第六十九話 謁見
「……なんでここにいるんだ……ですか?」
「ん? どういうことだ?」
「いや、皇帝が軽々しくこんなところまで出てきていいのかなと」
「何を言っている。同じしとんぐっ!」
余計なことを言いかけたジークフリードの口を慌てて手で押さえた。
「貴様! 皇帝から離れろ!」
衛兵が一斉に槍を向ける。
……いや、俺が悪いの?
俺はジークフリードを睨みつけた。
「よい。この者は大事な客人だ。丁重にもてなせ」
「……畏まりました」
周りの部下たちは戸惑ってるけどな……。
「私の城へようこそ。歓迎するぞ。それでは行こうか」
ジークフリードはマントをひるがえし、王城へ向かって歩き始めた。
……人騒がせなやつだな。
ジークフリードに案内されたのは、豪華な客間だった。
「ここで少し待っていてくれ。その間、好きなものを頼むといい」
「ありがと。ゆっくりさせてもらうよ」
ジークフリードが部屋を出て、俺たちはメイドさんに飲み物を頼んだ。
「ほんとに、知り合いなんだね……」
「なんだよ、疑ってたのか?」
「いや、そうじゃないけど……なんか現実味がないというか……」
カナエ、というか全員が呆けた顔をしていた。
「おいおい、シャンとしろよ。これからあいつとも付き合ってくんだぞ?」
「「「えっ!?」」」
「えって……。当たり前だろ? 仲間なんだから」
「いや、仲間ってマジで?」
「忘れたのか? ジークフリードも使徒だからな?」
「……ルゥさんの価値観がおかしくなってるわね」
「いまさらじゃないですか?」
サリアとシルの評価が散々である。
「私も流石に王様とお会いしたことはなかったです……」
「あ、そういえばリーズは元貴族だったな。所作とか教えてくれよ」
「……ししょーはそのままでいいと思います」
「……そうなの?」
「「「はい」」」
全員に肯定されてしまった……。
※※※※※
案内係に呼び出され、通されたのは謁見の間。左右にはがっちりと鎧を着こんだ騎士がずらりと並び、俺たちに視線を向けることもなく真っすぐ前を見ていた。
……練度が高いな。ほんとにちゃんと皇帝だったんだな、あいつ。
ジークフリードを前にして横一列に並ぶと、俺を除く全員が片膝をつき、頭を垂れた。
「え?」
戸惑う俺にジークフリードが声をかける。
「よくぞ参った。歓迎するぞ」
「光栄ですよ。仰々しいですが……」
俺の発言に騎士たちが殺気立つ。……仕方ないだろ、作法とか知らないんだから。
「よい。ルゥは私の仲間であり友だ。それより、この国へ来たのは私に会うためなのか?」
「いや、仕事です。とりあえず挨拶はしておこうと思って」
……なんか空気がピリついてきたな。
「そうか、それは少し残念だが……仕事について話を聞かせてもらえるか?」
「いや、ここではちょっと……」
ついに騎士たちの視線が俺に向けられた。
……不本意だ。
「なるほど、それでは場所を変えよう。爺、用意してくれ」
「御意」
あ、あの時の老騎士だ。相変わらず大変そうだな……。
※※※※※
俺たちは老騎士の案内で再び客間に通された。
「お元気そうでなによりですな」
「あなたも。苦労されてそうですね」
「全くです」
俺たちは揃って苦笑いを浮かべた。
「おい、ルゥ。流石に肝が冷えたぞ」
「なんでだよ。そのままでいいってお前らが言ったんだぞ?」
「それにしたって限度があるでしょう?」
「騎士さんたち、ものすごい怒ってましたね……」
シルの言葉を聞いた老騎士がカッカッカと笑った。
「まだまだ青い証拠ですな。まぁ、忠誠心が高いのは喜ばしいことですが」
「ルゥ! 待たせたな! ん? どうした?」
タイミング良くジークフリードが現れる。
「いや、別に何でもないよ。それじゃあ話そうか」
俺たちはテーブルを挟んで席についた。
「この国に来た理由だけど――」
ジークフリードに事情を説明すると、難しい顔で考え込んでしまった。
「『狂気の沼』を封印するか……。国にとってはマイナスだが……仕方ないな」
「マイナス?」
「この国は、他国と比べてダンジョンが少なくてな……狂気の沼のモンスターからとれる資源は、なかなかに貴重なのだ」
なるほどな。だが……。
「すまん。これだけは譲れない」
「ああ、承知している。この国も悪魔には手痛くやられているからな」
国というかお前だろ……。
「理解してくれて良かったよ。確かに影響はあるだろうけど、国が滅ぶよりましだもんな」
「違いない。爺、狂気の沼が消えた後の国内への影響と、代替できるダンジョンを調べてくれ」
「……御意」
……ほんと、苦労してるなぁ。
「話は分かった。ひとまず今日はここでくつろいでくれ。夜には食事会を催すからな」
「は? いらないよ?」
「そういう訳にもいかんのだ。すまんが付き合ってくれ」
……これだから近寄りたくなかったんだよ!
はぁ……また面倒ごとの匂いがしてきた……。
読んでくださってありがとうございます!
ルゥはどこに行ってもルゥですね( *´艸`)笑
ジークフリードもちゃんと皇帝やってました!
爺の胃に穴が空かなければいいのですが……( ;∀;)
それでは、次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




