している姿が見えた。
「お待たせー。どうだった?」
「お、ルゥ。起きたのか。いやーそれがさー……」
「どうした?」
「モンスターは倒したんだけど……人がいないんだよ。……死体すらなかった」
「……食われたとかじゃなくて?」
「その形跡もなかったわ」
サリアが首を振った。
「もう一度確認してみようぜ」
村に入るとモンスターの死骸がそこら中に転がっていた。
「おぉ、結構いたんだな」
「そうだな……数は多かった。強さはそうでもなかったけどな」
グランたちの言ったとおり、外で人が襲われた様子はなさそうだ……。
俺たちは手分けして村中を調べたが、結局、生存者も遺体も見つからなかった。
「これって……ヴォルムスの時みたいに、人間がモンスターに変化したってことじゃない?」
顔を青くしたサリアが、不安げにそう言った。
「……村の住人全員がか?」
「そうとしか考えられないもの……」
「確かに、被害者がいないのは変だよな……。なんにせよ、俺たちの仕事は調査と討伐だからな。一旦戻って報告しようぜ」
俺の言葉に皆は頷いた。
※※※※※
「早かったな」
「急いで戻ってまいりました」
俺たちの訪問に、枢機卿は驚きを隠さなかった。
「まさかこんなに早く戻ってくるとは思わなかったぞ。ちゃんと村まで行ってきたんだろうな?」
「もちろんです。必要であれば討伐したモンスターを提出いたしますよ? 数は多いですが」
「……全部で何体だった?」
「108体です」
「そうか……。他に報告することはあるか?」
「村に住人はいませんでした」
枢機卿は深いため息をつくと、天井を仰ぎ見た。
「……カクラダもか。分かった。よくやってくれた。約束通り『神々の塔』に入ることを許可しよう」
枢機卿は机の引き出しから許可書を取り出すと、ルチアに渡した。
「ありがとうございます」
「ただし、塔で何があっても教会は責任を持たない。入手したモンスターの素材は全て教会が買い上げる。この二点は承知しておいてくれ」
「畏まりました」
※※※※※
「許可書を持ってきたぞ」
『神々の塔』の入り口でグランは教会関係者に許可書をかざし、ドヤ顔をした。
……そういうとこだぞ、グラン。
「……確認しました。どうぞお通りください」
二人の教会関係者は左右に退き、魔法陣の前を空けた。
「ごくろう」
なでそんなに得意げなんだよお前……。
俺たちはグランの後に続いて魔法陣に足を踏み入れた。
視界が歪み暗転する――
「ここは……」
俺たちが転移した場所は、『試練の塔』と見間違うほど……いや、どう見ても同じ造りのダンジョンだった。
ただ一つ違ったのは、仲間がここにいることだった。
「ここ、試練の塔じゃん!」
「ほんとですね! 皆と入れるなんてなんか新鮮です!」
「私、皆とダンジョンに入るのも初めてだよ! ワクワクする!」
グラン、リーズ、カナエがはしゃいでいる。
そういう俺も、皆と『試練の塔』に来たような気分になって、少しワクワクしていた。
読んでくださってありがとうございます!
紆余曲折あって、神々の塔に突入です!(*‘∀‘)
今さらですが試練の塔はソロでしか入れないのです(;^_^A
なので皆にとっては新鮮なんですね( *´艸`)
それでは次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




