第二十四話 『対の刃』
「よし! それじゃあ出発だ!」
次の日、『嘆きの壁』に潜るために必要な物資を買い込み、準備が整うと、グランが張り切って先頭に立った。
……早くダンジョンに行きたいらしい。
「あんまり張り切ると、後でバテるぞ?」
「ばっ! 張り切ってなんかねーよ!」
「……張り切ってるわね」
「張り切りすぎです」
「はい」
サリア、リーズ、シルから突っ込まれたグランは、照れ隠しをするように足早に歩き出す。
「いいからちゃんとついて来いよ! 置いてくぞ!」
「……はいはい」
俺たちは顔を見合わせて笑い、グランの後を追った。
「ここか……」
街を出て一時間、俺たちは『嘆きの壁』に到着した。切り立った崖に、格式高い装飾が施された巨大な扉がそびえ立つ。その扉からは、神聖な気配と邪悪な気配が入り混じった、不思議な空気が漂っていた。
「……雰囲気あるな」
「そうか? どこもこんなもんだろ?」
「え?」
グランが呑気に返事をした。
「グランのそういうとこ、ある意味凄いわよね……」
「いつもこんな感じ?」
「「「はい」」」
肝が据わってるのか、鈍感なだけか……。PTに加わって、さっそくグランの新たな一面を知る事ができた。
「Bランク『対の刃』だ。『嘆きの壁』に入りたい」
グランが冒険者ギルドの関係者に、PTライセンスを差し出した。
「確認しました。ご武運を」
ギルド関係者は、巨大な扉を開いた。
ついにこの日がきたのか……。浮かれているのはグランだけじゃない。俺だって、楽しみにしていた。
『世界中のダンジョンを制覇しようぜ!』
子どもの頃の、他愛もない約束。
俺たちは、その第一歩を踏み出した。
ダンジョンに入った瞬間、俺を除く四人が顔をしかめる。
「やっぱ変な感じだぜ……」
「昨日話した『怠惰』の呪いね……」
「昨日は気づかなかったけど、言われてみると確かにちょっと変ですね」
……俺は特に何も感じないが。
ふと左手を見ると、紋様がぼんやりと淡い光を放っていた。
なるほど。こいつのおかげか。
「皆さん、少し待ってください」
シルはそういうと呪文をつぶやき始めた。
〘アンチ・カース〙
シルが唱えた呪文により、俺たちの体が淡い光に包まれる。
「お! 体が軽くなった!」
「良かった……ちゃんと効果がありそうです」
「頼もしいな」
俺の言葉に、シルは照れくさそうに笑った。
「よし! これで怖いもん無しだな! みんな、ルゥに俺たちの成長を見せてやろうぜ!」
「「「はい!」」」
実際、何度か戦闘を見てみたが、対の刃の実力は確かなものだった。個々の能力はもちろん、PT連携の練度も高く、十階層までのモンスターでは全く相手にならない。
「俺の出番がないんだが……?」
「ポーターはポーターらしく、素材を回収しててくれよな!」
……ドラゴンの件が相当悔しかったようだ。
対の刃は危なげなくモンスターを蹴散らし、俺たちはそのまま十階層までたどり着いた。
「この先が十一階層か」
俺たちの前には、階下へと続く大きな階段がある。そして、その階段の入口は『封印』によりうっすらと光る結界に閉ざされていた。
「俺たちのランクだと、ここから先へは進めないんだよなー」
グランがそうぼやいた。俺は対の刃を見回す。
「消耗具合はどうだ?」
「全然! まだまだいけるぜ!」
グランの言葉に皆がうなずく。
これなら大丈夫そうだな。
「よし。このまま進もう」
俺の言葉に対の刃のメンバーは固まった。
「え、ええと、その……ここ、封印されてますよ?」
シルが不安そうに聞いてくる。
「ああ。俺のスキルで封印を解く」
「「「えっ」」」
「俺たちが通ったあとに、もう一度封印を施すから問題ない」
「「「はぁ?」」」
「ルゥさんのスキルって、そんなこともできるんですか?」
「まぁな。〘施錠〙も〘開錠〙も、その対象は人間に限らない」
……。
「流石師匠です! 私はどこまでもついて行きます!!」
リーズのテンションが限界突破した。
そして他の三人は呆れ顔だ。
「それじゃあ、行くぞ」
〘開錠〙
俺のスキルにより、封印は光の粒になって砕け散った。
「……凄い。本当に封印が……」
「早くこっち側に」
階段の内側に移動した俺は皆に声をかける。
そして。
〘施錠〙
神々しい光を放つ扉が現れ、先ほどとは比べ物にならないほど強固な封印が施された。
「……これ、ギルドに見つかったら大変じゃない?」
ジト目のサリアが俺を責める。
「ん? ……なんでだ?」
「グランは黙ってて。こんな封印、ルゥさんじゃないと解けないでしょう?」
「……ははは。まぁ、なんとかなるだろ」
俺は背中に汗をかきつつ、そう言った。
やってしまったものは仕方ない。気を取り直し、俺たちは順調に階層を更新していく。
対の刃の戦闘を見ていて感じたのは、PTのバランスの良さだ。
盾役のリーズ、前衛火力のグラン、遠距離火力のサリア、そして回復役のシル。
四人がそれぞれの役割をこなし、モンスターを最短で討伐していく。
しかし、20階層を超えたあたりで、出現するモンスターの格が上がった。
「ちっ」
『マッドエレファント』を仕留めきれなかったグランが舌打ちした。
……明らかに、モンスターを倒すまでの時間が長くなってきたな。
「……そろそろか」
俺はグランの横に並び声をかけた。
「ここからは俺も手を出すからな」
グランは横目で俺を見て、ニヤリと笑った。
「おう! やってやろうぜ!」
リーズがスキルで抑え込んでいるマッドエレファントへ、俺とグランは同時に斬りかかった。
「最高だ……」
マッドエレファントを倒した俺は、高揚した自分を抑えることができず、本音を漏らした。
「ん? なんだって? もう一回言ってみ?」
ニヤニヤしたグランが俺を煽る。
「うるせえよ!」
二人ではしゃぐ俺たちに、女性陣はやれやれと言わんばかりの視線を向けていた。
俺が戦闘に加わったことで、攻略のスピードが加速した。
適度に休憩を入れつつ、30階層に到達する。
そこで――ドラゴンに遭遇した。
読んでくださってありがとうございます!
ようやくルゥとグランを並んで戦わせることができました!( ;∀;)ヨカッタナー
PT名の由来など、思い出していただけると嬉しいです。
そして現る因縁のドラゴン……次回もお楽しみに!




