第八十話 ヴォルムス動乱
「ってなわけだ」
「また新しい悪魔かよ……」
城に戻り、皆に情報を共有すると、うんざりした口調でグランがつぶやいた。
「眷属とはな……。悪魔以外にも気を回さなければならないのか……」
ジークフリードが頭を抱えている。
「あ! そういえば、コロッセウムで『アンチ・カース』を使っただろ? あれ、どうしてだ?」
俺はシルに問いかけた。
「あ、えっと……なんだか七大ダンジョンに入った時と同じような、いやな感じがして……」
へぇ……気づかなかった。
「で、なんでグランは大丈夫だと思ったんだ?」
「ん? ……シルがアンチ・カースを使ったから」
…………。
「は?」
俺はグランを睨みつけた。
「え? なんだよ……」
「お前な、アンチ・カースを使ったからって、あの身代わりみたいな現象が無効になるとは限らないだろ?」
「なったから良いじゃん」
マジかコイツ……。
「あー……結果的にアンチ・カースが効いたってことは、『身代わり現象』は呪いに近いってことでいいのかな? サリア先生?」
「先生じゃないから。でも、そういうことだと思うわ。悪魔の眷属として、呪いの力を使ったって考えるのが妥当ね」
「今後の対策としては、アンチ・カースを使いまくるしかないのか?」
俺の言葉にジークフリードが絶望の表情を浮かべる。
「いえ、聖水を撒くことで対応できると思います。量は必要ですが……」
シルの言葉にジークフリードはほっと胸をなで下ろした。
「よし。それじゃあ、俺は『狂気の沼』を封印してくるから、街の守りを任せていいか?」
「えー……」
グランが不満の声を上げる。
「時間がないんだから我慢してくれ。アザゼルのダンジョンの時は頼むからさ」
「わかったよ。早く終わらせて戻って来いよ」
「ああ」
俺とグランは拳を合わせた。
※※※※※
俺は休む間もなく城を離れ、狂気の沼へ向かった。
ヴォルムスから山を一つ越え、森を抜けると、おどろおどろしい気配を放つ大きな沼地にたどり着いた。
周囲の木々は枯れ、血のように赤黒い沼からは、ぼこぼこと気泡が沸き上がっている。
狂気の沼に入る魔法陣は、鉄で作られた柵に囲われ、その門の前に二人のギルド職員が立っていた。
……こんなところで仕事するギルド職員も大変だな。
俺は心の中で職員を労いつつ、二人を『施錠』した。
※※※※※
「なんだ……これ」
いつもの調子でサクサクと階層を進んでいた俺は、36階層で奇妙な死体を見つけた。
一か所にかたまった四体の死体。どの死体も装備を身に着けておらず、裸の状態で二体ずつ折り重なっている。
死体は上から何かに踏まれたように、床にめり込んだ状態でつぶれていた。
「ここで何が起きたんだ……」
俺の口からこぼれたつぶやきに、答えを返す者はいなかった。
69階層に入った瞬間、俺の左手の紋様が反応した。
「ここか」
俺は速度を上げて最奥を目指す。
そして――
影が目に入った瞬間。
〘施錠〙
〘施錠〙
スキルを二度発動した。
ギィャァァァァァァァァァッ!!
影は塵となって消え失せ、そこを始点にダンジョンが造り替わっていく。
「よし、終わったー」
俺は一度背伸びして体をほぐし、出口を目指した。
※※※※※
帰り道、山頂からヴォルムスを見下ろすと、街のところどころから煙が上がっていた。
「おいおい……。何が起こってるんだ?」
俺は全力で街へ向かった。
ヴォルムスへたどり着くと、街全体が混乱に包まれていた。
街から逃げようとする者、頭を抱えてうずくまる者、そして、おびただしい数のモンスターと戦う者。
「どうしてここにモンスターが?」
「うわぁぁぁ!!」
戸惑う俺の目に、『キラーパンサー』に追われる男の姿が飛び込んできた。
ちょうどいい。
男が俺の横を走り抜ける。
俺に狙いを変えたキラーパンサーが勢いよく突っ込んでくる。
「よっと」
キラーパンサーの正面に立ち、真っすぐ縦に剣を振り下ろす。
バシャッ!
左右真っ二つに斬り裂かれたキラーパンサーは、勢いそのままに俺の後ろで血の花を咲かせた。
「おい、大丈夫か? 何があった?」
路地の隅で震えていた男は怯えた目で俺を見て、震えながら首を振った。
「とりあえず街から離れろ。ここにいるよりは安全だ」
俺はそれだけ伝え、街中に湧いたモンスターを狩り始めた。
視界に映ったモンスターを片っ端から斬り捨てて街中を進んでいると、ひときわ大きな破壊音が耳に入った。俺はすぐさま進路を変える。
そして――
「グラン!」
そこで対の刃が対峙していたのは、一体のヴァンパイアと、冒険者らしき四人の人間だった。
読んでくださってありがとうございます!
グランの性格はルゥにもどうにもできないようです( *´艸`)
結果オーライ!(∩´∀`)∩
そして七大ダンジョンをさくっと攻略してしまうルゥの強さ!作者泣かせですね……(ノД`)・゜・。
ヴォルムスで何が起こったのか!次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




