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第四十話 後始末

「これで、いくらかマシになってくれるといいけど……」


 俺は鼻の穴に布切れで作った鼻栓を突っ込み、覚悟を決めた。


「行くぞ。……臭ぇ!」


 鼻栓の効果は極小だった。

 とりあえず、サムヤサが持っていた『種』が床に転がっていたので回収する。それ以外にも研究机の上にあった『種』らしきものや、なんとなくヤバそうな気配を放つものは、片っ端から『施錠』して回収した。


「……こんなもんかな。後は……エリオットの反応次第か。……あ」


 俺は屋敷を出ようとして、あることを思い出し、固まった。


「ここにいる奴ら、どうしよう……」


 一人ひとり『開錠』していくことを考えると、ダルくて仕方がない。


「試してみるか」


 俺は屋敷から出ると、少し離れた場所で屋敷全体を視界に入れる。


〘開錠〙


 もう一度屋敷に近づき、外から中の様子を窺うと……眠っていた使用人や研究者たちは、ちゃんと目を覚ましていた。


「……上手くいったか」


 安心した俺はその場を離れ、サンタナと別れた丘へ戻った。


「おかえりなさいませ」


「ただいま。サムヤサは倒したよ」


「おめでとうございます。お疲れさまでした」


 サンタナは俺の言葉に目を細めた。


「このまま帰ってもいいんだけど……エリオットの反応も確認した方がいいよな?」


「はい。私もそう思います」


 地面に寝かされているエリオットへ視線を落とす。


「それじゃあ、起こすか。あ、芝居も続行な?」


 俺の言葉にサンタナは少し口を釣り上げた。


〘開錠〙


「エリオット様! エリオット様!」


 エリオットの体を揺すりながら声をかける。うっすらと目を開いたエリオットが、うめき声を漏らした。


「うっ……私は……」


「良かった! エリオット様、急にふらついて倒れちゃったんだよ! 大丈夫?」


「……倒れた? いや……特に不調は感じないが……」


 自分の体を見回し、首をかしげるエリオットにサンタナが声をかける。


「普段からお忙しいのでしょう……疲れが溜まっていたのでは? 私も以前、無理が続いた時に急に気を失ったことがありますよ」


「……そういうものか? 確かに忙しい身ではあるが……」


「目を覚ましてくれて良かったですよ! サムヤサ様のところへ行きましょ!」


「サムヤサ様……そうだったな。すまなかった。それでは行こうか」


 エリオットは立ち上がり、体についた土を払うと、屋敷へ向かって歩き出した。

 屋敷へ続く門を過ぎた所で、エリオットが立ち止まる。


「何か、様子がおかしい……」


 その時、屋敷から立ち上る煙が見えた。


 キャーーッ!


 響いた悲鳴に即座に反応したエリオットは、全力で屋敷に向かい、勢いよく扉を開け放った。


「こ、これは……いかん!」


 後ろから中の様子を覗き見ると、屋敷の中はあちこちで火の手が上がっていた。そして――


「……キマイラか?」


 屋敷の玄関ホールで、キマイラに似たモンスターが暴れまわっていた。

 エリオットはキマイラを止めるべく剣を抜き、斬りかかる。しかし、その一撃はあっさりと避けられた。


「あのモンスターは……キマイラという奴ですか?」


 サンタナが俺に尋ねる。


「そのはずなんだけど……俺の知っているキマイラとは違う。多分……『進化』させられたんだろうな」


「なんという……」


 Aランク冒険者であるエリオットの攻撃をことごとく回避し、キマイラは気色の悪い笑みを浮かべながら一方的に攻め立てている。


「ぐぁぁぁ!」


 キマイラが振るった蛇の尾を避けきれず、エリオットは壁に吹き飛ばされ……そのまま気を失った。


「仕方ない。手を貸すか……」


〘施錠〙


 ズンッ!


 キマイラの巨体はあっさりと床に崩れ落ちる。


「はぁ……。サンタナ。逃げ遅れた奴らを助けるぞ」


「承知いたしました」


 俺たちは二手に分かれ、阿鼻叫喚の巷と化した屋敷の中を走り回った。


 ※※※※※


「助けてくれて、本当にありがとうございました」


 比較的軽傷だった使用人が俺に礼を言う。


「エリオット様に連れてきてもらったら、とんでもないことになってるんだもん! びっくりしたよ!」


 ちなみにエリオットは傷の手当てを受けている。まだ目を覚まさないところを見ると……かなりのダメージだったようだ。


「一体、何があったんです?」


 サンタナの問いかけに、使用人は顔を青ざめ、震える声で説明を始めた。


「それが……屋敷の地下で、厳重に管理されていたはずのキマイラが、なぜか急に抜け出してきて……私たちで止められるはずもなく……」


 ……あれ?

 俺の背中に嫌な汗が流れる。


「そうでしたか……しかし、なぜか急に動かなくなったんですよ。そのおかげで我々も屋敷に入ることができたのですが……」


「私たちにも、詳しいことは分かりませんが、あなた方が来てくださって、本当に助かりました。ありがとうございます」


 使用人はそう頭を下げ、怪我人の介抱に戻っていった。


「……疑われてはなさそうだな」


「はい。問題ないかと」


「あとは、どのタイミングで抜け出すかだが……」


「彼が目を覚ますまで、お待ちしましょう」


 本当は一刻も早く逃げ出したいんだが。

 ……やれやれだ。

読んでくださってありがとうございます!

ルゥ、おまえ……やったな?

ぜひ突っ込んでやってください^m^(笑)


なんだかんだで40話です!これも読んでくださっている皆さんのお陰です。

本当にありがとうございます。

まだまだ書き続けていきますので、これからも応援よろしくお願いします!

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