第七十九話 アザゼルの影
「ルゥよ、ガルマドラが動かなくなったのは、お前のスキルか?」
ガルマドラがいる牢へ向かう途中、ふいにジークフリードに問いかけられた。
「ん? そうだけど……説明してなかったっけ?」
「されてないな」
ジークフリードは横目で俺を睨みつけた。
「ごめんごめん。俺は『施錠』と『開錠』の二つしかスキルを使えないんだけどさ、なんでも施錠できて、なんでも開錠できるんだよね」
「ちょっと、何を言ってるか分からんな」
「説明が難しいんだよ。まぁ、見たほうが早いさ」
城の地下へ降りていくと、両側に扉が配置された通路が続いていた。
一番手前にある、ひときわ立派な扉の前に、上等なローブをまとった初老の男性が立っていた。
「カルマ。ご苦労だな」
ジークフリードの言葉に、カルマは静かに頭を下げた。
「ガルマドラの『箱』を開けてくれ」
「畏まりました」
カルマは先頭に立ち、通路を奥へと進んだ。
『十九』と記された扉の前で立ち止まると、扉――いや、部屋全体にかけられていた結界を解除した。
「ご苦労だった。また声をかける。戻っていてくれ」
「はっ!」
部屋に入ると、椅子に縛り付けられた状態でガルマドラが置かれていた。
そうだ。開錠する前に……。
「ちゃんと変なもん仕込んでないか調べたよな?」
「当然だろう。隅々まで調べさせたぞ」
「なら大丈夫か。んじゃ、よく見てろよ?」
俺はガルマドラの首から上を『開錠』した。
少しするとガルマドラは目を開き、いきなり叫びだした。
「アザゼル様! 我が身を捧げます! どうか御身の糧に!」
するとガルマドラの胸あたりに黒い靄のようなものが現れた。
〘施錠〙
俺はすぐさま黒い靄を施錠する。
…………。
「なぜだ! なにが起きた!? アザゼル様! 私の――」
〘施錠〙
俺は再びガルマドラの首から上を施錠した。
「うるさいやつだな」
「ルゥよ。今、何が起きたか説明してくれるか?」
ジークフリードは眉間をもみほぐしながら俺に質問した。
「何って、見たままだけど?」
「見て分かれば聞いていない」
「うーん、とりあえず、ガルマドラにかけていた『施錠』を一部分だけ『開錠』したんだよ。そしたらあいつ、物騒なこと叫びだしただろ?」
「そうだな」
「それで胸のあたりに黒い靄が現れたから、俺のスキルで封印した」
「なるほど」
「そしたらガルマドラが焦ってまた騒ぎ始めたから、もう一回スキルをかけなおしたって感じだよ」
俺の説明を聞いたジークフリードは、腕を組んで天井を見上げた。
「少し、整理する時間をくれ……」
俺は10分待たされた。
「ルゥのスキルが規格外だということは受け入れた。それで……胸の黒い靄は何だったと思う?」
「んー……ガルマドラが『アザゼル』って叫んでただろ? 多分悪魔の『権能』か何かだと思う」
「悪魔の……権能か……」
「耳が痛い話だな?」
「うるさい。はぁ……。なぜうちの国は、こうも悪魔に目を付けられるのだろうか……」
「脇が甘いんじゃないのか? マーテルさんに相談してみたら?」
俺の言葉にジークフリードは苦い顔をした。
「あのじーさんに貸しは作りたくないんだが……仕方ない、相談してみるか」
俺も、ルシフェルのところに行く必要ができたな……。
※※※※※
「あら? ルゥくん、久しぶりね」
ヴォルムスの街から塔に入ると、そこはウリエルの部屋だった。
「こんばんは、お久しぶりです」
「今日はどうしたの?」
「えっと、アザゼルについてルシフェルに話を聞こうと……あの、どうかしました?」
ウリエルはアザゼルの名前を出した途端、ものすごく不機嫌な顔になった。
「あっ! ごめんね。私が一番嫌いな悪魔の名前だったからつい……」
「そうだったんですね。知らなかったとはいえ、すみません」
……管理者と悪魔の間にも相性があるのかな?
※※※※※
「ルシフェルー! アザゼルについて教えてくれー」
「いらっしゃい。アザゼルかい? んー、そうだなぁ。なんか何でも欲しがる奴だったかな」
「何でも欲しがる? 例えば?」
「僕が食べている果物を欲しがったり、僕が作った遺物を欲しがったり……」
「え? 遺物作れるの?」
「……今さら何言ってるの? ルゥにあげた物、全部遺物だよ?」
「えっ!?」
マジかよ……。
「気づいてなかったんだね。ルゥらしくていいと思うよ」
そう言ってルシフェルは笑い転げた。
「そんな凄い物だと思ってなかったんだよ……。そんなことより、アザゼルの話は?」
「そんなことよりだって!? そんなこと言うなら全部返してもらおうかなー」
……めんどくさっ。
「ごめんって。こいつらが無かったらやばかった時もあるからさ、凄いのはわかってるって」
「そうだろう? 僕の力を注いで作ったんだから当たり前さ」
……危なかった。
「それで、アザゼルの話だけどさ、人を操ったり、力を与えたりもできるのか?」
「できるよ。『眷属』を作るのが好きな奴だから……戦ったのかい?」
「うん、成り行きで。なんか、『御身の糧』にとか言ってたんだけど、どういうこと?」
「うーんと、アザゼルは自分の力のほんの一部を与えて眷属を作るんだけど、眷属が蓄えたレベルや力を回収することができるんだよね」
「なにそれズルい」
「うん。まぁ、それをやると眷属が死んじゃうから、管理者だった頃はやってなかったけど……」
「悪魔になってやりたい放題ってことか?」
「多分ね」
「ちなみに、眷属って人数制限あるのか?」
「そこまでは知らない」
「あと、眷属の奴がほかの人間を身代わりにしてたんだけど、そんなこともできるのか?」
「身代わり? うーん……権能じゃなくて呪いかな? ごめん、よくわからないや」
「やっぱり呪いなのかな……ありがと」
……はぁ。厄介なことになってる。さっさと『狂気の沼』を封印して、アザゼルも対処しないとな……。
次から次へと湧いてくる問題に、俺の頭はパンク寸前だった。
読んでくださってありがとうございます!
ここで新しい悪魔が出てきました!( ̄▽ ̄)
アザゼル!大物ですね!ここで出して大丈夫か!?( ゜Д゜)
ここからアザゼル編に突入していく予定です!(多分)
それでは次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ




