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第八十四話 枢機卿

「それでは私はここで……」


 案内役の衛兵は、たいそう名残惜しそうに何度もルチアを振り返りながら去っていった。


「では、参りましょう」


 グラト教会の受付までやってきた俺たちは、司祭服を身にまとった別の案内役の後ろに続いた。


 長い廊下を歩き、たどり着いたのは豪華な装飾が施された扉だった。

 扉の横に備えられた呼び鈴を鳴らすと、ほどなくして扉が開く。


「どうぞ、お進みください」


 司祭服の案内役は、丁寧に腰を折り中へ入るように促した。


 部屋の正面に高そうな木製の机、その手前に応接セットが置かれている。ギルマスの部屋に似た造りだ。

 机に座っていた長髪の男が立ち上がり、こちらに近づいてくる。


「おお、よく来たな、ウルと言ったか? カイムはどうした?」


 ……思ってたんと違う。

 そのフランクな口調は、聖職者というよりも冒険者のイメージだ。


「猊下、お初にお目にかかります。私はルミナと申します。此度、カイム伯爵が亡くなられましたので、お伝えに来た次第です」


 うん、ルチアに任せよう。いやルミナか。

 俺はスッと一歩下がり、唖然と見守っている他のメンバーに混ざった。


「なに? カイムが? 老衰にはまだ早かろう。何があったか教えてくれるか?」


 枢機卿はそう言うと、ソファーに座るよう促した。

 しかし流石に全員は座りきれなかった。

 グランに押し出された俺は、仕方なくルチアの隣に座る。

 くそっ! 俺もソファーの後ろに立っていたかった!


「カイム伯爵は、ブルグント帝国で起きた事件に巻き込まれて亡くなりました」


「……事件?」


「人が……モンスターに変化するという恐ろしい事件です」


「なに!? それはどういうことだ!」


 枢機卿が声を荒げる。


「申し訳ございません。私たちも詳しいことは……」


「ああ……すまなかった。しかし、人間がモンスターに?」


「ジークフリード陛下によれば、カイム伯爵はオークに変化したそうです」


「そうか……。カイムは従順なイーリス教徒だった。惜しい人材を亡くしたものだ」


 ……このおっさんとは価値観が合いそうにないな。面白そうだけど。


「しかし、ブルグント帝国も大変だろう……我が国からも支援を送らねばな」


「痛み入ります」


「わざわざ知らせに来てくれて感謝する。礼を言うぞ」


「いえ、それでは失礼いたします」


 ※※※※※


「はぁ」


 教会を出ると自然とため息がこぼれた。


「お疲れ様でした」


「いやいや、こっちのセリフだよ」


「そうだよ! ルチアさん凄かったね!」


「慣れてますから」


 カナエの言葉にルチアは微笑んだ。


「しかし、何も起きなかったなー」


 グランの言葉に俺も頷いた。


「恐らくですが……アザゼルは教会と直接関わりを持っているわけではないのでしょう」


「あー、そうか、アザゼル側が利用してるだけってことか」


「はい。人間に『種』を植え付けて使い捨てるやり口を、教会が受け入れるとは思えません」


「そうだよなー。ってかどうやって種を植え付けたんだろうな」


「……教会の内部、上位の人間に眷属が潜んでいる可能性はありますね」


「種か。キリエ、何か知らないか?」


 俺はかつて『進化の秘宝』を作り出したキリエに話を振った。

 ……しかし返事はなかった。


「キリエ。知っていることがあるなら話しなさい」


「おねぇ様♡ でも、ワタシにもよく分からなくて……。ワタシと同じように『進化の秘宝』を作ろうと研究していたゴミ共が、種を劣化させたことは確信しているのですが、誰がそれを植え付けたかまでは……信者に怪しまれず植え付けるとなれば、司教クラスではあると思いますけど。ちなみに、劣化した種でもある程度の能力向上は見込めますので、それを誇張して信者どもに植え付けたのではないかと、キリエは推察しまーす♡」


 ……こいつこんなにしゃべるんだ。


「そう。ありがとう」


 キリエの目がハートになっている。

 ……よく飼いならしてるなぁ。


「まぁいいや、とりあえず『神々の塔』へ向かおうぜ」


 教会のことは教会が何とかするだろ。

 俺たちの仕事はダンジョンを封印することだ。


 ※※※※※


「あれ? ここは冒険者ギルドの管轄じゃないのか……」


 塔に入る魔法陣の前に、教会の法衣を着た男が二人立っていた。

 ……嫌な予感がする。

 いつも通りグランが冒険者証を見せ、入場の意思を伝えるが……。


「冒険者証では入ることができません」


 バッサリ断られた。


「え? 入れないってどういうことだよ?」


「ですから、『神々の塔』は教会の許可がなければ入れません」


「はぁ? その許可ってどうやってもらうんだよ?」


「司祭以上の方に認められれば、許可が下ります」


 グランと教会関係者のやり取りを眺めつつ、俺は心の中でため息をついた。

 さっき許可もらっとけば良かったなぁ……。

読んでくださってありがとうございます!


ここでルチア、いえルミナが大活躍!笑

ルゥの苦手なところをカバーしてくれる仲間がいるのは作者的にも助かります!

そして、知らなかったんだからしょうがないよね……許可(。-∀-)笑

ダンジョンの管理も国によって違うようです( ;∀;)

それでは次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ

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― 新着の感想 ―
読了しました!! ルミナが大活躍ですね!! 何もなかった……それこそが少し怪しさ、不穏ささえ感じますが、一旦は大丈夫そうですね(⌒-⌒; )!! 塔に入るのにも一苦労か……まだ一悶着ありそうですね!…
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