第四十一話 終わりと始まり
「ぐっ……キマイラは……どうなった?」
目を覚ましたエリオットは、弱々しく声をあげた。
「なぜかわかりませんが、勝手に動かなくなりましたよ」
エリオットを安心させるように、サンタナは優しい声で答えた。
「そうか……『進化の秘宝』に何らかの不具合が生じたのかもしれんな……」
そう言うと、ハッと目を見開き、勢いよく上体を起こした。
「サムヤサ様は!? ぐぅっ……」
「まだ動いてはいけません! お体に障りますよ。サムヤサ様は……屋敷の中にはいらっしゃらなかったようです」
未だ煙を上げる屋敷を振り向き、エリオットがつぶやいた。
「何ということだ……サムヤサ様……」
力なくうなだれるエリオットを、俺たちは静かに見守った。
※※※※※
「巻き込んでしまい、すまなかったな。それと、怪我人を助けてくれたそうで、感謝する」
「とんでもありません! 困っている人がいたら、助けるのが冒険者ですから!」
俺は大げさに手を振ってみせた。
「そうか……お前たちをサムヤサ様に会わせることも叶わなかったが……」
「仕方ありませんよ。それに、私たちも夢を見すぎたかもしれません。やはり、冒険者は自分の力で強くなるのが一番ですよね」
「そう言ってもらえると、楽になる」
「それじゃあ、俺たちは帰りますね! いろいろと大変そうですが、頑張ってください! 応援しています!」
その場を去ろうとする俺たちを、エリオットが引き止めた。
「お前たち、もう一度名前を教えてくれないか?」
その言葉に、俺とサンタナは顔を見合わせた。
「ウルです!」
「ミツハです」
名前を確認したエリオットは、満足そうに頷いた。
※※※※※
「疲れた。いやー、なんとか乗り切ったなー」
「お見事でした」
「見事だったのはサンタナだよ。俺一人じゃなんともならなかった。ほんと、一緒に来てくれて良かったよ」
「光栄でございます」
ソドムへ戻る帰り道。ウルとミツハの仮面を脱ぎ捨て、俺たちは普段通りに話をしていた。
「とりあえずサムヤサは倒したけど、早いとこ『七つのダンジョン』の方も封印しないとなー。どこのダンジョンなんだろ……」
「おそらく、『奈落』でしょう。エリオット殿がサムヤサに出会ったとおっしゃっていましたし」
「あれ? そうだっけ?」
いかんいかん、完全に聞き逃していたようだ。サンタナありがとう。
「『奈落』って、どこにあるか知ってる?」
「隣国の『マリーノ共和国』ですな。首都『ティターノ』から二日ほどの場所だったかと。ソドムからですと……半月はかかるでしょう」
「そうか……」
ついに、出番がやってきたな。
俺は静かに輝きを放つ右耳の羽に手を添えた。
※※※※※
「えーっ! 師匠、マリーノまで行っちゃうんですか!?」
帰って皆に事情を説明すると、リーズが不満そうに声を上げた。
「ダンジョンコアを封じるだけだ。そんなに遅くはならないさ」
「……そんなこと言って、また――」
「おっと、それ以上は言うな」
俺は慌ててリーズの口を手で塞いだ。
「お一人で、行かれるのですね?」
「ああ。この移動手段が使えるのは、俺だけらしいからな」
俺は耳の羽を指で示した。
「しかし、便利だなー、それ」
物欲しそうな顔で見るグラン。
「移動した先の塔を攻略するまで外に出られないらしいけど、やってみるか?」
「……いや、いい」
「この先のことも考えると……私たちも何か移動する手段を考えておいた方がいいと思います」
シルが真剣な表情でそう提案する。
「そうですね! 何かいい方法を考えましょう!」
「ルゥさん、ルシフェル様に、一度確認してもらえるかしら?」
皆が一丸となって、これから先のことを考えてくれる。……ありがたいな。
「分かった。聞いておくよ」
その日は久しぶりに皆で過ごした。
※※※※※
「それじゃ、行ってくるなー」
「「「行ってらっしゃい」」」
皆に見送られてソドムを出発した俺は、ラングストラの塔へ直行した。
「ルシフェルー! サムヤサ倒したぞ!」
「ほんとかい! よくやってくれた! 大好きだよ!」
ルシフェルが俺に抱き着く。
「お、おいおい、大げさだな……」
こんなルシフェルは初めてだ。
頬に口を寄せてくるルシフェルを、手で遠ざけた。
「これから『七つのダンジョン』へ向かおうと思ってるんだ。前に貰った、これを使ってさ」
「うん! ついにこの時が来たね! 僕も楽しみだよ」
「行き先って、どうやって決めるんだ?」
「えっとね……羽に触って、ここへ行きたいって念じてくれれば、最寄りの塔まで移動できるよ」
「……凄すぎるだろ」
「そう? 照れるなぁ」
思わず声に出ていたようだ。ルシフェルがますます嬉しそうな顔をする。
「あと、俺の仲間を移動させる方法って、なんかないか?」
「うーん……ルゥの仲間かー……ないこともないけど……」
「ほんとか! 教えてくれ!」
「僕より、ウリエルに聞いた方がいいかも。彼の専門だからね」
「そうなのか……。分かった。どうやったら会える?」
「簡単さ。塔を攻略すれば、勝手に現れるよ」
なるほど。ここみたいになるってことか。
「彼のところに行くなら、ダンジョンより前の方がいいかもね」
「……なんで?」
「きっと、時間がかかるからさ」
「……なんの?」
「そのうち分かるよ。行ってらっしゃい」
ルシフェルはそう言って微笑んだ。
こうなった時のルシフェルは何を聞いてもはぐらかすだけだ。……完全に面白がってるもんな。
俺は羽に手を当てて、念じた。
『ウリエルの塔』
視界が歪み暗転する。
……ここは。
もはや懐かしさすら感じる、試練の塔の中だった。
それじゃあ、さっさと攻略しますか。
待ってろよ! ウリエル!
読んでくださってありがとうございます!
このお話でサムヤサ編は完結です!ヾ(≧▽≦)ノ✨
ここまで書いてこれたのも、皆さんの応援のおかげです!本当にありがとうございます!m(_ _)m
次話からは新たな冒険のスタートとなります。
意味深なタイトルですが、そのままの意味でした(笑)
それでは、続く新章もお楽しみください!( *´艸`)




