第三十二話 グランの成長
「ってなわけだ。サリア先生はどう思う?」
「私に聞かれても……」
サリアは首を傾げ、深い溜息を吐いた。
その日の夜。いつものように、みんなが俺の家へ集まった。俺は今日集めた情報を共有し、一番頼りになるサリアへ話を振ったわけだが……。
「正直、ルゥさんに聞くまで『悪魔』の存在も知らなかったし、『サムヤサ』も初めて聞く名前だわ……でも……」
「でも?」
「『十賢人』はわりと……というか、かなり有名よ?」
……まじかー。俺はグランに顔を向ける。
グランは「え? お前知らないの?」とでも言いたげな顔で、コクリとうなずいた。
またかよ!! 俺だけ知らないやつ!!
「そうだったのか……。俺に常識がないことはもうわかった」
……おい。うなずくんじゃあないよお前たち。
「だから『十賢人』について教えてくれ」
「……ルゥさんは『イーリス教』って知ってる?」
「えーっと……たしか、なんかの宗教だろ?」
「師匠……それほとんど何も知らな――ひっ」
俺は目力でリーズを黙らせた。
「そう、『宗教』。具体的には、『人間が最も優れていて、人間こそが、この世界に救いをもたらす唯一の存在』っていう教えらしいわ」
「なかなか尖った教えだなー。それで?」
「その教えを最初に広めたのが『十賢人』だと言われてるの」
「へぇ……あれ? ってことは『十賢人』ってもう死んでる?」
「そうね。少なくとも何百年も前の話だから、とっくに亡くなってると思うわよ」
……なんだ。心配して損した。
「その『イーリス教』ってのは、どれくらい信仰されてるんだ?」
「どうなのかしら……十人に一人くらい?」
「いや多いな」
「まぁ、人間にとっては受け入れやすい教えだもの」
「因みにお前らは?」
俺の問いかけに全員が首を振った。
「別に、他人に迷惑をかけなければ、何を信じたっていいんだけどなぁ……」
「『進化の秘宝』だっけ? どれくらいやばいんだ?」
「グランが二倍強くなって、二倍大きくなります。物理的にも」
ダイラがうなずく。
「ちゃんと分かるように説明しろよ!」
「じゃあ、ちゃんと最後まで聞けよ? まず、筋肉が内側から膨れ、皮膚は割れ、血まみれになりながらうねうねと――」
「俺が悪かった! もう聞きたくない!」
気づいたらグランだけでなく、女性三人まで口元を押さえて青ざめていた。
「コホン。そんなわけで、『進化の秘宝』を作ってるヤバい奴を捕まえたんだ」
「あの、その人は、『サムヤサ』って悪魔? から作り方を聞いたんですか?」
「いや、まだそこまでは確認できてない。『進化の秘宝』をばらまいていた奴は、『サムヤサ』の事を知っている様子だったんだが……」
「死んだんだったな……」
「そんなわけで、俺はもう一度ソドムへ戻って、あの女から話を聞かなきゃいけない」
「「えぇー」」
リーズとシルが残念そうな声を上げた。
「話を聞きに行くだけだ。またすぐ戻ってくるよ」
「そんなこと言って、また事件に巻き込まれるのが師匠じゃないですか」
……おい、やめろ。リーズの言葉が呪いのように俺の心にまとわりついた。
「あ、そうだ。ソドムに行く前に、ちょっとだけ付き合ってくれよ」
「ん? なんだ?」
「……自分がどれくらい強くなったのか、試したい」
グランの目はいつにもなく真剣だった。
「……分かった。明日の朝、やろうぜ」
翌朝。
俺たちは街から離れ、人気のない平原へ来ていた。
「ここなら問題ないな。じゃあ、始めようか」
「……おう」
少し離れた場所では、女性陣とダイラが見物している。
『そんな面白い戦い、見逃せるわけないじゃないですか!』
リーズはついに本音を隠さなくなったようだ。
グランが剣を抜き、構える。
そして――
ギィン!
一瞬にして間合いを詰め、俺の脇を狙って剣を振りぬいた。
思ってたより、速いな。
俺が剣で受け止めると、グランは間髪入れず足払いを放った。
……やるじゃん。
俺が後方に下がる速度に合わせてグランが迫る。
息をつく間もないほど、流れるように連続で剣を振るうグラン。
その目にはおごりも、焦りも見えない。
剣に意識を向けさせ、ときおり体術で崩しにかかる。
……楽しくなってきたぜ!
俺の斬り落としを、グランは距離を開けてかわす。
そして――
〘千刃烈華〙
ここでスキルか!
その技の名に偽りなし。千の刃が全方向から俺を襲う。
「おぉぉぉ!」
俺は一点に集中して全力で剣を振りぬいた。
ギャリンッ!!
放った斬撃が、無数の刃の中に穴を空ける。
俺はそこから瞬時に駆け抜けた。
ドドドドドゴォォォォ!!
……あっぶね。
砂塵が晴れる。俺がいた場所は地面が深くえぐれ、破壊力の高さを物語っていた。
そして――
「まいった」
レベルを超えたスキルの反動で、地べたにへたり込んだグランが素直に負けを認めた。
「おい。お前、俺を殺す気か?」
「……死なないのが分かってるから、全力でやったんだよ」
「しかし、強くなったなー。レベルはいくつまで上がったんだ?」
「72。レベル100はまだまだ遠いぜ……」
俺の口元が引きつった。
何言ってんだコイツ。
……俺があれだけ苦労したのに、もう72だと?
……これがギフトの差かぁ。
「しかし、あんな力づくな方法で抜け出すとは思わなかったぜ」
「ん? まぁ、こいつのおかげだな」
俺は腰の『斬魔神刀』をポンポンと叩いた。
「いいなー。その剣、くれよ」
「アホ抜かせ」
「……ぷっ。あははは!」
俺たちは声を上げて笑った。
※※※※※
「それじゃ、行ってくるな」
みんなに見送られ、俺はソドムの街へ向かう。
あの女が、ちゃんと話してくれるといいんだが……。
いつの間にか、どんよりとした雲が太陽を隠していた。
……嫌な予感がするなぁ。
読んでくださってありがとうございます!
色々と話を詰め込みすぎて、タイトル付けが難しく……(:3_ヽ)_
悩んだ結果、これになりました(笑)
ご感想、評価、リアクション、お待ちしております|´-`)チラッ|´-`)チラッ|´-`)チラッ|ー ゜)。。。




