第六十五話 謎の小城
「……なんだよ、これ」
「骨だろ」
「そういうことじゃねーよ! 何でこんなに骨が転がってあぐっ――」
「分かってるから騒ぐなって」
俺は騒ぎ立てるグランの口にさっき採った大きめの果実を突っ込んだ。
「……うめぇ」
「それじゃあ、行くか」
「「「えっ!?」」」
女性陣からドン引きした声が上がる。
「別に行かなくてもいいんじゃないですか? ししょーが施錠したんだし」
「そ、そうですよ。私がダメ押しで『ホーリーグラウンド』使いますから、もう帰りませんか?」
……はぁ。
「冒険者だろ? ダンジョンのモンスターに比べたら大したことないじゃないか」
「でっでも! ダンジョンとはなんか違うというか、なんか気持ち悪いんだもん……」
完全に及び腰である。
「……わかった。ちょっとここで待っててくれ。行くぞグラン」
「うい」
グランは持っていた果物をぺろりと平らげると、俺の隣に並んだ。
門をくぐり内庭に入ると、無数の墓が並んでいた。
「どういう目的で作られたんだろうな?」
「墓場じゃね?」
……。
いかにもグランらしい返事が返ってきた。
「まあいいか。開けるぞ」
俺は城の扉に手をかけた。
ギギギギと耳障りな音をたてて扉が開く。
「暗いな……」
「あ、ちょっと待ってろよ」
グランは背嚢から松明を二本取り出し、火をつけた。
炎の揺らめきがぼんやりと辺りを照らす。
「思ったより、荒れてないな……」
「誰かが掃除したんじゃね?」
その誰かが誰なんだって話なんだが……。
「それじゃあ、二手に分かれようぜ」
「そだな。ここ結構広そうだし」
「なんか見つけたら知らせるってことで」
「おう!」
俺たちは別々の方向に向かって走り出した。
俺は目に入った扉を片っ端から開けていく。
寝室、キッチン、客間、客間、客間……階段を上がった通路の奥に、ひときわ大きな扉があった。
「ここは……玉座の間か?」
扉を開けると、部屋の入口から真っすぐに絨毯が敷かれ、正面に置かれた玉座へと続いていた。
「なんだこれ?」
玉座の座面に、一冊の本が置かれていた。
俺はその本を手に取り、頁をめくる。
『ころすころすころすころすころすころすころすころす――』
パタンッ
俺はすぐさま本を閉じた。
どうやら狂った何かがここにいたらしい……。
念のため他の部屋も調べてみたが、特に気になる物は見つからなかった。
入口まで戻ると、グランの姿が見えた。どうやら先に戻ってきたらしい。
「おーい。なんか見つけたか?」
……反応が無い。
「おい? どうした?」
もう一度声をかけると、グランはゆらりとこちらを振り向き、いきなり俺に斬りかかってきた。
〘施錠〙
ドサッ
「全く、何やってんだ情けない……。あっちに何かあるんだな?」
グランがおかしくなった原因を探るため、俺は再び城内を駆け回った。
「あー、これかな?」
城の地下に続く階段を見つけ、下っていくと地下牢が並んでいた。そして、一番奥の牢の床には、大量の血で描かれたと思われる魔法陣が、おどろおどろしい気配を放っていた。
「まだ細かい加減がよく分からんな……」
〘施錠〙
俺がスキルを使うと、魔法陣から放たれる不気味な気配は一瞬で消え去った。
これでよし……グランはちゃんと元に戻るかな……?
俺はグランの元へ戻りスキルを使う。
〘開錠〙
ぴくりと体が震え、ゆっくりと顔をこちらに向ける。
……あー、駄目か。
濁りきった目で歯をむき出しにし、獣のように四肢を使い飛びかかってくるグランに、俺は勢いよくビンタした。
ドガッッッ!
壁に吹き飛ばされるグラン。しかし――
ゆらりと立ち上がると、今度は『塵滅刀』を抜き、斬りかかってきた。
「目が覚めるまで殴り続けるからな」
操られているからなのか、ブンブンと大振りで刀を振り回すグランの頬にビンタ。
立ち上がってくるたびにビンタ。
そして、馬乗りになってビンタを繰り返しているうちに、グランはとうとう動かなくなった。
「ようやくか……しぶとかったな」
俺はグランを肩にかつぎ、城を出ようとして……足を止めた。
「あれ、一応持って帰るか……」
ものすごく嫌だったが、もう一度玉座の間へ戻り本を回収し、城を抜け出した。
「グランさん! どうしたんですか!?」
俺たちの姿を見ると、シルが駆け寄ってきた。
グランを肩から下ろし、シルに事情を説明する。
「あー、ちょっとした罠があってさ。すまんが回復してやってくれ。あ、そうだ。シルって解呪もできるか?」
「解呪ですか? はい、できますけど……」
「先に解呪した方が良いかも」
「グランさん呪われたんですか!?」
「いや、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
驚きの声を上げたリーズに、俺はあいまいな答えを返した。
「分かりました」
〘リムーヴ・カース〙
グランの体が淡い光に包まれる。すると――
「い、いひゃい」
ぱんぱんに腫れた顔で、グランが言葉を絞り出した。
「すぐ回復しますね!」
「ルゥくん、何があったの?」
「うーん、正直よく分からん。誰かがいたわけでもないし、気味の悪い魔法陣があっただけなんだよな」
「魔法陣?」
「あぁ。あとこれ」
俺は手に持った本を掲げて見せた。
「本?」
「あとで調べてみるよ……」
また厄介ごとか……。
俺は気味の悪い本を手に、がっくりと肩を落とした。
読んでくださってありがとうございます!
お前が! 正気に戻るまで! 殴るのを! やめない! ( 'д'⊂彡☆))Д´) パーン
アレンジを加えて使わせていただきました(*´ω`*)笑
さてさて奇妙な小城で気味の悪い本を見つけたルゥですが、この後どんな展開が待っているのか……。
次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ




