第二十五話 因縁と謎
グルァァァァァァァァ!
ドラゴンの咆哮がフロアを揺らす。
「ドラゴン……」
グランが呟いた。
一瞬で空気が張りつめる。だが、対の刃はドラゴンを真っすぐ見据え、誰一人怯えた様子は見られない。敵の挙動を見逃さないように、その目を光らせている。
……頼もしい限りだ。
「みんな! 気合入れていくぞ!」
グランが吠えた。
「「「はい!」」」
ドラゴンが口を開け首を後ろに反らした。
「ブレスが来るぞ!」
〘エレメントシールド〙
〘リフレクトウォール〙
リーズとシルがほぼ同時に放ったスキルで赤、青、緑、黄の四色の光が揺らめく巨大な透明の盾が現れ、更にその前方へ虹色の壁が展開される。
ドラゴンが放ったブレスは、壁に触れた瞬間、ドラゴンへ反射する。そして反射しきれなかった余波も、盾がすべて防ぎ切った。
グルゥ……
〘ロックフォール〙
ドラゴンのブレスが途切れた直後、サリアのスキルにより無数の岩がドラゴンに降り注ぐ。
グルァァァ!
ドラゴンは大きく後方へ飛び退いた。
〘グランドクロス〙
距離が開いた瞬間を狙ってグランがスキルを発動。
放たれた十字の斬撃がドラゴンの胸に深い傷を与えた。
グルァァァァ!!
「……やるじゃん」
完全に主導権を握った対の刃は、その後も危なげなくドラゴンを追い詰めていく。
「とどめだ!」
ズシンッ
グランの放った一撃が、ドラゴンの首を斬り落とした。
……出番なかった。
「どうだ!」
グランがドヤ顔で俺を見る。
まったく……。
「大したもんだよ。正直、ここまで強くなってるとは思わなかった」
「みんな! 今の聞いたか!?」
「師匠! ありがとうございます!」
「そう言ってもらえると、嬉しいわね」
「えへへ」
ここがダンジョンでなければ、そのまま祝勝会が始まっていただろう。
「この調子で、気を抜くなよ?」
「当たり前だろ!」
グランは勝ち誇ったかのようにそう言った。
ドラゴンを倒し勢いがついた俺たちは、さらにダンジョンの奥へと進む。
そして……50階層の最奥で、再び封印されている階段を発見した。
「ここに封印が施されているってことは……ここから先はSランクエリアか」
「なんてことないさ。俺たちならやれる。だろ?」
確かに、ここまでの戦いは、Aランクエリアのモンスターに対しても全く引けをとることなく、安定していた。
……しかし。
俺は一人ひとりの顔を見渡した。
「いいか。ここから先のモンスターは、おそらく塔の81階層以上に出現するモンスターだ。
一瞬の判断ミスが全滅につながる。それだけは、絶対に忘れるな」
「「「「おう(はい)!」」」」
51階層で初めに遭遇したのは『ヴァンパイアロード』だった。
……いきなり厄介な奴が現れたな。
俺は内心舌打ちしつつ――
〘施錠〙
『ヴァンパイアロード』が能力を発動する前に、その力を封じた。
「あいつの一番厄介な『魅了』を封じた!それでも厄介な相手だ。気を抜くなよ」
俺の呼びかけが終わると同時に、ヴァンパイアロードが瞬間移動でシルに迫る。
「えっ」
ギャインッ
鋭い爪の一撃を俺は剣で薙ぎ払う。
攻撃を防がれたヴァンパイアは瞬間移動で距離を取りニヤリと笑った。
「こいつは知能が高い。後衛のシルやサリアが狙われるからな。俺が後衛を守る。攻撃は任せたぞ」
「任せろ!」
勢いよく飛び出したグランは、その勢いを乗せて鋭い斬撃を放つ。
「なにっ!?」
しかしヴァンパイアロードはその体を霧と化して攻撃を無効化する。
グランの一撃はヴァンパイアロードの体をすり抜け、勢い余って体勢を崩す。
その隙を狙って、ヴァンパイアロードの鋭い爪が振り下ろされる。
〘ホーリーシールド〙
すかさず間に割って入ったリーズはスキルを使って攻撃をはじく。
〘ホーリーグラウンド〙
グルァァァァ!
シルのスキルによってフロアが聖気に包まれる。その瞬間、ヴァンパイアロードが苦しそうな叫び声を上げた。予想以上の効果だ。
〘ダークネスフォールド〙
ヴァンパイアロードの目の周りに黒い霧がかかる。
〘グランドクロス〙
グランの一撃が、ヴァンパイアロードを十字に切り裂いた。
ギヤァァァァァァ!
塵になって消えたヴァンパイアロードを確認し、俺は皆に声をかけた。
「いい連携だったぞ。特にシル。あそこで〘ホーリーグラウンド〙を使ったのはいい判断だった」
「ありがとうございます」
照れくさそうにシルは微笑んだ。
その後の戦闘も、俺が致命的なスキルを封じ、連携してモンスターを倒す作戦で階層を進んでいった。
そして68階層――
「この気配は……」
これまでとは違う、悪魔の存在に匹敵するほど禍々しい気配が漂っていた。
しかし、俺の左手の紋様は反応していない。
対の刃を見ると、全員が顔色を悪くしている。
まずいな……。
「シル、〘ホーリーグラウンド〙を使え!
皆はここで待機だ。
俺は先行して様子を見てくる」
「……気をつけろよ」
グランが悔しそうな表情でそう言った。
「ああ。無茶はしないさ」
階層の奥へ進むにつれ、体の動きを押さえつけるような嫌な空気が濃くなる。
……やはり似ている。
道中のモンスターを〘施錠〙で蹴散らし、たどり着いた最奥。
そこにいたのは――
三本の角を生やした一体の『影』だった。
あいつはヤバい!
〘施錠〙
俺は本能的にスキルを発動した。
ギャァァァァァァァァ!
耳が痛くなるほどの叫び声を上げ、『影』は跡形もなく消え去った。
「……なんだったんだ。あいつ」
俺の呟きは、無人となったフロアに空しく木霊した。
読んでくださってありがとうございます。
対の刃が成長している!
謎の影の正体は一体……この後の展開もお楽しみください(*‘∀‘)
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