第七十話 伴侶
「それでは、着替えが必要ですね」
情報収集を終えて城に到着したルチアは、俺の話を聞くとそう宣言した。
「……いいだろ別に、このままでも」
「ダメですよ。ルゥが良くても、ジークフリード陛下にご迷惑がかかるかもしれません」
そう言ってにこりと微笑んだ。
こっちも迷惑してるんだから迷惑かけたっていいじゃん……。
そして、女子たちは城に用意されていた衣装を楽しそうに選び始めた。
※※※※※
「よく似合ってますよ」
「ししょー! 別人ですね!」
「……かっこいいです」
「これは、ずるいなぁ……」
ルチアが選んだタキシードに着替え、髪まで整えられた俺は、恥ずかしさに身じろいだ。
そして――
「……皆も似合ってるぞ」
ルチアは青、リーズは黄、シルは白、カナエは緑、キリエは黒。そして、少し離れてグランといるサリアは赤。それぞれ色違いのドレスを身にまとっていた。
……どうも、目のやり場に困るな……。
「ルゥ! そろそろ……なんだ、見違えたではないか」
扉を開けてずかずかと入ってきたジークフリードは、俺を見て目を細めた。
「うるさい。言っとくけど、マナーとか知らないからな。俺が協力できるのはここまでだぞ?」
「十分だ。今夜は立食パーティーだからな。好きなものを好きなだけ食べてくれ」
俺たちはジークフリード自らの案内で会場に向かった。
……何か……嫌な予感がするんだが。
たどり着いた会場の脇にいた二人の衛兵が、ジークフリードの姿を見て大きな扉を開く。
そこには、百人を下らない大勢の人々が集まっていた。
……嘘だろ? こんなにいるのかよ。
「この辺りで待っていてくれ」
……待っていてくれ?
ジークフリードはそう言い残すと、つかつかと用意されたステージへ歩いて行った。
俺は突き刺さる視線に不快感を覚えつつ、目立たないように気配を殺した。
ジークフリードは、ステージの中央に用意された拡声器の前で話し始めた。
「皆の者、今日はよくぞ集まってくれた。本来であれば、武闘祭の成功を祈願するパーティーなのだが、思わぬ来客があった。良い機会だから紹介しようと思う」
ちょっ! 待て待てっ!
「私の友がはるばる駆け付けてくれた! ルゥだ! さぁ、こちらへ」
俺に向かって手招きするジークフリード。
怒りで固まる俺に、ルチアが囁いた。
「ルゥ。落ち着いてください。今はステージへ」
我に返った俺は、笑顔を貼り付けステージに向かった。
ステージ上でジークフリードと対面する。彼が俺に握手を求めたので、ちゃんと握手を返した。
うっかり力が入ってしまい、笑顔が強張った気がするが……彼なら大丈夫だろう。
そして、彼は再び話し始めた。
「皆の者、よく聞くがよい。ルゥは、私とこの国を救ってくれた恩人だ。彼に対する狼藉は、私に対するものと知れ。良いな?」
そう言い放ったジークフリードは、何かを成し遂げた後のようにいい笑顔を浮かべた。
とりあえず、後で殴ろう。
ステージ上にドリンクが届けられ、グラスを手に取るとジークフリードが口を開いた。
「それでは、武闘祭の成功と、ブルグント帝国の発展を願って――乾杯!」
ジークフリードはグラスを高々と掲げ、一気に飲み干した。すると場内から一斉に拍手が巻き起こる。
「すまなかったな。これで、この国でお前たちにちょっかいをかける者はいないだろう。……怒ってるのか?」
笑顔を貼り付けた俺に、ジークフリードは小声で謝罪した。
「とりあえず、後で殴らせろよ?」
「……手合わせにしてくれないか?」
「それでもいいぞ」
「……ありがたい」
俺たちがステージを下りると、人が波のように押し寄せた。
「陛下! ルゥ殿が国を救ってくださった話、聞かせていただけますか!?」
「ルゥ殿! ありがとうございました! まだお若いのにどうやって?」
「陛下! ルゥ殿も武闘祭に参加されるのでしょうな?」
「ルゥ殿! うちの娘を紹介させてください!」
もみくちゃにされながら、あーとかえーとか適当に相槌を打っていると、そこに救世主が現れた。
その優美な姿に、誰も彼もが目を奪われる。
「失礼します。ジークフリード陛下。ご無沙汰しております」
「ルチア殿。久しいな。皆の者。この方も私を救ってくれた恩人だ。丁重に扱えよ?」
ジークフリードが周囲に向かって補足した。
「ルゥは私の伴侶ですので、そろそろ引き取らせていただいてもよろしいですか?」
「そうであったか! それは気配りが足りなかったな。それではルチア殿にお返ししよう」
「ありがとうございます。ルゥ、行きましょう」
ルチアは俺の左腕に腕をまわした。
……はんりょ? どういう意味だっけ?
ルチアのおかげで人混みを抜け出せた俺は、左腕に伝わるぬくもりに激しく動揺していた……。
読んでくださってありがとうございます!
記念すべき70話でついにルゥとルチアが結婚し……てません!( ゜Д゜)
どう収拾しようと悩んでいたら、ルチアが助けてくれました。作者を( *´艸`)笑
とても優秀なキャラで頼りっぱなしです!\(^o^)/
それでは、次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




