第八十二話 イーリス教国
「あら? ルゥくん、難しい顔をしてるわね」
「ウリエルさん……。実は――」
俺はウリエルに事情を説明した。
「ルゥくん、ちょっと失礼するわね」
話を聞き終わったウリエルは、無表情でそう言うと俺の頭に手をかざした。
「アザゼルの『原罪』は、あなたたちが『神々の塔』と呼んでいるダンジョンに在るわ。一刻も早く、封印してちょうだい」
「わ、わかりました」
ビリビリと震える空間で、俺は素直に返事をした。
※※※※※
「ルシフェルー、アザゼルなんだけどさー……って何やってんの?」
「あれ? ルゥ、どうしたの?」
「いや、俺が聞いてるんだけど」
俺が部屋に転移すると、ルシフェルは床に胡坐をかき、目を閉じていた。
「んー、ちょっとね、力を蓄えてた」
「へぇ……疲れてるのか?」
「ルゥのために力を使ったからねー……ちょっと回復しておかないとと思っただけだよ」
「えっ? ……なんか、ごめん」
俺が謝ると、ルシフェルはやわらかく微笑んだ。
「気にしないで。それで? どうしたんだい?」
「あ、そうだ。アザゼルの能力についてなんだけどさ――」
「なるほどねー。僕が知ってるアザゼルの力を、より強くしたって感じかな。ほんとサムヤサの奴……」
「もう倒した奴のことで怒らないでくれよ。それじゃあ、眷属を通してこっちの状況が分かるってのは、大体合ってるんだな?」
「うん、間違いないと思う」
「あと、『種』を植え付けられた人間がモンスターになるっていうのは……」
「『種』を作ったのはサムヤサだね。それをアザゼルが利用したんだと思うよ」
……はぁ。ルシフェルじゃないけど、もう一度滅ぼしたいくらいにはムカつくな。
※※※※※
城の会議室で再び作戦会議が始まった。
「アザゼルの原罪は『神々の塔』にあるんだってさ」
「神々の塔か……」
俺の言葉で室内の空気が重くなる。
「ん? どうしたんだ?」
「いや、厄介な場所だと思ってな」
「何が?」
「塔のある『イーリス教国』は、イーリス教の総本山でな……」
そのまま国の名前なのかよ。
「それは確かに厄介そうだな」
「基本的にイーリス教徒以外は国境を越えることすらできんのだ」
……。
「あぁ、そこは大丈夫だよ。な? サリア先生」
「だから先生じゃないって……はぁ。もういいわ。ええ、大丈夫よ」
「どういうことだ?」
「サリア先生は転移魔法が使えるんだよ」
「転移魔法……だと?」
ジークフリードは目を見開いてサリアを凝視した。
「うちの仲間に手を出すなよ? ついでに言っとくとグランの嫁だ」
「嫁じゃないわよ!」
そんなに否定しなくても……グランが寂しそうな顔してるじゃん。
「手を出すとかそういう話ではない。転移魔法を使える人間なんて、国にとっては脅威でしかないのだ」
「別に悪いことするわけじゃないからいいだろ。俺たちを信じろよ」
「ぐっ……信じてはいるが……」
「それとも、俺と戦争でもする気か?」
「……はぁ。分かった分かった。お前に任せる。しかし、問題はそれだけではないだろう?」
「何が?」
「今回の事件で『種』を植えられたのはイーリス教徒だっただろう。何が起こるか想像がつかんぞ」
「ああ、そういうことか。別に街に寄るつもりはないからさ、大丈夫だろ?」
……。
「お前たちも大変だな……。それでは地図と食料を用意するから、持っていくといい」
ジークフリードは俺から視線を外し、皆に向かってそう言った。
※※※※※
俺たちはジークフリードたちに見送られて城を出発し、ヴォルムス郊外の人気のない草原まで移動した。
「よいしょ」
巾着からトレインカーを取り出し、皆で乗り込む。
「それじゃ、サリア先生。よろしく」
「はいはい」
ため息をつきつつ、サリアは杖を構え、呪文を唱え始めた。
〘デバイン・ゲート〙
一気に消耗したサリアを、グランが抱きかかえた。
「ありがとな。様子を見てくるから休んでてくれ」
「そうさせてもらうわ」
ソファーに横になったサリアをグランに任せ、俺たちは外へ出た。
「ここは、どこだろうな?」
「そうですね、地図からすると、この辺りでしょうか」
ルチアが地図を広げ指をさす。
「ここから『神々の塔』までどれくらいかかるかな?」
「半日だ。くそ虫」
……キリエが丁寧に教えてくれた。
「それじゃ、とっとと終わらせて帰ろうぜ」
「とっとと終わりますかねー? ししょーのことだからむぐっ」
「おい、やめろって言ってるだろ!」
俺はリーズの口を慌ててふさいだ。
「あー、いいなーリーズさん」
カナエ、何がだよ。シルもなんだその目は。……ルチアの笑顔がなんか怖い。
新天地でも何一つ変わらない仲間たちの様子に、俺は頼もしさを感じた。
読んでくださってありがとうございます!
舞台がブルグント帝国からイーリス教国に変わりました!(∩´∀`)∩
ここから新章「イーリス教国編」のスタートとなります!
アザゼルとの対決までどういう展開になるのやら……(。-∀-)まだ書けてないデス(笑)
それでは次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




