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旭川ダンジョン対策班、出動! ――水が消える川と時代変化ダンジョンを攻略せよ  作者: 戌葉
第2章 異常空間内部調査結果 ―探索者・黒瀬
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2-3 初調査の報告

 プレハブに戻ると、三浦と高原が待っていた。


「お茶も出せなくてすみません。予算がなくて……」

「気にするな」


 二人そろって気まずそうにしていて、笑いがこみあげてくる。

 異常空間対策庁の担当者は、予算はあっても探索者にそんな気を遣わない。公務員もそれぞれだな。


「それで、どうでした?」

「モンスターはやはりいない」

「そうですか」


 反応の薄さに、肩透かしを食らった気分になる。普通ならここで、これみよがしにため息をつかれるところだ。


「南が海、北が平地で奥に山。それ以上はドローンのバッテリーが持たないので行っていない」

「これがスケッチ」

「うわあ、相良さん、絵がお上手ですねえ」


 ドローンの映像から、鳥瞰図を書けるのは、相良の武器だ。

 平面図には、田嶋が書き留めた情報が注意書きとして書かれている。


「一つ情報だが、地形が変わっている可能性がある」

「へえ」

「そうなんですね」


 いかにも素人な反応も、ここまでくると笑いが出そうになる。必死に耐えたが、横から忍び笑いが聞こえた。


「相良、やめろ」

「いやじゃけど、こう素人っぽい反応されたら、笑えるじゃろ。ええわあ」

「相良さん……?」


 いきなり岡山弁でしゃべりだした相良に、二人が驚いて固まっている。このギャップが相良の武器かもしれない。


「仕事を離れると、こんな感じだ」

「あんな、モンスターがおらんダンジョンは外れじゃけぇな。普通はもっとがっかりされるもんじゃ」

「はあ」

「地形が変わるダンジョンなんて、でぇれぇ珍しいんよ。そねぇな『ダンジョンじゃけぇそんなこともあるんですねえ』みてぇな反応されたら、笑うしかなかろうが」


 相良のペースに押されているが、本当にそうだ。

 地形が変わるダンジョンなど、かなり珍しいのだ。ここに異常空間対策庁の人間がいたら、「その話もっと詳しく」と突っ込まれるところだ。


「こちらから報告できることは以上。引き続き、調査を進める」

「ありがとうございます」

「あの、この地図って、コピーもらってもいいですか?」


 それは報告用に渡すものだから、持っていってもらって構わないんだが、何に使うんだ?


「あの門が気になって調べてみたんですけど、もしかして古墳じゃないでしょうか」

「入り口の遺跡か?」

「はい。以前一緒にお仕事した大学の先生が、郷土史を研究されているので、意見を聞いてみようかと思ってます。三浦さん、問題ありますか?」

「機密保持契約を結んでいただければ、問題ありません」


 お役所、固いよ。まあダンジョンなんて、機密情報の塊だから分かるが。

 そう考えて気づいた。異常空間対策庁はこういうときに話を聞ける専門機関と先に協定を結んでいる。だからこうやって担当者がわざわざ聞きに行く必要がないのだ。


「黒瀬さん、どうですか? 地図の提供と、内部の情報提供について」

「地図はそちらへの報告用なので、好きに使ってもらって構わない。情報提供の範囲は、そちらで決めてくれ」


 お役所は、そのためにいろいろ書類が必要になるんだろうなあ。


「遺跡の意味が分かるメリットはありますか?」

「ある。あのダンジョンは、得体が知れない」

「分かりました。高原さん、お願いします」

「承知しました!」


 上に判断を仰いで、みたいな言葉が出てこないところを見ると、かなりの権限をもらっているのだろう。初めてのことだから丸投げされているだけかもしれないが。


「専門家の方の同行はどうでしょうか?」

「異対の許可は出るのか?」

「河川安全事務所の関係者であれば」

「一人なら。それ以上は安全が確保できない」


 これ以上素人が増えては、こっちが動けなくなる。


「だったら探索者をもう一人……。予算がないんだったな」

「すみません。もう一機あれば調査がしやすいかと思って、事務所のドローンを借りたかったのですが、ダンジョンで壊れたら買い直す予算がないと、許可が下りませんでした。本当にすみません」

「気持ちはありがたい。必要な機材は会社にだいたいそろってるから気にするな」

「心強いです」


 増員を言った先から表情が曇ったので、取り下げざるを得なかった。

 うちのほうがよっぽど金を持ってそうだ。

 本社に言えば、だいたいのものは用意できる。必要なら、本社経由で異常空間対策庁から借りてくることだってできる。


「美咲ちゃん、これ、門のスケッチ。他のも思い出せる限りで書いといた」

「ありがとうございます!」


 相良がさらさらと遺跡の絵を書いて、高原に渡した。

 こちらに投げっぱなしではない二人に、相良も好感を抱いたようだ。


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