第四十二話 新たな管理者
転移した先から少し進むと、階層主の部屋があった。
この塔も一階層はデカネズミなんだな……。
俺は即座に『施錠』を使い、デカネズミを倒した。
すると、部屋の奥に魔法陣が現れる。
「よし。ルシフェルの塔と全く同じだ」
階層主以外のモンスターが出現しないことを確認し、俺は駆け出した。
これならそれほど時間はかからない。
※※※※※
「あれ?」
50階層の階層主を倒し、魔法陣に足を踏み入れると、ルシフェルの部屋と同じような空間に移動した。
「いらっしゃい」
目の前にはすごく美人で落ち着いた雰囲気のおねーさんがいる。
ルシフェルは『彼』って言ってたんだが……。
「ウリエル様ですか?」
「ええ。そうよ。そういうあなたは、ルシフェル様の使徒ね?」
「はい。そうです」
「ものすごい勢いで塔を駆け上がってくるものだから、驚いたわよ。思わず招待しちゃった」
なるほどな。そういうことか。
「すみません。あなたに聞きたいことがあって」
「なにかしら?」
「ルシフェルが……あなたのことを『彼』って言ってたんですけど……男なんですか?」
…………。
「ぷっ! あははは! いきなりそんなことを聞くなんて……面白い子ね、あなた」
……そんなに面白いか?
「私たち管理者に『性別』という概念はないのよ。だから、自分が好きな姿を『選択』しているの。覚えておいて」
「教えてくださってありがとうございます。それで……俺はルシフェルの使徒として動いてるんですが、仲間を転移させる方法を教えてほしいんです」
「ふーん……集団で転移したい、ということかしら?」
「そうです」
「そう。あなたの仲間に、魔法を使えるギフトの子、いる?」
「一人います!」
「それなら……これを使いなさい」
ウリエルは何もない空間から一冊の分厚い本を取り出し、俺に差し出した。
「分かりました! ありがとうございます!」
「大変だけど、頑張ってね」
「はい!」
ウリエルの言葉は、世界を救う使命を背負った俺に対するものだと……その時の俺は勘違いしていた。
※※※※※
「ルゥさん……この魔法書、一ページ読むのに半日かかるわよ……」
急いでソドムへ戻り、サリアに本を渡すと、彼女はざっと中身を確認して頭を抱えた。
「……まじか。何ページくらいあるんだ?」
「500ページはありそうね……」
もの凄く恨めしげな視線を送ってくるが、こればっかりはサリアに頑張ってもらうしかない……。
「……が、頑張ってくれ」
俺はそれだけ言い残し、逃げる様にラングストラの塔へ戻った。
※※※※※
「さて、行くか」
俺は羽に手を当てる。
『奈落』
転移した先でもやることは変わらない。
階層主を倒して進む。それを繰り返していると、広い空間に転移した。
「おぬし……何者だ?」
いかつい風貌のおっさんが腕を組んで立っていた。
「初めまして。ルシフェルの使徒です。あなたは?」
「なるほど……あのお方の。これは失礼した。拙者はラグエルと申す」
ラグエルは腕と共に警戒心も解いてくれた。
しかし、珍しい話し方だな……。
「して、ここへはいかにして参ったのだ?」
俺はラグエルに経緯を説明した。
「なんと……外でそのようなことが起きているとは……おぬし、人間の身でありながらようやっておるな」
「まぁ、おかげで得るものも多いですし」
「ふっ……そうか。しからば、務めに励めよ」
「ありがとうございます」
塔から出ると、肌に張りつくじめっとした空気と気温の高さに驚いた。
「ここが、マリーノ共和国か……」
とりあえず『奈落』の情報を集めないと……。
俺は冒険者ギルドを探すことにした。
なんかみんな……変わった髪型してるな……。あ、ここだと俺の方が変わってるのか?
近くにいた通行人に道を尋ね、たどり着いた冒険者ギルドは、平屋づくりの大きな建物だった。
……なんか、全然造りが違うんだな。
引き戸を開けて中に入ると、立て看板が目に入った。
『こちらでお履き物をお脱ぎください』
……は? 靴脱ぐの? なんで?
俺はしぶしぶ靴を脱ぎ、備え付けられた下駄箱に入れようと試みるが……狭くて入らなかった。
靴を巾着に収納して、板張りの廊下を進むと、すぐに開けた場所に出た。
見慣れない景色に立ち止まっていると、横から女性に声をかけられた。
「いらっしゃい。異国の方ですね? 依頼をお探しですか?」
「あ、ああ。えっと、『奈落』の場所を確認したくて……」
「『奈落』ですか。失礼ですが、ランクを確認させていただいても?」
……やっぱここでもランク制限があるのか。
「いえ、俺はポーターで、メンバーから確認してくるように頼まれたんです」
「……そうでしたか。念のため、PT名を教えていただけますか?」
「『対の刃』です」
女性は平机まで移動して、見慣れない魔道具を操作した。
「お待たせしました。確認がとれました。それでは、こちらをお持ちください」
受け取った一枚の紙は、奈落の場所が描かれた地図だった。
「何とかなった……」
こういうとき、ルチアやサンタナがいてくれると助かるんだけどなぁ……。そんなことを考えながら歩いていると――
カツン
何かがぶつかり合った音がした。
「おうおう! てめぇ、どこの国のもんだぁ? 鞘当てるたぁ、いい度胸してんじゃねーか!」
いや、お前が当ててきたんだろ……。
「すみません。隣のサンクリス王国から来たばかりで……こちらの文化もよく知らないですし、見逃していただけませんか?」
「ほぉー。殊勝なこころがけじゃねぇか。もちろん、金さえ払えば見逃してやるぜ?」
男は顎の下に手を当て、俺の全身を舐めるように眺めた。
……気持ち悪い奴だな。
「……路銀は最低限しか持ってなくて……すみません」
「それじゃあ、体で払ってもらおうか。お前の見た目なら、いい客がつきそうだ」
ゾワッ
その言葉に鳥肌が立つ。
走って逃げようとしたその時――
「お前たち! 天下の往来で何してる!」
女性の声が響き渡った。
「ちっ」
男は舌打ちすると、即座に逃げていった。
「あなた、大丈夫だった?」
駆け寄ってきた女性が俺に声をかける。
「ありがとうございます。助かりました」
「異国の方ね。ごめんなさい。たまに、さっきの男みたいに因縁をつける輩が現れるの……」
……ぶっそうな国だな。
「そうなんですね……。まだ何もされてませんし、大丈夫ですよ」
俺が立ち去ろうとすると――
「ちょっと待って! せっかくだから、ごはん食べに行かない?」
……なぜか食事に誘われた。
読んでくださってありがとうございます!
新章スタートです!\(^o^)/✨
一話で管理者が二人も登場するという暴挙( ゜Д゜)!
もうちょっと出し惜しみしなさいよ……と呆れられても仕方がないところです_(┐「ε:)_(笑)
最後に登場した女性は何者なのか!次話をお楽しみに( *´艸`)




