第八十一話 苦労人
ヴァンパイアを守るように、対の刃に攻撃をしかける冒険者たち。
その目は赤く濁っていた。
……操られてんのか? めんどくさいな。
〘施錠〙
俺はヴァンパイアにスキルを発動する。
ドサッ!
ヴァンパイアが倒れると、四人の冒険者も意識を失い、その場に崩れ落ちた。
「簡単に状況を説明してくれ」
俺はサリアに声をかける。
「それが、急に街中にモンスターが現れて……私たちも状況を把握できてないの」
「そうか。とりあえずモンスターを掃除しないとだな。魅了や精神異常には気をつけろよ!」
「もうかからねーよ!」
……もう?
その場から走り去る俺の耳に、グランの声がかすかに届いた。
街中のいたるところで戦闘が行われていた。出現しているモンスターのレベルはバラバラだ。
「ほんと何が起こってるんだ?」
討伐数が百を超えたところで、ようやく街は落ち着いてきた。
「はぁ。一応確認しに行くか」
俺は城を目指した。
「ここもか……」
ジークフリードの城も例外ではなかったようだ。城の中から煙が立ち上っている。しかし、街ほど混乱している様子は見られなかった。
俺が近づくと門兵は警戒態勢をとったが、すぐにそれを解いた。
「中の状況は分かる?」
「いえ、ここからでは……騒ぎ自体は少し前に収まったのですが」
「外から侵入したわけじゃないんだ?」
「はい、突然城内が騒がしくなったのです」
「ありがとう。入るね」
「はっ!」
門を通り抜け城内に入ると、あちらこちらにモンスターの死骸が転がっていた。
「中から突然か……」
俺は謁見の間に急いだ。
「ジークフリードー。いるかー?」
負傷者を横目に、扉が開け放たれた謁見の間に入る。
しかしジークフリードはいなかった。
「ここじゃないのか……」
廊下に出て、負傷して座り込んでいた衛兵に声をかける。
「ジークフリードがどこにいるかわかる?」
「おそらく……会議室ではないかと……」
「ありがと。これ、使って」
俺は巾着から回復薬を取り出し衛兵に渡した。
「えっ!?」
戸惑う衛兵を残し、俺は会議室を目指した。
廊下にいる人たちに道を聞き、目的の部屋にたどり着く。
「ジークフリードー」
扉を開けると、部屋の中に今度こそジークフリードの姿があった。
「ルゥ! ……早かったな」
「急いで帰ってきたんだよ。何が起きたんだ?」
「それがなぁ……。爺、頼む」
こいつ……また老騎士さんに丸投げしやがった。
ほら、ジト目で見てるじゃん。
「こほん。現状、我々が把握しているのは、人が突然モンスターに変化したということ。その一点のみです」
「人がモンスターに!?」
「そうなのだ。この城にいた兵たちや……数人の貴族が、急にモンスターに変化してな……」
そんなことが……。今聞いたことを呑み込めずに固まっていると、ジークフリードが俺に問いかけた。
「悪魔の仕業だと思うか?」
「……それ以外には考えられないな。ガルマドラに聞くのが一番早いんじゃないか?」
「そうだな……。では行こうか」
俺たちはガルマドラが捕らえられている『箱』へ移動した。
箱に入り、相変わらず椅子に縛り付けられているガルマドラの首から上を『開錠』する。
俺は声をかけようとしたジークフリードの肩を叩き、意識を取り戻したガルマドラを挑発してみた。
「よう。お前らの計画はすべて潰してやったぞ。残念だったな」
「は? はっはははっ! 何を言っている! アザゼル様の崇高な計画が、お前ごときにつぶされるわけがないだろう!」
「できるんだよ。俺には。大体、人をモンスターに変えるだけだろ? たいしたことないよなぁ」
「貴様ぁっ! アザゼル様を愚弄するとは! あのお方が何年かけてこの計画を進めてきたと思っている! イーリス教徒のゴミどもに『種』を植え付け、この街を絶望にたたき落とし、あのお方にお力を捧げる計画を――お前ごときが!!」
……はい、ご苦労様。
〘施錠〙
「ルゥよ……お前なかなかえげつないな」
再び動きを止めたガルマドラを見ながら、ジークフリードはぽつりとつぶやいた。
※※※※※
街の混乱も完全に収まり、対の刃も城に戻ってきた。
俺たちは会議室に集まり情報を共有する。
「何がきっかけだったんだろうな」
「もしかすると……ルゥさんのいないときを狙ったのかも……」
「え?」
何を言い出すんだサリア先生。
「だって、タイミングが良すぎるじゃない……。街に他の眷属が潜んでたなら、ルゥさんの動きも把握できたんじゃない?」
「いや、そもそも俺がいない時を狙う必要が――」
「「「あるでしょ」」」
……皆に否定されてしまった。
「おい、どうしてくれるんだ。お前のせいだぞ?」
俺はジークフリードに文句を言った。
「なっ! それはお前がカイムの挑発に乗ったからだろう!」
「面白がって煽ってたじゃねーか!」
「こほん。お二人とも、今はそんな子どもみたいな言い合いをしている時ではありませんぞ?」
老騎士さんに怒られてしまった……。
「あー、そういえばそのカイムだが……あいつもオークに変化したぞ」
「え? マジで?」
「ああ。俺の目の前でな」
「……そうか」
ルチアにつぶされる前に消えちゃったか……。
俺は心の中でカイムを哀れんだ。
読んでくださってありがとうございました!
ガルマドラ……ちょろいな( ̄▽ ̄)笑
しかし、人間をモンスターに変えるとは、アザゼルやることえげつないですね(;'∀')
次話から新章に突入します!引き続きお楽しみいただければ幸いですm(_ _)m




