第六十三話 刀鍛冶
「一週間だけ待ってくれる?」
日が沈み、グランたち『対の刃』が宿に戻った。
俺が皆に『狂気の沼』の話をすると、サリアはそう願い出た。
「なんで一週間なんだ?」
「一週間あれば、預かった魔法書を修得できそうなの」
「……え? 早くない?」
「ルゥさんがくれた飴……あれを食べた後から理解度が跳ね上がったのよ……」
戸惑いながらサリアはそう言った。
「……凄いな」
「凄いなんてもんじゃないわ! 魔法の威力も上がってて、管理者様にどうお礼をしたらいいか……」
「そんなもん、俺と一緒に世界を救えばいいだけだろ?」
俺の言葉にサリアはポカンと口を開けた。
「難しく考えすぎなんだよ。魔法書も飴も、世界を救うために貰ったもんなんだから、世界を救うのが恩返しじゃないか?」
「……そうね。間違いないわ」
「どうしても礼が言いたいんだったら、塔を攻略すれば会えるしな」
この言葉に全員が俺をジト目で睨んだ。
「80階層以降、階層主の強さが跳ね上がったんだよなー」
「一人でどうにかできるレベルを超えてると思うんですが」
「流石に心が折れそうなのよ……」
「私も頑張ってはいるつもりですが……なかなか進めません」
「俺だって一年かかってるんだからさ。焦らず地道に行こうぜ」
「「「……はい(……おう)」」」
※※※※※
翌日、サリアを除く他のメンバーを塔へ送り込み、時間を持て余した俺は、行き詰まっている皆のために武器屋を巡ることにした。
「ここかな?」
俺はカナエに描いてもらった地図を頼りに、『刀鍛冶』の店にたどり着いた。
「すみませーん」
入口の引き戸を開け、店の中に入ると、木造りのカウンターの向こう側に数本の刀が飾られていた。
手前の壁にも何本かの刀が立てかけられ、さらに入口の脇の木箱には、数本の刀が雑に突っ込まれている。
「いらっしゃーい! あっ! 彼氏さんじゃないですか!」
カナエ……まだ誤解を解いてないのか。
「あー、アカネちゃん。実は俺はカナエの彼氏ではなくて……」
「え? それじゃあ何ですか? ヒモ?」
「違います」
「まさか……カナエちゃんを騙そうと……」
「してません」
「もう彼氏で良いじゃないですか! ああ見えて、尽くすタイプだと思いますよ!」
……疲れるな。
「とりあえずその話は置いといて、今日は仲間の武器を見に来たんだ」
「お客様ですね! 失礼しました。どのような武器をお求めに? と言ってもうちの店は刀しか置いてないんですけど……」
「そうみたいだな。とりあえず、この店に置いてある一番質のいい刀を見せてもらえないか?」
「え……お高いですよ?」
「分かってるよ」
「お金持ちなんですね。私のことも養ってください」
「何言ってんの?」
アカネはよく分からないことを口走りながら、店の奥に飾ってあった一振りの刀を持ってきた。
「こちらが当店で一番の刀です。刀は剣とは重心も扱い方も違いますから、いきなり振り回したりしないでくださいね」
「へえ……」
鞘を左手で持ち、柄に右手を添える。そしてスッと刀を抜く。
「――って、なんでそんな自然に抜けるんですか!?」
それを見たアカネが大声を出した。
……何をそんなに驚いてんだ?
「いや、普通に抜いただけだぞ?」
「初めてなんですよね!?」
「初めてだけど?」
店員は俺と刀を交互に見たあと、なぜか頭を抱えた。
「いや、よく見たら、俺の使ってる剣に似てるな……」
刀身を鞘に戻しアカネに渡した後、俺はルシフェルに貰った『斬魔神刀』を引き抜いた。
「……きれいな刀身ですね」
アカネはキラキラと目を輝かせ、斬魔神刀をうっとりと見つめる。
「これ……刀じゃないんですか?」
「いや、剣だと思って使ってたけど……」
「うーん……言われてみれば、普通の刀とは微妙に違うかなぁ」
アカネは斬魔神刀を覗き込むようにして、首を傾げた。
「あぁ! もう収めちゃうんですか!?」
俺が斬魔神刀を鞘に収めると、アカネが非難の声を上げた。
「そりゃそうだろ。危ないし。見世物でもないからな」
う゛ーと唸りながら、俺に恨めしそうな視線を投げつける。
「それより、この刀、試し切りはできるか?」
「ほんとに買うつもりですか!? できますとも! すぐに準備しますね!」
アカネはそう言うと脱兎のごとく店の奥へ走っていった。
……騒がしいやつだな。
「お待たせしました! 準備ができたので店の奥へどうぞ!」
アカネの案内で店の裏庭へ通されると、そこに、一本の巻き藁が用意されていた。
……大丈夫かな。
「ささっ! どうぞどうぞ!」
やたらとテンションの高いアカネが、早く斬ってみせろと俺をたきつけた。
はぁ……。手加減しないとな……。
俺は鞘から引き抜いた刀で、巻き藁の左下から右上に向けてなぞるように斬りつけた。
――軽い。
振り切った刀を鞘に収める。
…………。
「あれ? 今斬りましたよね?」
「斬ったぞ」
「だって巻き藁が……」
……。
俺たちの間にふわりと風が吹き抜けた。
ススーッ ドサッ
「えっ!?」
巻き藁の半分が地面に落ち、アカネは目が飛び出るほど大きく見開いた。
「ほら、斬れてただろ?」
「斬れてましたけど! こんなの、初めて見ました……」
「いい刀だな。貰うよ」
「えぇ!? あっ、ありがとうございます!」
俺は巾着から金を取り出して代金を払った。
こんなところで国王の護衛の報酬が役に立つとは……しんどい思いをした甲斐があったなぁ……。
人知れず報われた努力に、俺は妙な満足感を覚えた。
読んでくださってありがとうございます!
アカネも個性あふれたキャラクターですね(*‘ω‘ *)
調子に乗って余計な事を言い始めたので削り取りました(ノ∀`)(笑)
飴の効果もあったようで良かったです( ´∀`)bグッ!
それでは、次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




