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久遠の海へー再び陽が昇るときー  作者: koto
第3章 赤い極東
15/24

3-4

 その様な中、事態をややこしくしたのが、横浜港への乱入事件だった。

「首相、大変なことが生じました……」

 日本国総理大臣である三好がその報告を耳にした時、ついにソ連が進行を始めたのかと、震えが止まらなかった。

「ソ連か!?」

「い、いえっ!ソ連ではありません。スト参加者の一部が暴徒化し、横浜港に乱入したそうです」

「なんだと!?」

 朝鮮戦争開戦後、横浜港は朝鮮半島への物資輸送の拠点として機能することとなっていた。このため、港には国民が飢えを凌ぐ状況下にもかかわらず多量の食糧が置かれ、そのほか衣服や医薬品、嗜好品などが集積されていた。

 言うまでもなく、これら物資は朝鮮半島に展開する連合軍に送られるはずだったものだ。さすがに武器弾薬までは別に管理されていたが、それでも無視できるほど事態は軽くない。

「それで、米軍はどう出たのだ!」

 三好が気になったことは、彼らに対して港湾を支配していた米軍の出方だった。それこそ、虐殺行為に出てもおかしくない状況にほかならず、“アメリカ帝国主義に支配された日本を開放するため”と大義名分を得たソ連軍が東北になだれ込むこともあり得ない話ではなかったからだ。


 第一生命ビルが民衆に囲まれる中、マッカーサーを始め多くの米軍関係者はデスクに広げられた朝鮮半島に目を向けていた。

 地図には38度線を横切るように線が書き込まれ、次第にその横線が下方に引かれていた。

 この線は現在の戦線を示したものだ。つまり、幾度も戦線維持に失敗し後方に撤退していることを意味していた。

 そして今、新たに半島の南部に線が引かれた。

「まさかここまで進行が速いとは……」

 ある参謀は声を漏らす。

「いや、完全武装の朝鮮軍を相手に韓国軍はよく戦っている。だが、所詮はそうでしかない。応戦は出来ても勝つことは出来ず、後方に下がるのみだ。」

 別の参謀が答える。

 室内には絶望視する声が多く、彼らのような認識を誰しもが共有していた。そのような中、日本政府に伝えず先遣隊として半島へ送り込んだ日本占領軍の一部が、つい先ほど壊滅したと報告を受けた。

「状況は最悪だが、問題はこの戦争がどこまで広がるかだ。中国大陸を失った我々にとって最優先事項は共産陣営の拡大阻止であり、その為にはいかなる犠牲を払ってでも日本の革命を防がなければならない。ソ連軍がいつでも東北へ侵攻できる今、国内の占領軍をこれ以上半島に送る事は不可能だ。」 

 マッカーサーにとっても、これ以上の派兵を決断することは出来ない。それは、ソ連による日本占領を意味するからだ。


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