第七十六話 不穏な空気
控室に戻ると、ヨシヒデとウルドが並んで待っていた。
「ルゥ……きみ、何もんや?」
「何もんって……ただのシークレットルーキーですよ」
「とぼけるんじゃねぇ。あの動き……俺たちから見ても異常だった」
あーもー、めんどくさいなぁ。
「ジークフリード陛下に鍛えられましたので。ちょっと珍しいギフトの効果もありますけど」
これでどうだ?
「なるほどなぁ、陛下の秘蔵っ子っちゅうわけか……」
ヨシヒデは顎に手を当てて納得したようだ。
「ちっ」
ウルドは舌打ちして立ち去った。
あいつ……また舌打ちしやがった。
「ほな、ワイも二回戦行ってくるで! また応援よろしゅうな!」
「頑張ってください!」
……ヨシヒデはいい奴だけど、相手が悪いかもな。
そして試合が始まった。
ヨシヒデの相手はマッスルエイトだ。
ヨシヒデはいわゆるヒット&アウェイスタイルなのだが……今のところ、マッスルエイトに攻撃が効いている様子はない。
攻撃が軽いんだよなぁ。マッスルエイトの攻撃も当たってはいないが……。
――一時間後――
「決まったー! マッスルエイト選手の『筋肉バルカン』! ヨシヒデ選手、立ち上がれない!」
はっ!
俺は実況の声で目を覚ました。
不覚にも眠っていたようだ。断じて退屈だったわけではない。
武闘場で手当てを受けていたヨシヒデは、立ち上がると俺を見て残念そうに手を振り、敗者用の出口へ去って行った。
……こればっかりは仕方ないよな。次の大会で頑張れ、ヨシヒデ。
俺がしみじみしていると、背後から声をかけられた。
「ふん、俺の戦いをよく見ておけ」
そう言い放ってウルドは武闘場に向かった。
お前の相手、この中で一番強いと思うけどな……まぁ頑張れ。
そして試合が始まると、俺の予想を超える出来事が起きた。
「なっ……何が起きたのか、またしても分かりませんでした! ウルド選手、立ち上がれません! ガルマドラ選手の勝利です!」
実況が勝利を告げると、ガルマドラは俺を指差し、『つぎはおまえだ』――そう口を動かした。
ガルマドラは振り向き、反対側の控え室に戻って行く。
あいつ、やっぱ一回戦で力を隠してたんだなー。
……俺の戦いを見てやる気出ちゃったのか?
「それでは第七試合! 本日最後の試合も特別試合となります! 北よりいずるは『殲滅の掃除屋』! ヨシヒデー!」
……ん? ヨシヒデ?
「南よりいずるは『シークレットルーキー』! ルゥー!」
あー、フレムーンの時と同じパターンか……。
戸惑いながら武闘場に上がると、ヨシヒデが気まずそうに口を開いた。
「ルゥにこんなこと言うんもアレやけど、せっかくのチャンスや。掴ませてもらうで」
「問題ないですよ。本気で来てください」
俺の言葉に、ヨシヒデは箒を構えた。
「それでは――はじめ!」
試合が始まると同時に、ヨシヒデは箒で砂埃を巻き上げる。
「さっそく出ました! ヨシヒデ選手の『おでかけですか~』! 実況席からでは両者の姿が見えません! 実況泣かせのスキルだー!」
……見えなくても気配は分かるんだけどな。
砂埃の向こうから、俺に向かって細長い針のようなものが飛んできた。
次々に飛んでくる針をはたき落としていると、針に紛れてヨシヒデが鋭い突きを放った。
俺は半身になって箒の先をかわし、柄を掴んでヨシヒデごと持ち上げ――
「なっ」
武闘場に叩きつけた。
「ぐあぁっ」
そのまま倒れたヨシヒデの顔の横を軽く殴りつける。
ゴッ! ビキビキッ!
石造りの床に亀裂が走った。
「……参った」
俺との実力の差を悟ったヨシヒデは、素直に負けを認めた。
「なんとっ! ヨシヒデ選手が降参しました! 第七試合、ルゥ選手の勝利です!」
実況が試合終了を告げた――。
「いやぁ、ここまでとは……ワイもまだまだやな」
俺が差し出した手を、ヨシヒデが掴む。
「ヨシヒデさん、次は大技を用意しておくといいと思いますよ」
「……せやな。次の大会に向けて、また一から頑張るわ」
「頑張ってください」
「ルゥも明日の試合、頑張ってな」
「ありがとうございます」
※※※※※
「ルゥよ、いい具合に目立っていたな」
貴賓席に戻ると、ジークフリードは満足したようにそう言った。
「うるさいよ」
「明日もよろしく頼むぞ」
「なにをだよ」
「優勝するのだろう?」
「……するけど」
俺の返事を聞くと満足そうに頷いた。
「あ、そうだ。ガルマドラって奴……何者か分かるか?」
「いや、俺も初めて見たな。名簿を確認したら初参加のようだが……気になるのであれば調べさせようか?」
「いや、いいよ。ちょっと気になっただけだからさ」
俺のあいまいな返事に、ジークフリードは首を傾げた。
……なんか、嫌な感じがするんだよな。
うまく説明はできないが、俺はまた面倒ごとの匂いを嗅ぎとっていた。
読んでくださってありがとうございます!
シリアスな空気に耐えられない作者です(/ω\)笑
どうしてもふざけてしまう悪い癖が……( ;∀;)
楽しんでいただけていれば幸いです!
それでは次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ




