第二十話 予感的中
「……やっぱ、ついてきて良かったな」
俺の前方で激しい戦闘が繰り広げられている。
ジークフリードが帰国し、マーテルの護衛に不安を感じた俺は、ルチアに断りを入れ、気配を殺してこっそりとマーテルを護衛している。
……あ。
ギャイン
護衛の武器が弾き飛ばされる。
懐から予備の武器を取り出そうとしているが、襲撃者の刃が届く方が早い――
〘施錠〙
俺のスキルによって動きを止めた襲撃者は、護衛の反撃によって胸を貫かれた。
……ふぅ。
バレないよう、不自然にならないよう、こっそりアシストする。
……これ、めっちゃ疲れる。
戦闘は数分で終わった。
馬上のマーテルは護衛に何かを指示し、何事もなかったかのように馬を走らせた。
あのおっさん慣れてるなぁ。
全く動じない気配を見る限り、暗殺や襲撃なんて日常茶飯事なのか?……嫌すぎる。
俺は改めて、目立たずこっそり生きていこうと心に誓った。
結局、王都『ボルドリー』に着くまでの間に、五回の戦闘が発生した。そのたびに手を貸したせいで、俺の疲労は頂点に達していた。
ようやくマーテルが城下町への門をくぐる……俺が安堵した瞬間、マーテルは馬を止め、こちらを振り返った。
……うそだろ? まさか、気づかれた……? いや、そんなはずない……。たぶん、きのせい。モウカエロウ。
深く考えることをやめ、ソドムへと引き返すことにした。
「おかえりなさいませ」
俺がホテルの執務室に戻ると、ルチアが出迎えた。
もう夜明けも近いというのに、寝ずに待っていてくれたようだ。
「ただいま」
その言葉を口に出した瞬間、フッと体が軽くなる。
なんだ? 今の感覚……。
「ルゥ様、今回は私の護衛を受けてくださって、本当にありがとうございました」
「どういたしまして。まぁ、結果的に俺の都合に巻き込んじゃったけどな」
「それについては、ルゥ様がいなくても起こりえたことです。それに、ルゥ様がいなければ、この街がどうなっていたか想像もつきません」
「んー、まぁ、結果オーライだったな」
ルチアの真っ直ぐな言葉に気恥ずかしくなり、俺は話を切り上げた。
「とりあえず、今日は休ませてもらうよ。明日、サンタナとダイラを交えて話をしたい」
俺の言葉に、ルチアは名残惜しそうに微笑んだ。
「承知いたしました。ゆっくりお休みください」
「ああ、おやすみ」
※※※※※
翌日、昼過ぎまでゆっくり寝た俺は、ダイラに嫌味を言われつつ会議テーブルに着いた。
ルチア、サンタナ、ダイラ。三人の顔を順番に見回し、口を開く。
「さて、オークションではいろいろあったが、無事に終わることができて良かった。そして、課題も見えた」
三人の緊張が伝わってくる。
「やはり、三人にはレベルを上げてもらおうと思う」
「レベルを上げるのは俺も賛成だ。正直、今回の件で自分の力の無さに腹が立ってるからな。だが、どこを目指せばいいんだ?」
ダイラの言葉に俺は頷く。
「ひとまず、ジークフリードを目標にしよう」
三人は一斉に固まった。ダイラは口を半開きにし、サンタナは額に手を当てる。ルチアだけが、小さくため息をついた。
「ジークフリード様は、レベル80とおっしゃられていました……」
「そうだな。あのレベルまで強くなれば、そう簡単に死ぬこともないだろう」
全員黙ったまま、難しい顔をしている。
「大丈夫だ。俺はスキル無しでレベル100になったんだぜ? お前たちなら出来るさ」
ルチアの顔に決意が宿る。
「……私は、今回の件でルゥ様と共に生きると決めました。どんな困難であろうとやり遂げてみせます」
……え? なんか、想いが重くない?
「今より強くなるためなら、なんだってやってやるぜ」
「やれやれ、私も老体に鞭をうちましょうか」
それぞれが決意を口にした。
……三人ともやる気ならこれ以上何も言うことは無い。
※※※※※
「ふぅ。ようやく帰れるな」
サンタナとダイラに見送られ、俺はソドムの街を後にした。
たった四日離れていただけなのに、ずいぶん長い時間過ごした気がする……。色々あった。……いや、ありすぎた。まあ、悪いことばかりじゃなかったけどな。
「楽しみですね」
……隣にはなぜかルチアが居る。話し合いの末、三人は交代で塔へ通い、レベルを上げることになった。誰が最初に行くか決める段階で、ルチアが頑として譲らなかったのだ。オークションも終わったばかりなのに、仕事は大丈夫なんだろうか……。
「仕事の事はご心配に及びませんよ?」
「え?」
「顔に出ていましたよ?」
「……まじで?」
「ルゥ様は、結構顔に出やすいと思います」
そういって微笑むルチア。
俺って、そんなに分かりやすいのか……。
「まぁ、いいか。よし! 帰るぞ!」
「はい!」
きらきらと輝く朝日を背に、ルチアと並んで歩き始めた。
読んでくださってありがとうございます。
このお話でオークション編は閉幕となります。
ここまで書くことができているのは、読んでくださる皆さんのおかげです。
いつもありがとうございます!(*´▽`*)




