第七十一話 賭け
「あ! ししょー! おかえりなさーい!」
「……大変でしたね」
「ルゥくん、凄く目立ってたよ?」
皆のところに戻ったおかげか、少し落ち着いてきた。
「……やられたよ。あいつなりに、考えてくれたみたいだけどな」
「皇帝の恩人ってすげーよな!」
なぜかグランが誇らしそうだ。
「あなたのことじゃないのよ?」
間を置かずサリアがツッコむ。
「ぷっあははっ。腹減ったな、飯食おうぜ」
突然笑い出した俺を見て、皆はきょとんと目を見開いたが、すぐにつられて笑い出した。
※※※※※
「おいルゥ、見られてるぞ」
「……分かってるよ。無視しとけ」
皆で食事を楽しんでいる間も、好奇の視線、ぶしつけな視線が注がれていた。そして、中には敵意を向けてくる奴らも……。
「そうよ。ここで騒ぎ立てたら、今までの我慢が台無しなんだから」
「そういう訳だ。待て。できるか?」
「バカにすんなよ!?」
そんな俺たちのもとへ、敵意をむき出しにした団体が近づいてきた。
「ルゥ殿、少しよろしいか?」
「……どちら様で?」
「貴様っ!」
取り巻きの一人が俺の言葉にいきり立つ。
……沸点低すぎだろ。
俺より少し背が低い小太りのおっさんはそれを制し、わざわざ顎を上にあげ、見下すような視線を向けて仰々しく名乗りを上げた。
「私は、カイム=タスマリカと申します。どこぞの冒険者には馴染みがないようで……私もまだまだですなぁ」
「そうだな。精進しろよ。何か用か?」
「お前!!」
先ほどの取り巻きが激昂する。
「やめよ!」
カイムは声を大にして再び制した。
「……失礼。主人想いの部下でして。ルゥ殿は、皇帝陛下をお助けになられたとのことですが……」
「それがどうかしたのか?」
「いえ、聞くところによると、ルゥ殿はEランク冒険者だそうで……後学のためにどのように皇帝をお救いになられたのか、教えていただけないかと思いまして」
「言ったところでお前には無理だ。残念だったな」
ギリッ
「……そうですか。そこまでおっしゃるのであれば、ランクなど関係ない実力をお持ちなのでしょうな。ちょうど武闘祭が開催されますので、是非そのお力をお示しいただきたい。……できるのであればですがね」
あ、まずい。
俺の背後で殺気が膨れ上がった。
……くそっ。
「いいよ。その代わり俺が優勝したら、お前の領土没収な?」
「……は?」
「俺は目立つことが嫌いなんだ。その俺に武闘祭に出ろって言うなら、お前もそれ相応の覚悟を決めろよ」
「戯言を! 冒険者風情が調子に乗るなよ!」
「待て待て。何やら面白い話をしてるじゃないか」
俺たちの間にニヤついた顔のジークフリードが割って入った。
「陛下! いえ、ルゥ殿に武闘祭へ参加されてはいかがかと、提案させていただいた次第で……」
「だから出てやるから領土賭けろって言ってるだろ?」
「落ち着け、ルゥよ。流石に領土は……まてよ? お前が領主になるのも面白そうだな……」
「絶対無理」
「ははっ。分かっている。それでは、ルゥが優勝した暁には……カイムが所有している『ホーリーワンド』を譲ってやるがよい」
「陛下! それはっ!」
「カイムよ。俺の宣言を聞いていなかったのか? ルゥは俺の恩人であり友人だ。貴様、それを試そうとしたな?」
ジークフリードがカイムを威圧した。
「はっ! 申し訳ございません!」
カイムはにじみ出た脂汗でテカテカだ。
「分かればよい。それでは、賭けの件は俺が責任を持とう。頑張れよ、ルゥ」
「……へ?」
……あれ? うやむやにするんじゃなかったの?
ジークフリードは満足げな笑みを浮かべ去っていった。
「……そう簡単に優勝できるなどと思わぬことだ」
カイムも捨て台詞を吐き、取り巻きと共に去って行った……。
「出ないんじゃなかったのかなぁ?」
ニヤニヤと近づいてきたグランに俺は言い返すことができなかった。
「うるさいな……ああ言うしかなかったんだよ。お前ら、殺気漏れてたぞ?」
俺は全員を見渡して言った。
「だって、なぁ?」
「ししょーがバカにされるのは、許せません」
「そうですよ、知らないからってあんな言い方……」
「嫌味な奴だったね! ほんと失礼!」
「……私は抑えようとしたわよ?」
……皆、俺のことを思ってのことだからなぁ。これは怒れない。
そして――
「ルゥ、私とキリエは少しやることができたので、明日から別行動をとりますね」
ルチアが営業スマイルを貼り付けて、そう宣言した……。
読んでくださってありがとうございます!
やっぱり出るんじゃん武闘祭!( ゜Д゜)
まぁ、そりゃそうなりますよね……そしてその結果、作者は苦しんでおります_( _´ω`)_笑
それでは次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ




