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第七十五話 二つ名

「決まったー! マッスルエイト選手の『筋肉ハリケーン』が炸裂! フレムーン選手、動けない!」


 男どもの「うおぉぉぉぉ!」という雄叫びと、女どもの「きゃぁぁぁぁ!」という悲鳴が入り混じり、なかなかにカオスである。

 ……レベル、低いな。


「いやー、見ごたえのある試合やったなぁ」


 ……マジか。


「そうですね。白熱してました」


 俺は無難に返事した。


「さて、ほな次はワイの出番や。応援したってな」


「頑張ってください!」


 俺は席を立つヨシヒデを見送った。


 ※※※※※


「続きまして第二試合! 北よりいずるは『殲滅の掃除屋』! ヨシヒデー!」


「南よりいずるは『進撃の小人』! グランビー!」


 ……やっぱ、レベル低いな。

 昨日グランとジークフリードの試合を見た後だからか、目の前の戦いがどうにも退屈に感じてしまう。


「おい、ずいぶんと余裕そうじゃねぇか」


 再びウルドに絡まれた。


「そんなことありませんよ。ウルドさんこそ試合を見なくていいんですか?」


「見てるさ。お前があくびしてたのが目に入ったんだよ。何様のつもりだコネ野郎」


 ……何様ってなんだよ。

 どうもめんどくさい奴に目をつけられてしまったらしい。


「あー、試合が決まりますよ」


「なに?」


 俺は「見ろ」とばかりに武闘場を指差した。


「ヨシヒデ選手の『殲滅ホウキ』がグランビーの鳩尾にめり込んだー! グランビー選手、立ち上がれない!」


 実況の声が会場を盛り上げる。


「てめぇ……なんで分かった?」


「試合見てましたから」


 ……。


「ちっ」


 ウルドは舌打ちすると、再び俺を睨みつけて去って行った。

 よく分からん奴だな……。


「ルゥ! 勝ったでー! ワイの試合、どやった?」


 意気揚々と引き揚げてきたヨシヒデは、開口一番感想を求めてきた。


「おめでとうございます。そうですね……中盤で砂埃を起こして、グランビーの動きを鈍らせたのが効いてましたね」


「せやろ!? 『おでかけですか~』が見事にハマったんや!」


 お、おでかけですか~?


「そこからは一方的にペースを握ってましたから、圧勝でしたね」


「……ホンマ、よう分かっとるなぁ。ただの飛び入りやないっちゅうことか……」


 ヨシヒデは感心したように頷いた。


「……そういえば、俺の出番っていつなんですかね?」


「おまっ! 自分の出番も知らんのかい!?」


「……急遽出場することになったんで……すみません」


 聞かなかった俺も悪いけど……説明しとけよ、それくらい。

 心の中でジークフリードに毒づいた。


「はぁ。凄いんか抜けとるんか、よう分からんなぁ。ルゥの出番は五試合目やで。相手は一回戦で負けたフレムーンや」


「そうなんですね。ありがとうございます」


「呑気なやっちゃなぁ。あいつは負けこそしたけど――」


 俺はヨシヒデの解説を聞き流しながら、トーナメントの仕組みに感心していた。


 ※※※※※


「皆さま盛り上がってますかー? 第五試合は急遽設定された特別試合となっています!」


 実況の発表に会場がどよめいた。


「簡単にご説明しますね! 次の試合では、急遽出場が決まった選手と、第一試合で惜しくも敗退したフレムーン選手が対戦します! この試合でフレムーン選手が勝利すると、なんと本戦に復活できます!」


 会場のどよめきが強まり、中には怒号も飛び交い始めた。


「皆さま落ち着いてください! このトーナメント表は過去の実績をもとに、実力の高い選手を優遇して組まれております! 文句がある方は……ジークフリード陛下までお申し出ください」


 この説明に、会場はシンッと静まった。


「……えー、それではお待たせいたしました。第五試合です! 北よりいずるは『月光の揺らめき』! フレムーン!」


 キャーーーーー!!!

 

 黄色い声援と共に、会場が活気を取り戻す。


「南よりいずるは『シークレットルーキー』! ルゥー!」


 ブーブー!!!


 おぉ、ブーイングの嵐だ。……貴賓席から殺気が漂ってるからやめてほしいな。それにしても『シークレットルーキー』って……全然シークレットしてないじゃん。


 雑念まみれで武闘場に上がると、フレムーンはキザなしぐさで髪をかき上げた。


「シークレットルーキーくん、君には申し訳ないが、私の踏み台になってもらうよ。この会場にいる全ての女性に、私の勝利を捧げよう!」


 キャーーーーー!!!!!


 ……おいやめろ、おかしな二つ名で呼ぶな。なんだそのへんてこなポーズは。バカにしてんのか?

 後から思い返せば、この時の俺は少し気がたっていたのかもしれない。


「それでは――はじめ!」


 開始早々、槍を突き出してきたフレムーンの懐に潜り込み、鳩尾を殴り上げる。

 

「ぐぼぁっ」


 フレムーンの体が勢いよく垂直に吹き飛んだ。

 ……あー、高い高い。ちょっと力が入っちゃったな。ごめんごめん。

 落下してきたフレムーンを、俺は優しく受け止めた。


 …………。


「な、なにが起こったのでしょうか? ルゥ選手が、フレムーン選手を抱きかかえています……」


 ぎゃーーーーー!!!


 会場が悲鳴で埋め尽くされる。


「どうやらフレムーン選手は気絶しているようですね……。第五試合、ルゥ選手の勝利です!」


 フレムーンを武闘場にそっと下ろした俺は、大量のブーイングを受けつつ控室に戻るのだった。

 ……あと何試合あるんだっけなぁ。俺の心も悲鳴をあげていた……。

読んでくださってありがとうございます!

ついに武闘祭が始まってしまいました…… _( _´ω`)_

作者は戦々恐々としております( ;∀;)

楽しんでいただけてるといいなぁ((+_+))

それでは次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ

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