第七十二話 手合わせ
食事会が終わり部屋でくつろいでいると、しばらくしてジークフリードが現れた。
「……まだ、何かあるのか?」
「そう睨むな。武闘祭について、話しに来たのだ」
「武闘祭ねー……めんどくさいことになったよ、まったく」
「お前が言い出したのであろう?」
「ばっ! あの時は……仕方なかったんだよ」
「良いではないか。優勝すれば『ホーリーワンド』も手に入るぞ」
「知らねーよ。なんだよホーリーワンドって」
「遺物――とまではいかないが、回復系統のスキル効果を倍増してくれる逸品だ。なかなかお目にかかれるものではないぞ?」
「へぇ……」
シルに使わせたいな……少しやる気が出てきた。
「それでは、簡単に武闘祭のルールを説明するぞ。まず、使用できる武器は全てこちらが用意したものだ」
「武器なんかいらないけど」
「……次に、勝敗は相手が負けを認めるか、どちらかが気絶した時点で決する」
「なるほど」
「スキルは当然使用できる。そして、いかなる場合においても、相手を殺した場合は失格となる」
……まぁ、妥当だな。
「ここまでで質問はあるか?」
「半殺しなら大丈夫なんだな?」
「……ルール上は問題ない。回復班も常駐している。だが、限度があるからな?」
ドン引きした表情でジークフリードは答えた。
「それなら安心だ」
「俺は不安でしかないぞ……」
晴れ晴れとした表情の俺とは対照的に、ジークフリードの表情は曇っていた。
「大丈夫だって、お前の心配するようなことは起こらないよ。それより、行こうぜ」
「……どこへだ?」
「手合わせするんだろ?」
…………。
「そうだ、用事を――」
俺は振り向いて部屋から出て行こうとするジークフリードのマントを踏みつけた。
「逃がさねーぞ?」
振り向いたジークフリードの額から汗が流れ落ちた。
※※※※※
「おー! 結構広いんだな!」
「そうであろう。我が国が誇る『ラヴィウスコロッセウム』だ。ここでは武闘祭だけでなく、観劇やコンサートも開かれるのだぞ」
ジークフリードは胸を張り自慢げに説明した。
「いや、興味ないしな」
「つまらん奴だな……たまには心を休めることも必要だぞ?」
「……間に合ってるよ」
「これはこれは、失言だったようだな」
ジークフリードはニヤニヤと笑みを浮かべた。
「いくぞ。お前たちは、しっかり見とけよ!」
俺はギャラリーとしてついてきた仲間たちにそう告げて、石を敷き詰めて造られた武闘場へ上がった。
遅れて上がってきたジークフリードと対峙する。
「いいか? くれぐれも本気で来いよ? スキルも使えばいい。俺を倒す気でかかってこい」
「当然だ。レベルの差を覆してみせるさ」
俺たちは互いに剣を抜き、構えた。
先に動いたのはジークフリードだ。一足飛びで間合いを詰め、鋭い突きを繰り出した。
狙いは首か。
俺は上半身を右に反らし、そのままの勢いでかぶせるようにジークフリードを斬りつけた。
しかし――
なに!?
俺の剣がジークフリードの体をすり抜ける。
その直後、俺の側頭部に斬撃が迫る。
っぶね!
姿勢を低くしてやり過ごした俺は、後ろに飛び退いて距離を取った。
……スキルか。厄介だな……。
再びジークフリードが迫る。間合いを見極め紙一重でかわすと、再び別の角度から斬撃が飛んできた。
ガキンッ!
その斬撃を剣で受けると、今度はジークフリードが後ろに飛び退いた。
……ジークフリードが二人いるのか?
「まさか初見で二度も防がれるとは……恐ろしい男だな」
「いや、驚いたよ。面白いスキルだな。どんなスキルなんだ?」
「その説明は、この立ち会いが終わったらだ」
……ちぇっ。
突っ込んできたジークフリードの斬撃をかわし、逸らし、受け流しているうちに、ジークフリードのスキルがなんとなく分かってきた。
ジークフリードの表情に焦りの色が浮かび始める。
「ここだ」
俺は後から来る斬撃を狙い、その剣を薙ぎ払った。
ギィンッ!
耳障りな金属音が響き、ジークフリードの手から離れた剣が宙に舞う。
その状態からジークフリードは拳を放った。一つ目の拳を逸らし、二つ目の拳にタイミングを合わせて殴りつけると――
「ぐあぁっ!」
見事ジークフリードの顔面に直撃した。
武闘場の上をゴロゴロと勢いよく転がり、バタリと倒れ動かなくなったジークフリード。
……あ、やべ。
「シル! 回復してやってくれ!」
「は! はい!」
慌てて駆けつけたシルは、瞬く間にジークフリードを回復してくれた。
「おい! やりすぎだろう!?」
意識を取り戻したジークフリードは開口一番文句を言った。
「お前だって首とか狙ってきたじゃん。お互い様だろ?」
「ぐっ……」
「それより、さっきの、どんなスキルなんだよ?」
「……見切ったのではないのか?」
「なんとなくだよ。お前の分身が一緒に戦ってた感じがしたんだけど」
「大体合っている。『シャドウサーヴァント』というスキルでな。俺の分身を作ることができるのだ」
ジークフリードは悔しそうな顔で説明してくれた。
「おー! やっぱりか! そのスキルって、分身も自由に動かせるのか?」
「分身を出せるのは一瞬だ。自由にと言われればそうだが、常に二人で攻撃を仕掛けるような使い方はできん。言っておくが、見切られたのは今日が初めてだからな」
「んじゃ、グランとも立ち会ってみてくれよ」
「なに?」
「俺!?」
「武闘祭出たがってただろ? ジークフリードに胸を貸してもらえよ」
「……いいんですか?」
「まぁ、いいだろう」
「ありがとうございます!」
面白い展開になった!
ジークフリード相手にグランがどこまで戦えるのか。俺の心は躍り始めた。
読んでくださってありがとうございます!
ジークフリードやるじゃん!流石皇帝ですね( *´艸`)
そして次はグランの番!
バトルシーンは苦手ですが、グランのために頑張るよ!( ;∀;)
それでは次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




