第二十七話 ダンジョンと悪魔
「ぷはぁぁ」
ダンジョンを出たとたん、開放感で体中の空気が抜けだした。
「何とか……なったわね……」
疲れ切ったサリアはその場にへたり込む。
「サリアのおかげだよ。本当にありがとう」
「凄かったよ! 流石サリア!」
「かっこよかったです」
俺たちがサリアを称賛する中、グランだけはなぜか様子がおかしかった。
「……グランは? 何か言うことはないの」
「……おう。ありがとな」
おやおや? グランくん?
「師匠! シル! ちゃっちゃと街へ戻りましょう!」
「おう! そうだな!」
「はい!」
俺たち三人は顔を見合わせて頷き、歩き始める。
「えっ! ちょっと待って……もう少し休ませてくれてもいいじゃない!」
「休んでていいぞ。グラン!ちゃんとサリアをエスコートしろよ」
「わっ、わかってる!」
さて、どうなる事やら……。
「うまくいくといいですね!」
「そうだな」
「大丈夫だと思いますけど」
「そういえば……師匠はその……恋人とかいないんですか?」
「いるわけないだろ」
「「……へぇ」」
「こんなに忙しいのに、どこで恋愛なんてしてる暇があるってんだ」
「そ、そうですよね! そっかー」
「……ルチアさん、きれいな人ですよね」
……な、なんだこの空気……非常にめんどくさいんだが。
「そうだな。俺も、きれいな女性だと思うぞ」
「し、師匠はルチアさんみたいな人がタイプだったりしますか?」
「タイプって言われてもピンとこないなー。……強いて言うなら、俺の隣で、一緒に歩いてくれる人が理想だな」
「「なるほど」」
……なにがだよ。
「師匠! 今日も塔でレベル上げしましょう!」
「私も頑張ります!」
急に気合が入った二人に、俺は置き去りにされた気分だった。
「「行ってきます!」」
「おう、頑張れよー」
塔に入る二人を見送り、俺もルシフェルの元へ移動した。
「ルシフェルー! また変な奴がいたんだけど!」
「はいはい。今度は何が出たんだい?」
「角を生やした『影』! 見た目や雰囲気は悪魔っぽかったんだけど、この紋様は反応しなかったんだよなー」
「へぇ……。七つのダンジョンの一番奥で?」
「うん。そうだよ」
「そうか……よくやってくれた。その影は『ダンジョンコア』だ」
「ダンジョンコア?」
「簡単に言うと、『ダンジョンの心臓』。そして、七大ダンジョンにおいては、悪魔の力の源でもある」
「……つまり?」
「んー……ルゥが分かるように説明するのが難しいなぁ」
「そこをなんとか」
「……とりあえず、影を倒すとダンジョンは活動を停止する。そして、ダンジョンとつながっている悪魔も大きく弱体化する。ここまでは分かる?」
「……なんとか」
「それで、その影とは何階で遭遇したんだい?」
「ん? えーと、68階層だな」
「それなら、そのダンジョンとつながっていた悪魔のレベルは68だったことになる」
「おお! そうなのか! それで、影を倒して、その悪魔はどうなったんだ?」
「レベル1まで下がったはずだよ」
「うおぉ! 俺ナイス!」
ルシフェルは満足そうに頷いた。
「そう。本当に良かったよ。それに、影を消された悪魔は、再び影が現れるまで、レベルを上げることすらできなくなるんだ」
「ん? 再び影が現れるまで?」
「そう。人間の負の感情が集まると、いずれ影は復活する。……と言っても、何百年とかかるけどね」
「……それならよかった。でも、完全に消え去るわけじゃないんだな」
「そこでだ。影を倒した状態で、悪魔を倒すとどうなると思う?」
「……どうなるって……どっちも消える?」
…………。
「正解! 凄いじゃないか! よくわかったね!」
……お? なんか、凄くバカにされてる?
「……あれ? 影が残ったままで悪魔を倒したらどうなるんだ?」
「いいところに気づいたね。影を残した場合、悪魔は一カ月程度で復活します」
……マジか。こないだ倒した『サマエル』も一カ月で復活しちゃうじゃないか……。
「さらに、ダンジョンのレベルは下がりません」
「……なんてこった」
「そんなわけで、優先すべきは『影』を倒すことなんだけど……」
「移動だけで何カ月もかかるぞ?」
「それだ。その問題をなんとかできるように、いま準備してるとこだから、もう少し待ってて」
「なるべく早めに頼むよ」
「分かってる」
そう言ってルシフェルは微笑んだ。
※※※※※
塔の前に、ルチアが立っていた。
「おかえりなさい」
その言葉に、俺の心は揺れ動いた。
「ただいま。えーっと、どうしたんだ?」
「ルゥを待っていたんです。リーズやシルに会って、ルゥも塔にいると聞いたので……」
夕日を受けた髪が、風に揺れるたび、きらきらと輝いている。
……俺は頭を振り、雑念を散らした。
「どうしたんですか?」
くすくすと笑う彼女は、とても綺麗だった。
「帰りましょう」
「そうだな。帰ろうか」
俺たちは二人並んで歩き出した。
「そういえば、レベルはどこまで上がったんだ?」
ルチアは周りを見回し、小さな声で言った。
「……65です」
……なん……だと?
グランたちが苦戦していた壁を、もう超えた……?
アイツら泣きそうだな。
……俺も泣いてるけど。
「凄いじゃないか。頼もしいよ」
俺の言葉に彼女は頬を赤らめた。
「ルゥのおかげですよ。アドバイスをもらって、戦い方を工夫するようになって、スキルも……今まで考えもしなかった使い方ができるようになりました」
「きっかけは何であれ、努力したのはルチア本人だからな。誇っていいぞ」
「ありがとうございます」
家に着くと、グランとサリアが気恥ずかしそうにテーブルを挟んで座っていた。
おやおや。
「ただいま」
「お、お帰り。遅かったじゃねーか」
「気を利かせたんだよ」
「ばっ!おまえ!何言ってんだ!」
「落ち着けって。で、どうなったんだ? お二人さん?」
俺はサリアにも視線を向けた。
「……付き合うことに、なったわ……」
サリアは顔を赤くして、下を向きながらつぶやいた。
「おお! おめでとう! 今日は宴会だな!」
「おめでとうございます!」
リーズとシルが帰ってくると、酒とつまみを買い集め、俺たちは盛大に盛り上がった。
いいね。こういうの。
翌朝。
「それでは、私はソドムに戻ります」
「えー……もう行っちゃうんですかぁ?」
ルチアの挨拶に、リーズが愚痴をこぼす。
……コイツ、昨日ルチアのレベルを聞いて「ずるいです! どうやって突破したんですか!」なんて騒いでたんだけどな……。
「またすぐ戻りますから」
ルチアは優しく微笑んだ。
「次はダイラが来ますので、よろしくお願いします」
そう言って優雅にお辞儀をした。
ルチアを見送り、対の刃たちは塔へレベル上げに向かった。
そして俺は――なぜか冒険者ギルドに呼び出されていた。
読んでくださってありがとうございます!
この物語では珍しく、恋愛パートにもなっております!
ニヨニヨして行ってネ(・∀・)ニヨニヨ
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