第六十二話 五忍邪
「もう一軒いくぞーい!」
「まだ飲むんですか!?」
俺は国王の肩を支え、ラングストラの飲み屋街を歩いている。
『満腹亭』を出た後、さらに二軒はしごしているのに、まだ飲み足りないようである。
……バケモノかな?
次の店を探してぶらついている時だった。
……ん?
「……ルゥよ。客がきたようじゃ」
「みたいですね。場所を移動しましょうか」
俺たちは飲み屋街を抜け、人目につかない場所へと移動した。
※※※※※
「行き止まりじゃの」
「ここならいいでしょう」
廃屋が建ち並ぶ路地の一角。少し開けた場所に移動した俺たちは、おそらく国王を狙ってきた『刺客』を迎え撃つために振り向いた。
その瞬間――
背後から国王に向かって何かが飛来する。
キィン!
俺が素早く剣で叩き落とすと、鋭い刃を備えた金属の塊が澄んだ音を立てて地面に落ちた。
……これなんて武器だっけ?
それをきっかけに、四方八方から俺たち目掛けて武器が飛んできた。
数は多いけど、それだけだな……。
すべて叩き落とすと、攻撃が収まり、今度は五人の人影が姿を現した。
赤、黒、青、黄、緑の装束を纏った刺客は、俺たちを取り囲むように位置を取った。
……黒以外はめちゃくちゃ目立ってるけど……いいのかそれで?
「我ら――」
「闇より生まれ」
「光を刈る者」
「この世界を混沌へ誘う」
「先導者――」
「「「『五忍邪』!!」」
…………。
「灰に帰せ! 『火遁』」
「闇よ縛れ! 『黒縛』」
「全てをのみ込め! 『水遁』」
「骨まで焦がせ! 『雷遁』」
「大地を揺るがせ! 『土遁』」
〘施錠〙
…………。
ごにんじゃーとやらの術は俺のスキルで不発に終わる。
呆気にとられて隙だらけになった敵を、一番近い赤から黒、青、黄、緑と順番に気絶させた。
「これほどとは……。すさまじい力じゃのぉ」
縄で縛る作業をしている俺に、国王が声をかけた。
「それなりには。どうでした? 見たかったんですよね?」
「……バレておったか。一応聞くが――」
「お断りします」
「……まだ何も言っておらんじゃろう」
「専属の護衛にー、とかいう話じゃないんですか?」
俺のツッコミに国王は口を尖らした。
じーさん何やってんの……。
「まぁ。仕方あるまい。国に喧嘩を売るような真似はせんでくれよ」
「もちろんですよ。ところで、こいつら何だったんですか?」
「さぁの。心当たりが多すぎて儂にも分からん」
……嫌すぎるだろ。俺は少しだけ国王に同情した。
※※※※※
「あ゛ー、疲れた……」
俺は用意されたホテルのベッドに倒れ込んだ。
図書館で調べものをして帰る予定がどうしてこうなったんだ……。
俺の存在が少しずつ目立ち始めていることに焦りを覚えつつ、そのまま意識を手放した。
※※※※※
「ルゥよ。世話になったな」
「いえ、ご無事でなによりです」
「何かあったらすぐに知らせるがよい」
「いえ、結構です」
即答した俺の言葉に、国王はまた口を尖らせた。
……クセかな?
「ずいぶんと打ち解けられたようで」
その様子を見ていたギルマスが苦笑いを浮かべる。
無事に今回の任務を終えた俺は、報告のため、国王とともにギルマスの部屋を訪れていた。
「アドルフよ。くれぐれも、この小僧を縛り付けるようなことはせんようにな?」
国王の言葉にギルマスは喉を鳴らす。
「承知しました」
これはありがたい。予想外の国王の援護に俺の心は少し軽くなった。
※※※※※
国王からの報酬に懐が厚くなった俺は、ギルマスの部屋を出て真っすぐ塔に向かった。
「ルシフェルー! 七大ダンジョンのこと調べてきたからちょっと教えてくれ!」
「何か分かったかい?」
俺は図書館でメモをした紙をルシフェルに渡した。
「……なるほどね。ありがとう。これは貴重な資料だよ」
「そうか。それで、『サマエル』のダンジョンはどれか分かるか?」
「そうだね……一番可能性が高いのは『狂気の沼』、かな。次に可能性があるのが『怨念の匣』だね」
「わかった。まず『狂気の沼』に向かってみるよ」
「ありがとう。よろしくね」
※※※※※
「ただいまー」
「おかえりなさい」
「あー! ルゥくん! 昨日どこ行ってたの!?」
「すまん……色々あってだな――」
マリーノの宿に戻り、ルチアたちに昨日の出来事を報告した。
「サンクリス王国の国王様の護衛……」
これにはカナエも言葉を失っていた。
「ルゥにとっては良い方向に進んだみたいですね」
「一応な」
「次は『狂気の沼』ですか……」
「どこにあるんだっけ?」
「『ブルグント帝国』の西の外れですね」
「ジークフリードの国か……あいつ、元気かな?」
「ルゥくん! 『ブルグント帝国』の皇帝とも知り合いなの!?」
「……一応な。ルチアも知り合いだぞ」
カナエは魚のような顔で口をパクパクした。
「凄すぎて理解が追いつかないよ……」
「俺たちの仲間になったんだから、すぐに慣れるさ」
「……慣れるかなぁ」
「大丈夫ですよ」
不安そうな顔を浮かべるカナエに、ルチアが優しく声をかけた。
ブルグント帝国か……今回もまた面倒ごとが起こるんだろうな……。
厄介ごとを引き寄せる体質に気づき始めた俺は、窓越しに空を眺めて溜息をついた。
読んでくださってありがとうございます!
またまた作者の遊び心が爆発しました!(ノ∀`)笑
この話を書く中で、一番時間を使ったのが口上と術の名前です( *´艸`)笑
楽しんでいただけたら幸いです!
それでは、次話もお楽しみに!(*‘∀‘)ノシ




