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第五十六話 刀の正体

 俺たちの存在に気づいたのか、黒仮面はゆっくりこちらに顔を向けると……慌てて逃げ始めた。

 この野郎!


「逃がすか!」


〘施錠〙


 ズシャ!


 俺のスキルで黒仮面の動きを封じると、勢いよくその場に倒れ込んだ。


「ルゥくん……今、なにしたの?」


「すまん、説明は後だ」


 俺は抱えていたカナエを下ろした。


「俺から離れないでくれ」


 周囲を警戒しながら黒仮面に近づいていく。

 左手の反応が少しずつ強まっていく……。

 手が届く距離まで近づいた時、黒仮面の持つ刀が怪しく光を放った。

 そして――


「カナエ?」


 カナエがふらふらとおぼつかない足取りで黒仮面に近づき、刀に手を伸ばす。


 ――こいつか!


〘施錠〙


 グギャァァァァァァアアッ!


 断末魔が河原に響き渡り、刀は塵となって消え失せた。

 そして……俺の左手の紋様も反応を失った。


「あれ? 私……」


 よかった……。正気に戻ったか。


「終わったよ。そいつが黒仮面だ。捕まえて帰ろう」


「……説明は?」


 ……。


「色々終わらせてからでいいか?」


「約束だからね?」


「……はい」


 気を取り直して黒仮面に近づき、肩に担ごうとして……あれ?


「こいつ……女か」


「え? ほんとだ……」


 よく見ると、うっすらと胸元が膨らんでいる。

 仮面を剥ぎ取ると、艶のある黒髪がさらりとこぼれた。


「え!? アカネちゃん!?」


「……知り合いなのか?」


「う、うん……私が贔屓にしてる、刀鍛冶の娘さん……」


 はぁ……。カナエの知り合いなら、このままギルドに突き出すのはしのびないな……。


「とりあえず、場所を移動しよう」


 俺たちは河原を後にした。


 ※※※※※


 そして再びカナエの家。

 アカネは床に敷かれた布団の上に横たわっている。

 まさか戻ってくることになるとは……。


「どうぞ」


「ありがとう」


 カナエが淹れてくれたお茶をすすると、少し気持ちが落ち着いた。


「アカネちゃん、目を覚まさないね……」


 カナエは心配そうにアカネを見つめている。


「すまん。それは俺のスキルのせいだ」


「え!? ルゥくんの!? じゃ、じゃあ早く起こしてあげてよ!」


「その前に……俺のことを話すよ」


 俺の真剣な眼差しを受け、カナエは固まった。


「話して、くれるの?」


「そう約束したからな」


「……ズルい」


 カナエは何かを呟いた。


「ん?」


「なんでもない! さあ! 話して!」


「俺は――」


 ※※※※※


「ルゥくん、他には隠してることない?」


「……もう全部話したよ」


「ほんとかなぁ……」


「ほんとだって」


 このやり取りは三度目だ。

 レベルと使徒の話をした時。悪魔と世界の仕組みを説明した時。そして、塔と悪魔の関係を話し終えた今。

 最初こそ驚いていたものの、だんだん面白くなってきたようで、根掘り葉掘り聞いてくるようになった。

 ……もう話すことないよ。


「そっか。それじゃあ、アカネちゃんが持ってた刀が……」


「悪魔だったと俺は睨んでる」


「どうやって手に入れたんだろ……」


「そうだな。そろそろ起こそうか」


〘開錠〙


 俺がスキルを使うと、しばらくしてアカネが目を覚ました。


「アカネちゃん!」


 カナエがアカネに抱きつく。


「あれ? え? わたし……」


 アカネは状況が分からず戸惑っている。

 そりゃそうだ。


「カナエ。アカネちゃんに説明してあげなよ」


「はっ! そうだよね。ごめんアカネちゃん!」


 カナエはアカネを解放して、視線を合わせた。


「アカネちゃん。ここ数日の記憶、ある?」


「記憶? えっと……あれ? わたし、『奈落』にいたはずじゃあ……」


 ……やっぱり刀に操られていたっぽいな。その間の記憶もなさそうだ。


「その話、詳しく聞かせて?」


「えっと、『奈落』の調査でギルドに駆り出されて……『奈落調査隊』で知らない冒険者とペアになって、十階層を調べている時……」


 俺とカナエは視線を合わせて頷いた。


「その冒険者の特徴、覚えてる?」


「特徴? えーっと……ひょろっとしてて強そうじゃなかった」


「……他には?」


「なんか、変な話し方してた……『である』ってぶつぶつ言ってたから、ちょっと離れてた」


「それは正解かも」


 苦笑いを浮かべるカナエとは対照的に、俺は今のアカネの言葉が引っ掛かった……なんだ?

 『である』……どこかで聞いた気がするんだが……。


「あ!」


「「えっ?」」


「すまん、何でもない。アカネちゃんの最後の記憶に、その冒険者の姿はある?」


 問いかけた俺をアカネは怪訝そうな顔で見る。


「……あなた、だれ?」


 ……うん、知らない男を警戒するのは正しい反応だよ。


「あっ、この人はー……そう! 私の彼氏! 紹介するね! ルゥくんだよ!」


 えっ!?


「えっ!? カナエちゃん彼氏できたの! おめでとう! 良かったね!」


 はしゃぐアカネと苦笑いのカナエの姿を、俺は呆然と眺めることしかできなかった……。

読んでくださってありがとうございます!

カナエさん!咄嗟になに言っちゃってるの(*ノωノ)(笑)

ごまかすために仕方なくです……てへ。

という言い訳が聞こえてきそうな最後でした( *´艸`)

それでは次話もお楽しみに(*‘∀‘)ノシ

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