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第十八話 賢帝と使徒

「サンタナを呼んでくれないか?」


 ホテルの受付に、サンタナを呼ぶよう依頼する。

 現れたサンタナは、ジークフリードの姿に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに営業用の笑みを浮かべた。


「これはこれは、ジークフリード陛下、当ホテルにお越しいただき光栄でございます」


「しばらくの間、世話になりたい」


「承知いたしました。直ぐにお部屋を手配いたします」


 これこれ。素早い状況把握と柔軟な対応。サンタナを呼んで正解だった。


「こちらがルームキーでございます」


 サンタナは老兵に鍵を渡した。


「すまぬが、このホテルは会議ができる部屋を用意できるか?」


「もちろんでございます。……お連れ様を含め、三名様でよろしいでしょうか?」


「……いや、ルゥ。君にも同席してほしい。今の私たちには分からないことが多すぎる」


 少しだけ考え、俺は口を開く。


「もちろんです。その代わりと言ってはなんですが、このホテルのオーナーにも同席してもらっていいですか? おそらく陛下のお役に立てるかと思います」


 ジークフリードは少し思案した後、頷いた。


「そうだな。よろしく頼む」


「それでは、ご案内いたします」


 会議室には円形のテーブルが設置されていた。ジークフリードが上座に座り、俺に啖呵を切った老兵と、護衛騎士がそれぞれ両脇に、俺はちょうどジークフリードの対面に位置する席に座った。


「失礼いたします」


 ルチアが現れ、一瞬だけ俺と目を合わせると、優美な笑みを浮かべた。


「ジークフリード陛下。本日は当ホテルをご利用いただき、誠に光栄でございます」


 深々と頭を下げた。


「世話になる。挨拶はよい。君もかけてくれ」


「承知いたしました。私はルチア=オレントと申します。微力ながら、お役に立てることがございましたら何なりとお申しつけください」


 そう言って、俺の隣の席へ静かに腰を下ろした。


「さて、いくつか確認したいのだが、まず私はなぜここにいるのか、その理由が分からない。……お前たちも覚えていないか?」


 問われた騎士達は、戸惑いを露わに首を横に振った。

 ジークフリードはそれを確認して頷く。


「そういう事情がある。可能な限り状況を把握したい。細かいことを聞くかもしれないが、許してくれ」


 ……しっかりした賢王じゃないか。あの女悪魔に目をつけられたのが不幸の始まりだな……。


「承知いたしました。私共に分かる事であればお話しさせていただきます」


「まず、ここがどこか教えて欲しい。それと、今日は何月何日だ?」

 

 ルチアはこの街のこと、現在の日付、そしてブルグント帝国で起きている出来事について、順を追って説明した。

 ジークフリード達は状況を把握するにつれ、顔色が悪くなっていく。ブルグント帝国の現状と、自身が『狂帝』と呼ばれるようになった経緯を説明し終える頃には、ジークフリードは頭を抱えていた。


「まさか……そんな事態に……」


「……覚えていらっしゃらないのですか?」


「ああ、疑っているわけではないのだが、私の記憶にそのようなことは……」


「陛下。それは『悪魔』と呼ばれる存在の仕業です」


 俺はここで真実を伝える。


「……悪魔?」


「はい。実は、私が陛下達の元に居たのは偶然ではありません。陛下達に出会った時、陛下の傍にはもう一人、女性がおりました」


「先ほど話に出た……妃か?」


 俺は頷き肯定する。


「そうです。その妃こそが悪魔でした。私が悪魔を撃退したところ、陛下達は正気に戻ったのです」


「その悪魔は……撃退と言ったが、死体はどこへ?」


「……死体は塵になって消えました」


「……そうか」


 ジークフリードは複雑な表情で沈黙する。

 悪魔の死体が無い以上、これ以上説得力を持たせることは難しいか……。

 俺がどうするか悩んでいると、ジークフリードは何かに気づき顔を上げた。


「ルゥは、なぜ悪魔の存在を知っている?」


 さて、どこまで説明したものか……。

 俺はジークフリードと二人の騎士の顔を見る。全員が鋭い目つきで、俺が何者かを見極めようとしていた。


「これからお話しすることは、この世界の存続に関わる重大な真実です――」


 俺は、人間の負の感情がダンジョンやモンスターを生み出しているという世界の理と、悪魔が人に紛れて世界を破滅に導こうとしていることを説明した。

 そして、その悪魔を討つことが俺に与えられた使命だということも。


「私はこの世界を救うことを命じられた『使徒』です」


 そう言って、左手の紋様をかざした。


「それは!」


 ジークフリードは勢いよく立ち上がり、鎧を脱ぎ始めた。


 その右肩に刻まれていた紋様を見て、俺は息を呑んだ。


「四対の……羽根?」


「この紋様は、俺がファフニールを打ち倒すために授かったものだ」


 ……まじで?


「それって……ルシフェル様ですか?」


「いや、ウリエル様だ」


 ……ウリエル?


「その、ウリエル様とはどこで?」


「塔の中だ。私のレベルが80になった時、一度だけお姿を現された」


 まてまて、ルシフェルじゃなくてウリエル? 塔の中……それぞれの塔に管理者が存在するのか? ジークフリードの話に逆に俺が混乱してしまった。


「ルゥ。君も使命を与えられた者だったのだな。そして……私よりも遥かに重い使命を。今後我々も君の使命に協力すると約束しよう」


 混乱する俺に向かって、ジークフリードは力強く宣言した。


「よろしくお願いします」


 俺は内心を顔に出さないように精一杯の笑顔で応えた。

 ……ルシフェルのやつ。帰ったら問い詰めてやる。

いつも読んでいただきありがとうございます。

ウリエルは書きながら出しちゃえで出てきました(笑)

よくやるのですが、世界設定に矛盾が生じないように帳尻をあわせないと行けなくなるので、後悔したりします( ;∀;)

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