第六十七話 激怒
「そういえば……ネクロマンサーは村で何をされたんだ?」
トレインカーに戻る帰り道、ふと思い出したことをサリアに尋ねた。
「そうね、分かりやすく言うと……迫害されていたそうよ」
「……迫害ってなんだ?」
リア充のグランがとんでもない質問を返す。
サリアの顔が絶望に染まり、ギギギと音を立てて俺を見た。
「……俺は分かってるぞ。要は、村で除け者にされてたってことだろ?」
「……はぁ、そうだけど、実際はもっとひどかったみたい。殴られ、蹴られ……体に火をつけられたり」
「なんだよそれ!? ひどいなんてもんじゃないぞ!?」
理解した途端にグランが激高した。
「……そういう村だったの。他人と違うことを許さない、目立つ人間を排除する……本当に居心地が悪かったわ」
「……なるほどな。『ネクロマンサー』のギフトを授かったのがきっかけなのか?」
「そこまでは書かれてなかったわ……でも、私もそうだと思う」
「くそっ! なんでそんなことができるんだ!」
「そういう風に教えられて、そういう環境で育ってきたからよ。それが正しいことだと信じて……いえ、洗脳されてるんだわ」
「洗脳か……サリアはよく、染まらなかったな」
「そうね……今思えば自分でも不思議だけど、小さいころからずっと違和感があって……そのせいで私も色々あったけどね」
ブチンッ
「……え?」
音のした方を見ると、そこにいたはずのグランが……いない!?
「まずい!」
俺は風のごとく走り去ったグランの後を追った。
「ルゥさん! グランをお願い!」
俺の背にサリアの悲鳴のような願いがかろうじて届いた。
「くそっ!」
レベルや経験の差はまだあるものの、キレたグランは明らかに普段以上の力を発揮しているようだ。俺はなかなか追いつくことができなかった。
「行けるか……? いや、やるしかない」
俺の視界には既に村が映っている。
〘施錠〙
俺はコメ粒ほどの大きさに見えるグランに向かってスキルを発動した。
そして――
「……危なかった」
村はもう目と鼻の先だ。
「やっぱり、立ち寄らなくて良かったな……」
俺は倒れたグランを担ぎ上げ、しんと静まり返った村に背を向けた。
※※※※※
「ただいまー」
「「「おかえりなさい!」」」
トレインカーにはサリアも戻ってきていた。
「ルゥさん、ありがとう。もう……本当にバカなんだから……」
涙ぐんでグランの頭に手を当てるサリア。
「コイツのこと、頼むな」
「わかってる。任せて」
俺はサリアにグランを預け、スキルを使う。
〘開錠〙
「……はっ!? 村は!?」
「もういいの、落ち着いて」
「いいわけないだろ! サリアがどれだけくるんぐっ――」
……わぁお。
俺が顔を逸らすと、女子たちは顔を手で隠しつつも、キラキラした目で指の隙間から凝視していた。
「……落ち着いた?」
「なんか、ふわふわする……」
「私のために怒ってくれるのは嬉しいわ……。でも、それであなたが手を汚すのは、嫌よ」
「……すまん」
……俺たち外に出た方が良くないか?
甘ったるい空気に何とも言えない居心地の悪さを感じていた。
「ちょっと、散歩してくる」
「え!? 今から!?」
カナエが驚きの声を上げた。
「じゃあ、私たちも……」
「やめてよ、変に気を遣うの……」
お前が言うな。いや、それよりも……。
「ちょっと気になってることがあるんだ。すぐに戻るから待っててくれ」
「俺も行こうか?」
正気になったグランが名乗り出た。
「いや、ほんとにすぐ戻るから大丈夫だよ」
俺はトレインカーを出ると、真っすぐ村を目指した。
※※※※※
「……やっぱりか」
たどり着いた村に人影はなく、代わりに無残に殺された死体があちらこちらに転がっていた。
傷み具合を見ると、それなりの時間が経っているようだ。
「もしかすると、復讐を成し遂げてたのかもな……」
俺は言葉にできない感情を胸に、荒れ果てた村を後にした。
※※※※※
「あ! ししょー! おかえりなさい!」
「ただいま」
「早かったですね」
「すぐ戻るって言ったろ?」
リーズとルチアに返事をして、トレインカーを見渡すと、それぞれがまったりと体を休めていた。
……うん、良かった、空気が戻ってて。
「それじゃ、首都へ向かおうぜ」
「「「はーい!」」」
「ちっ」
……運転手のキリエに舌打ちされた。
俺は、俺がやるべきことをやるだけだ。
窓の外の景色をぼんやりと眺めながら、俺は気持ちを切り替えた。
読んでくださってありがとうございます!
グランのブチギレ→サリアのキス♡→村の全滅と盛りだくさんでお送りしましたが、ご満足いただけたでしょうか?(^ω^ゞ
小城編はここまでで、次話からはいよいよブルグント帝国編の本編に入っていきます!
また覗きに来てくれると嬉しいです(*´ω`*)
ではでは(*‘∀‘)ノシ マタネー




